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恋愛学習(宿題あり)  作者: Tui
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夜明け

将太と過ごした夜は幸せなものだった。


異性との交際の経験がないわけではないが体の隅々まで愛される感覚、絶頂に向かう感覚。すべてが初めてのことだった。


将太の愛し方は優しい。部屋に戻るとお風呂にお湯を張ってくれた。

じっくりつかるといいと言ってくれて一緒に入ろうといわれたらどうしようと思っていたのでほっとした。


お風呂でゆっくり化粧を落とし、体を洗い筋肉をほぐした。


どうしよう、ここは服を着るのか、バスローブを着るのか。

期待しすぎていないように服を着たいところだがでも、ここはバスローブだろう。

フカフカの肌触りのいいバスローブを着てみたいし、火照った体に服を着てべたつきたくない。


バスローブで部屋に戻ると窓から外を見ていた将太が少し目を細めて微笑んだ。


将太もシャワーを浴びに行きそれを待つ間自分も窓の外の夜景を楽しむことにした。


窓の外には小さなバルコニーがある。風呂上りで体が火照っているのもあって外に出てみることにした。


外は秋の始まりの涼しい風が気持ち良かった。


綺麗な夜景は普段は田舎の景色のほうが好きな茜にも素直に素敵だと思わせるたくさんの光の宝石。

時がたつのも忘れて眺めていたようだ。


将太がぬれた髪で雫を滴りながら現れた。


後ろから抱きしめられて心臓が激しく存在を主張し始め、キスをされたときには夜風にさらされて冷めた火照りも完全に戻ってきていた。


その後手を引かれて寝室に向かう時も、キスを深められたときも、絶頂に達して体から力が抜けきったときも、将太の熱い眼差しと手を感じていた。


さすがに何度もとは行かず、彼に抱きしまられて安心したら昨夜の疲れからかあっという間に深い眠りについていた。




夜中を過ぎたあたりに寝たはずなのになぜか明け方に目が覚めた茜は隣で規則的な寝息をたてる将太を起こさないようにベットをそっと出た。


いまだに信じられない。


たった数ヶ月前、まだ半年もたってないのに今、自分の隣にはおそらく愛し始めてる人がいる。

恋愛の好きという気持ちは加速して今は彼を支える存在になりたい。

自分を殺すことなく、自分も成長しながら彼の大きな存在になりたい。


今までは自分をどこか認めていなかった、自分に見合う人にいつか出会うだろうし、それは諦めでもあり、こんな自分を好んでくれる人ならありがたいと思うべきだと思っていた。


でも、今は自分が好きだ。自分を高めたいとも思う、それは背伸びではなくて地に足の着いた目標に向かう自分。


その目標は看護師として自立すること。もっと知識を吸収して医師と患者さん達の架け橋になること。学ぶことは探せばいくらでもある、でもこのままでも仕事に支障はないが努力を続けることが自分の力になるはずだ。


将太は自分の目標に向かって頑張っている、そんな彼の隣に立って背中を押したい。

自分にできることは私も頑張ること。



家に帰ったら仕事をしながら得られる看護専門コースを見てみよう。大学院を見てみるのも良いかもしれない。ゆっくり時間をかけて仕事の合間にできるパートタイムの勉強をしてみよう。


そんなことを考えながらコーヒーを入れていたら将太がコーヒーの香りで起きたようだ。


もぞもぞ動いていたが次に突然ガバッと起き上がった。


顔があせっている。


きょろきょろと周りを見て自分を見つけて明らかにほっとしている。


「・・・?どうしたの?」


明らかに挙動不審だ。


「・・・。いや、なんでもない。おはよう。」


うつむく将太に不安を覚えた。


「なに?どうしたの?」


二人分のコーヒーを持ってベットに座るとコーヒーを受け取る将太を覗き込んだ。


「ねえ、将太さん、どうしたの?」


「・・・・。いや、起きたらいないからいなくなったのかと思って・・・。」


「?なんで?」


「なんでだろうな?」


頼りなく笑いコーヒーを飲む将太が完全に素直になっているようには思えない。

あの反応は経験から来るものではないだろうか・・・。

なあなあにしようと思えばできる・・・が。


「将太さん、私達は今までよりも関係が深いものになってると思うの。だから、何かあるなら話して欲しい。それに、もし嫌な思い出があるなら私も勘違いさせないようにしたいの。お互いのことを知っていきたい。お願い。」



真剣な思いを告げると将太は少しびっくりしたようだがその後コーヒーを一口飲むとフッと自嘲気味に笑った。


「ちょっとしたトラウマなだけだよ。こんな時に昔の話をするのは無神経だと思ったからさ・・・。」


「いいの、聞きたいよ。」


「・・・・・。昔、付き合っていた人に、うまくいっていたと思っていたんだけど、それは俺だけである日起きたらいなくなっていたって言う間抜けな話だよ。その頃は一人暮らしでさ、半同棲していたんだけど、起きたらいなくなってた。しかも元彼も元に行ったらしいんだよ。意味が分からなくて腹も立ったけど。朝起きて隣を見たらいなくて一瞬馬鹿な考えが浮かんだだけ。」


「それは・・・。腹立たしいかもですね・・・。でも、私はいなくなんないですよ。それにいろいろ話し合うって決めたじゃないですか。だから私は突然いなくなったりしないです。問題があったら二人でもがきましょうよ。」


「そうだな。話し合おう。」


「はい。」


つないだ手を離さないように、誤解が生じないように。


理解を深める努力を、相手を思いやる気持ちを忘れないように。


いまここにある愛おしい人を失わないように。

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