ロマンティックディナー
真新しい装いに着替えて出かけたディナーは夢のようだった。
宝石箱をひっくり返したような夜景。
とびきりのサービス。
そして何より今まで食べたことのないような豪華で繊細な味わい。
一つ一つが宝石のようで芸術的だ。
「どうしよう、すごい幸せかも・・・・。」
思わずため息とともに今食べているメインを堪能した。
「本当にびっくりするぐらいうまいな・・・。」
将太も惚れ惚れするくらい素敵な格好で素敵なマナーで茜はフライングになってしまったが初夜を控えているよりもリラックスして今夜を、この瞬間を楽しむことができた事の方が重要な気がした。
「はい、もう、すっごい幸せ。」
本当に幸せそうな茜の笑顔を将太が眩しそうに目を細めて見つめるとそっと片手をテーブルの中央に
出した。
「?どうしたんですか?」
「茜。 これからもこうやって思い出積み重ねていこうな。」
突然の真剣な顔と言葉に茜は顔が熱くなっていくのを感じた。
「はい。将太さん」
それでも真剣な面持ちで手を重ね将太に言葉を返すと将太がぎゅっと茜の手を握った。
「おれ、今すっげー幸せかも。」
少し将太の顔が赤くなっているのはワインのせいだけじゃない気がした。
「私もです。」
茜がここまで心が満たされる時間はここ何年もなかったように思う。
毎日の忙しさに、日々の生活に満足していると自分をだまして外の世界に目を向けなかった自分ではこの幸せは得られるわけがないんだ。
どんなに外の世界が怖くても、人との出会いが怖くても「虎穴に入らずんば虎児を得ず」とはうまくいったもので本当だと思う。
失敗しても良いじゃないか。自分に自信がないなら自分に自信がつくまで自分に言い聞かせればいいのだ。
「自分は素敵だ。」と。
将太に出会って初めて自分にかけた魔法が本物になり始めている。
今の、幸せなメリハリのある自分は心から好きだといえる。
自分自身を相手に合わせて偽るつもりもない。将太だったら本当に大事なことにはきちんと向き合ってくれる、そう信じられる。
今、すごく幸せだ。
これから先のことは分からない。今、こんなに幸せでもいつかお互いを思いやれないときが来るかもしれない。そうならないように努力を惜しまないようにしたい。
その後のディナーは幸せな気持ちのままお互い笑顔が耐えなかった。
おなかもいっぱいになり幸せ度は最後のイチジクのシャーベットで昇天しそうになった。
部屋へ戻るエレベーターで見上げる夜景はレストランとはまた違った美しさがあった。
つながれた手が暖かい。
見上げると将太が優しい目でこちらを見ていた。
ふっと微笑むと茜の頭にキスを落とした。
恥ずかしかったが誰もいないエレベータの中だ。誰に見られたりしたわけではないのだがこういった愛情のこもった行動は彼が海外の生活を経験したからなのだろうかスムーズだ。
茜も体の力を抜いて将太の胸に寄りかかった。
夜は始まったばかりだ。
茜は恥ずかしいと思いながらも将太をまた近くに感じられることが待ちきれなかった。




