携帯
幸せなデートから3日ほどたった。仕事が遅番が続いていたので会えるわけもなく、メールだけでお互いにちょっとしたことを伝えるホクホクとした気持ちが続いていた。
あさってには将太と週末デート、まだどこに行くのかは決まっていないけれど、覚悟は決まっている。
もちろん、肌の手入れにもぬかりはない。
シフトせいの仕事をしていると肌のあれが早いがそれはありがたい日本の高品質なボディーローションによってなんとか保たれている。
今日の仕事もあと残すところ30分のところで携帯が鳴った。
夜の10時半に電話するとかなんだ?
あけてみると知らない番号からだった。
とりあえず出てみる。
詐欺だったら拒否しよう。
「もしもし。」
「夜分すみません、神埼です。」
「・・・・。神埼?」
なんか聞いたことがあるかも。
神埼、か・・・・。
「え?神崎さん?あの無礼者な?」
思わず正直な気持ちが出てしまった。
「ぐ・・・。はい、あの神埼です。」
おそらく後ろめたい気持ちもあるのだろう。
認めてきた。
「え?なんで私の番号知っていんですか?」
教えた覚えもない。
接点は理沙先輩だけだ。
「勝手に理沙の携帯を見ました。」
正直に白状した神崎さんは前回のイメージとぜんぜん違う。
理沙って呼び捨てのあたりが親しげだ。
携帯が無防備になっている時間を共有したって、なんだか、理沙せんぱーい。
「・・・・・。それで、用件は何でしょう?」
番号入手の方法が分かったとしても私に電話をかけてくるいわれが分からない。
「実は、理沙の事で相談があるんです。迷惑をかけているのは百も承知です。でも、本当にどうしていいかわからない状態で、わらにもすがる思いなんです。どうにか、会って話を聞いてくれませんか。」
神崎さんは本当に辛さそうで、理沙先輩の話を聞いていたことから理解するにおそらく彼も何がなんだか分からないのだろう。
でも、理沙先輩は苦しんでいる。
中途半端な男ならむしろ要らないんだ。
彼女の強さも、弱さも包み込んでくれる人でないといけないんだ。
彼女が心を開けるくらいの男かどうか、判断がつかない。
「理沙先輩と話し合ったほうが良いんじゃないですか?」
正直な気持ちだ。私が首を突っ込む必要があるのだろうか。
「分かっています。でも、彼女はいつも辛さそうで、自分のどこがいけないのか聞いたときに、彼女、泣いて自分がいけないって言ったんです。それから会ってもくれないし、携帯も拒否されてます。
会って間もないのは分かっていますが、僕は彼女を愛しています。
彼女が僕のことを思ってくれているのはわかっているんです。
彼女の目を見ていれば分かる。
でも、ストーカーになる以外糸口が見つけられない状態なんです。
会って、話を聞いてください。そして彼女に伝えて欲しいんです。」
あの時の自信満々な男の人はどこに行ったのだろう。
本当に打ちのめされてるようだ。
このままでは間違いなくストーカーになりそうだ。
理沙先輩も実はこの甘ったれが好きなんだ。
話を聞くだけ、その他、取り持つことは約束できないとして仕事のあと、深夜営業のファミレスで待ち合わせることになった。




