ビール
友達・・・・。
きっと照れていたんだよね?
恥ずかしいから、知らせる必要のない会社の人だし、それに、確かに、彼女って確定したわけではないし。
だから、友達って言ったんだよね?
「あやしー!!」
「ほんとだよ、友達。」
「そうですか~!じゃあ、また今度。」
「おう、」
「駅まで一緒しましょうよ。」
「別にすぐそこだろうよ。」
「いいんです!」
「はいはい。」
彼女は甘え上手で可愛い。
少し拗ねた様な顔も彼女の魅力を倍増している。
この二人のほうがよっぽどカップルらしい。
将太もリラックスしている。
大嫌いな自分。
嫉妬している自分。
なに、馬鹿みたいに下着なんか買っちゃったんだろう。
浮かれてた。
このまま帰りたいけど、それも、できない律儀な自分。
泣きたくなってきたけど、前も、勘違いまがいなことをして泣いた。
この人を好きになってから弱くなった気がする。
本当は強くなりたいのに。
強くなって、自信のある女になって、魅力的になって・・・・。
「馬鹿みたい。」
他人本位の自信はこんなにももろいんだ。
こんなにも影響されてしまう。
彼を好きな気持ちは変わらない。
ここで逃げる?
逃げるの?
事実も確認しないで?
そんなことは昔の自分なんじゃない?
自信がなくて自分の殻にこもっていただけの自分になりたくない。
泣きそうな自分を抑えると少し離れて歩いていた茜はまた他のデパートに入りトイレに向かった。
「なめんじゃないわよ。私だってできる。」
新しく買った下着を袋から出すと今まで着けていたベージュの下着をはずす着替えた。
ピンクと黒の下着は思ったより、エロい気がする。
「ぐ・・・・。」
馬鹿かも、私、馬鹿かも。
何やってるんだよ。
でも、これくらいの闘争心は必要かも知れない。
自分で逃げないで戦闘服きよう。
ワンピースを着なおして少し恥ずかしい気持ちもしながらデパートをそそくさと出て駅に向かった。
将太はまだあの可愛い子と駅で話をしていた。
良く見ると将太は周りを気にしている、自分が現れるのを待っているのだろう。
将太は今まで見てきた中では二股をかけるような人ではない、そのまま話をしているのは後ろめたさがない証拠だ。
今は友達なら、これから友達でなくなればいい。
自分に魔法をかけて、今日は魔法の下着を着けて。
女として見て貰えるように。
茜は歩き出した。
「遅くなってすみません。」
笑顔で将太の前に現れると、将太が笑顔で迎えた。
「待ってないよ。」
それが答えなんじゃないだろうか。
笑顔で迎えてくれた将太。
この恋はまだ始まったばかり、ドラマのしょうな激しい恋でもないし、恐ろしい敵が現れる可能性は低い。
一番恐ろしい敵は自分自身のネガティブな思考なんじゃないだろうか。
「こんにちわ。」
にっこり笑顔で将太の横に立つあの女性に声をかけた。
少し驚いていたような彼女は
「こんにちわ!やっぱり!あんなにいそいそ出て行くから怪しいと思ったんですよ!
素敵な彼女がいたんじゃないですか!!!」
将太は困ったように、
「だからまだ彼女とかじゃないって・・・・。」
照れている将太を見ると勇気が出てきた。
’まだ’この言葉は勇気をくれる。
この人に彼女と読んでもらえるようにがんばろう。
「渡辺、邪魔だから早く返れよ。じゃあな。」
ぶっきらぼうにその渡辺さんに話すと渡辺さんは可愛く怒ると手を振って去っていった。
「可愛い人ですね。」
「ああ、あいつ?見た目と中身のギャップが笑えるんだ。あいつは中身はスケベジジイだ。後輩だけど、いい奴だよ。」
嬉しそうに笑う将太にチクリと胸が痛んだけど、気づかないふりをした。
「おなか減りましたね!どこかお勧めのお店ありますか?」
元気良く茜が尋ねると
「おう、腹減ったな。ビール好き?いい感じのビアガーデンがあるんだ。」
「はい!大好きです!」
元気良く答えた後、ビール大好きって明らかに乙女らしくない。
とほほ・・・。
そんなことを気にもしていなさそうな将太は元気良く「行くか!」というと、茜の手をそっととった。
!!!
友達と呼ばれたあと、この微妙な距離が続くと思っていたので突然手を握られると焦った。
硬直した私を覗き込むと
「・・・・いや・・・?」
心配そうに聞く将太に微笑むと
「びっくりしただけ・・・」
と頬を赤く染めた茜だった。
そのビアーガーデンはビルの屋上に庭園とともに造られている地上10階の楽園だ。
夏の暑い夕方に少し涼しい屋外でのビールは最高かもしれない。
泡のたっぷりのった生を手に取ると
「「乾杯」」
至福のひと時だった。
「いきなりだけど、今日はどうしたの?」
いきなり聞かれて思い出したが、昨日のことが原因で将太に会いたくなったのだ。
「特に私にって訳ではないんですけ、少し落ち込むことがあって・・・。」
「そうなんだ・・・。」
「はい、自分に何もできない時、友達としては寄り添うことしかできなくて、寂しい反面、無力感もあって、なんだか落ち込んじゃって。」
「時にはそういう時もあると思うよ、残念ながら世間は矛盾と不平も多いから。でも、友達として、寄り添うことは大きなことだと思うよ。そこにいてくれるって思うだけでがんばれるもんだよ。」
「はい。」
将太のくれた言葉に心が温かくなった。
そうだ、理沙先輩が泣きたいときに泣ける場所になれるように寄り添っていこう。
それが彼女にできる最大の御礼だ。
「茜ちゃんは心休まる雰囲気があるから弱音も吐けるんだろうよ。それで良いんじゃない?それに、辛くなったらいつでも言ってよ。おいしいものおごってあげるよ。」
いたずらに笑ってみせる将太の気遣いが嬉しい。
「はい!ありがとうございます。私も、将太さんがいてよかった。」
「はー・・・。嬉しいこと言ってくれるね・・・。」
「えへへ。」
その夜は他愛のない会話だったが、楽しく過ごすことができた。
家まできちんと送りたいという将太に押されて最後には送ってもらうことにした。
電車の中で考えることはひとつ。
こういう時、家に上がってもらうものなの?コーヒーでもって?
でも、それって誘っているように見えない?
付き合うってしっかりとした話が出ているわけでもない。
お互いの好意は分かっている気がする。
でも、キスもまだなのに、いきなり最後まで?
どうしよう。
ねえ、どうしよう?????




