理沙の過去
まだ将太とデートした喜びの余韻でホクホクの茜は仕事も楽しかった。
今日は理沙との報告会だ。
今回は地元の総菜屋さんで集めたおいしいコロッケや、煮物においしい日本酒と焼酎。
私の家で自宅女子会だ。
「とりあえず、お疲れでーす!!!!」
グラスを合わせると呆れ顔の理沙が
「あんたは元気ねえ・・・。幸せオーラがだだもれ・・・。」
「はい!幸せです!」
「いやだ、この若々しいオーラはおばさんの私には辛いわ・・・。」
「そういえば先輩最近疲れてますね。大丈夫ですか?」
最近の理沙は少し疲れた様子をすることが増えた・・・気がする。
「大丈夫よ~!」
元気良く笑って見せるが、それは本物の笑顔ではない。
今、自分にできることは何なんだろう。
先輩のくれた宝物に対するお返しができないだろうか・・・。
「私、理沙先輩が大好きです。今の自分が好きになったのは先輩のおかげです。できれば先輩がしてくれように私も先輩の力になりたい。私が先輩の見方になること覚えていてください。いつでも聞きます。」
少し驚いた顔した理沙が次の瞬間泣き笑いのような顔になった。
「ありがとう。茜はやさしい子よね。いい友達を持ったな、私。
ふ~、どうしようかな、本当は自分一人で解決できると思ったの。
いつもそうしているから。
自立して一人でがんばっていけるって。
でも、最近だめなんだ。だんだん弱くなっている気がする・・・・。
あの人に会ってから・・・・・。
最初は気に入らない奴だったのよ、茜も怒ってたよね、でも、あの後もしつこくて、しつこくて
でも、段々いいところとか見えてきて、そんなこと知りたくないの・・・。」
少し泣きそうになっている先輩をみて辛くなった。
「あの人って、もしかしてあの無礼だったビジネスマンですか?あの人、先輩のこと追っかけていたんですか?」
「うん・・・・。神埼さん・・・。」
「え?え? なんで? いや、でも、先輩が好きになってるなら、何でだめなんですか?」
神埼とは前にバーであった無礼者だ。
先輩に興味を持っていたのは覚えている、どんな執着心で先輩に接点を持ったのは知らないけど、先輩の素振りではそこまで嫌っているようには見えない。
なんでだめなの?
「茜も、神崎さんも知らないからよ、私がどんだけ欠陥品か・・・。」
うなだれたように答える理沙をみて茜はショックを受けた。
「先輩、なんでそんなこと言うんですか?先輩が教えてくれたのに、自分自身でいることが一番だって。」
「自分は好きよ、でもだめなんだ。あの人みたいな人と一緒になる資格はないの、真剣じゃない恋愛だけでいいの、私は。」
「なんで?どうしたんですか?先輩大丈夫?」
「茜は知らないから。私、あのね、あのね、赤ちゃんが産めないの。無理だったの・・・。」
何を言っているのか分からなかった。
先輩はん何あんなに自信があって綺麗なのに、なんで、なんで。
「赤ちゃん・・・。」
それしか言葉が出なかった・・・・。
「うん、昔ね、本気で好きな人がいたの、結婚も考えていて、その人医者だったの。
小児科医。子供が好きでね、結婚の話が出たときに、私の不妊症も分かったの・・・。
私、がんばったんだ、彼を愛していたし、医学的にはっきりとした理由が分からなかったの、でも妊娠できなくて。彼もものすごく真剣で、私を治そうっていつの間にか私より意気込んで、治そう治そうって。そのうち私は治療が必要な欠陥品に思えて・・・。彼に最後に子供を持つ夢は捨てられないって、捨てられちゃった。それでおしまい。
私、それまで子供のこととか真剣に考えたことなかったし、もし、自分の子供がもてないのは仕方がないと思えるようになったの。いつか、自分を必要としてくれる人と幸せになりたいなって。でも、彼はだめなんだ。
彼、知ってる?思ったり大きな会社の社長なの、父から受け継いで、周りのプレッシャーに腹立たしくなって逃げ出して泥酔して、自分は愚か者だって。私は愚か者はかまわない。
でも、代々続く会社の社長には子孫が必要なの。
だから私ではだめなの・・・・。
だめなの・・・・・。」
先輩の時折悲しげに、はかなげに見えた強さはここからきているんだ。
子供を生むこと、子孫を残すこと、人によって重さが大きく違う。
私も、いつかはとは夢を見たけど、自分が妊娠できる、もしくはできない可能性を考えたことはない。
人は女には子供ができるのが当たり前だと考える。
子供を作ろうとして初めて不妊症に気づくことが多い。
そして不妊症の症例は増えている。
先輩の愛した人は子供が欲しかった、そして今、先輩が惹かれた人は子孫を残す責任がある。
私なんかが、先輩になんて言ってあげられるんだろう。
なにも言えない私は静かに涙を流す先輩を抱きしめた。
抱きしめた瞬間にむせび泣く先輩をきつくきつく抱きしめた。
それしか、できなかった・・・・。




