魔法の効果?
あの日から私、斉藤茜は馬鹿正直に毎日鏡に向かって
「今日も可愛いね!」
とにっこり怪しい人やっています。
誰かに見られるのではないかと最初はどきどきしていたし、最初は「あんたナルシストかい!」と、一人突っ込みをせずにいられなかったが、最近は鏡に向かって話すことも大丈夫になってきた。
上級者は心の中で思うだけでいいのだそうだ、できればその境地に早く近づきたい。
やっぱりちょっと怪しい。
でも、意外なところでこの魔法の効果だろうか?周りから最近、姿勢がよくなったんじゃない?と言われた。
背が高くなったかとも聞かれた。これはきっともう少し胸を張って生きているのだろうか?
前を見てしっかり仕事をしたい。恋愛したい。
人生欲張るんだ!
それにもう「私になんか無理」って言わない。
うまくいかなければその時はその時。
慎重になるのと臆病になるのは同じことじゃない。
私は臆病に人生終わりたくない。
自分の中で少しずつ変わり始めた自分が好きになってきた、いや、むしろ今の自分は数倍好きだ。
仕事も前より積極的に勉強するようになったし、来年に新しく通信大学で上級看護のコースを取ることにした。これでまた自分の可能性が広がる。
そうすると不思議なことに将来の不安が小さくなってきていた。
できれば幸せな結婚がしたいと思っているのに、今は納得のいかない状況なら自分は一人でもきっと大丈夫、そう思えるのだ。絶対に成功しなければならないプレッシャーがなくなるだけで気持ちにゆとりができる、それは重要なことなんじゃないかと思う。
失敗は終わりではない、そこで諦めることが本当の間違いなんだ。
恋だって同じだ。
何度でもチャレンジできるはず。
大丈夫、今の自分なら大丈夫。
将太に会いに行こうと茜は決めたのだった。




