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恋愛学習(宿題あり)  作者: Tui
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なりたい自分と理沙の度胸

高田先生のことがあってから茜にとってなりたい自分というものが見えてきた。


そのことを早く理沙に伝えたくて次の約束を取り付けたが、今回は将太のこともあるのでいつもに店に行くのは気が引けた。


理沙も何か気づいているようなので今回は理沙が最近見つけたというバーに出かけることにした。


そのバーはわりと親しみやすいこじんまりとした良い雰囲気のバーだった。

バーってこんな感じなんだろうな~という薄暗い店内、キャンドルの光が暖かいが、お互いの顔が少し暗くなるので他の人に気を取られずにプライベートな感覚で楽しめそうなほどよい位置におかれたテーブル席。


何人かの客がすでに落ち着いた雰囲気で酒を楽しんでいた。


理沙と茜は店の奥になるコーナーでテーブルに着くと綺麗形の青年が注文をとりに来た。


軽食と理沙はマーティーニ、茜はパッションフルーツモヒートを頼んだ。


最初のいっぱいは注文を取りにくるが、その後はカウンターまでバーテンダーに作ってもらいに行くそうだ。


フライドポテトとバルサミコ酢、カシューナッツとチーズの春巻きなど、どれもつまみは強めのお酒によくあった。バーといってもビーナッツだけでなくいろいろなつまみが楽しめるこの店が茜は気に入った。


いつもとは違うガッツリご飯が食べたくなる感じではないがお酒に合うつまみに茜は「社会人していてよかった~。」と感動した。


「それで、なりたい自分を見つけたって息巻いてたけど、今は食欲重視ね・・・。」


呆れ顔の理沙に現実に引き戻され、


「いや、えへへ・・・。だって、これおいしいですよ。でも、まじめな話、高田先生とのデートと、ありさちゃんのおかげでいろいろ見えてきたんです。」


高田のサプライズプロポーズから、ありすの未来予想図の話を説明すると理沙は声を出して笑った。


「あはは、ありすちゃん、看護師だけで終わるタイプじゃないとは思ったけど、ここまで予想道理だと笑える。でも、あの子ならきっとほしいものを手に入れるわよ。以外にああいうタイプは強いのよね。」


理沙も茜と同じ結論にたどり着いたことが嬉しかった。


「私もそう思います、それで、私のなりたい自分は、いつか看護師として働きながら家庭を両立していけるような自分です。家庭を犠牲にするのではなくて、そんな自分を受け入れてくれるパートナーを見つけて一緒に戦ってくれる人がほしいです。私はおんぶに抱っこの生活ではなくてちょっと外に出て働いていたい。子供に悲しい思いをさせないように夫婦でがんばれる感じが理想です。欲張りなんですね。まあ、結婚とか、恋人とかいないくせになんですが、でも、看護師の自分は続けたいからこれからも勉強し続けたいなって。」


ひと段落した茜を微笑まそうに見ていた理沙は


「今は恋人がいなくてもなりたい自分とこれからの自分のビジョンがあるのは大切よ。この年で未来の理想がまったく違う人と付き合っても終わりしか見えないもの。家庭を持ちたい人、子供がほしい人、仕事をがんばりたい人、海外に出たい人、いろいろあっていいのよ。でも、パートナーと人生を選ぶときはいくら妥協しあうのが重要でも譲れないもの、変えられない事実を無視するのと将来的につらくなるだけよ。」


理沙の言葉はまるで自分体験談を語るようで、茜は理沙のことを本当はまだほとんど知らないのかもしれないと不安になった。


自分は理沙にたくさ助けてもらった。でも、理沙のためには自分は何もできていない。いつか彼女の信頼を得て自分が相談にのってあがれるようになりたいと思った。


つまみも残り少なくなり、次の飲み物を注文しようと立ち上がった理沙にちょうど奥のレストルームの廊下から出てきた男の人とぶつかった。


「イタッ!」「ウ・・。」


押し戻されて脛を椅子にぶつけた理沙と、理沙のヒールに思いっきり足を踏まれたその男性は同時に声を上げた。


アフターシェーブと強い酒のの香りがその男性が動くたびにした、結構酔っているようだ。そして見るからに仕立てのよさそうなスーツは彼を威嚇的に見せていた。できる男なのだろう、なんか近寄りがたい感じのビジネスマンだ。


「いてて、あら、ごめんなさい。大丈夫ですか?」


脛をなでながら理沙が振り返るとその男性はキッと理沙をにらむと


「何食べたらそんなに重くなるんだよ。骨が折れるかと思ったぞ。」


茜はカーっと怒りで顔が赤くなるのを感じた。

今のは完全に事故である、むしろ奥からいきなり出てきた彼のほうが悪い。それを女性である理沙に重いなどものすごく失礼である。思わず怒鳴ってやろうと思っていると


「あら、折れてなかったんですか?残念ですね?どんな育ちをしたらそんなに無礼に育つんでしょうね?」


にっこり笑顔ででも、絶対に自分には向けられたくない怖い笑顔で理沙が答えた。


少しうろたえた男性が


「あんた態度まででかいのかよ。なんでみんな偉そうなんだ。だからでかい女は嫌いなんだ。」


とさらに悪態をつくと落ち着き払った理沙は男性をまっすぐに見つめて


「うふふ、そうね、でも、あなたの態度も相当ヘビー級よ。他の女性と一緒にしないで頂戴。私は私、私ができることを知りもしないで喧嘩売るなんて、お兄さんもだめね。」


酔っ払っている相手に腹を立てても仕方がないと理沙はそのままバーに向かおうとすると、その男性がガシッと理沙の腕をつかんだ。


「何ができるっていうんだ。」


凄みのある目で理沙を睨んでいるその男性に向かって理沙は妖美に微笑むとするりとその男性の懐に入っていった。背丈もある男性なので理沙がすっぽり入る、そしてちょうど少し背伸びした理沙の唇が男性の首元に熱い息を話すたびに吹きかけた。


そして看護師なのにいつも綺麗な理沙の手はネイルなんてしていなくても綺麗だ、その指を硬直する男性のほほにスーッと撫で付けると


「そうねぇ、とってもやわらかくて・・・・それでいて暖かくて・・・・、あなたが慣れているごつごつしたモデル達とは違うわね。でも・・・・。ふふ、あなたが知る事がないことだわ。」


目を見開いて理沙を凝視する男性の目を下から微笑みながら見上げるとたっぷりとした自分の唇を一瞬甘噛みし、男性の目から唇に目線を落とす、そしてまた見上げた。


一連の動作はとてもセクシャルで実際には何もしていないのに、男性は生唾をごくりと飲んだ。



あっけに取られている私と真っ赤になった男性を置いて理沙はひらりと男性から離れてバーに向かった。


その後姿は颯爽としていて綺麗だと思った。自信がみなぎった女は美しい、容姿じゃないんだ、オーラが出ている。無礼者男性もまだ動けないでいる。


「女性に対してあんな事いうなんて最低です。」


悔しいので一言文句を言うとまだぼけっとしている男性を置いて理沙の後を追った。






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