デート
待ち合わせ場所に着くと高田はもうそこにいた。
慌てて走っていくと気づいた高田が笑顔で迎えてくれた。
「あ、慌てちゃった?真っ赤だよ斉藤さん。」
にこやかな高田の言葉に嫌でも将太を意識してしまいさらに赤くなった。
「いえ、大丈夫です・・。」
「そう?じゃあ、行こうか、今日はおいしい所予約しておいたんだ。電車に乗るけど大丈夫?」
「あ、はい!」
高田のデートはどこまでもスマートだった。
素敵なイタリアレストラン、どこか落ち着いた大人の雰囲気で、ワインも料理に合うし、味もプレゼンテーションも芸術的だった。
「すごい。素敵ですね。本当においしい。」
感動してお任せで出されたタイのハーブ焼きは添えられたポテトとペストソースが絶品だった。
「うれしいな、喜んでもらえて。」
高田はどこまでもスマートだ。電車に乗っているときもさりげなくリードしてくれるし、店に入ってきてからも自分をリラックスさせながら楽しませてくれる。
「なんか、高田先生って完璧ですね~。」
感心した様にまじまじと見つめると
「そうでもないさ、でも、女性と出かけるときはできる限るリードするのが男の役目だって思ってるから。斉藤さん・・・、茜ちゃんに喜んでもらいたくてさ。」
突然下の名前で呼ばれてドキリとしたが、あまりの完璧さにびっくりしていた。高田は仕事もできる、外見もいい。きっと綺麗な女の人が放って置かないだろう、なぜ自分のような平凡な人間を誘ったのだろか。
「高田先生。なんで今日は私を誘ってくれたんですか?」
姿勢を正して聞いてみると真剣なのを見て理解した高田が口を開く
「茜ちゃんはいい子だよね。一緒にいて落ち着くよ、仕事もきちんとこなすし、そういうの見ていて家庭に入ってもきちんと家のことやってくれるんだろうなって、それにいいお母さんになってくれそうだな。って。僕もそろそろ落ち着きたいなって思ったとき、茜ちゃんが思い浮かんだんだ。だから結婚を前提に真剣に僕のこと考えてくれないかな?」
高田の告白は思いもよらないものだった。嬉しいと思う反面、なぜだかすっきりしない気持ちになった茜が言葉に詰まっていると
「返事はいつでもいいんだ。考えて欲しいだけだから。今日はお互いを知ることにしようよ。」
どこまでもスマートな高田は笑顔で茜を安心させた。
「はい。わかりました。」
高田が真剣なことは理解できた茜はその夜はお互いの事を知ることに専念し、告白の内容は考えないようにしたのだった。
高田の完璧なエスコートは家の前まできちんと送り届けると去っていくことで終わった。
一人暮らしをして3年たつ茜のアパートは茜の城だ。家に入ると暖かくなってきた気温のせいでむっとした空気が気をめいらせた。
窓を開けて空気を交換すると冷蔵庫からビールを出した。
ぷしゅっとおいしそうな音とたてたビールを眺めて茜は途方にくれた。
「なに、おかしな状況は・・・・。」
ベットにだらしなく寝そべると一日の間におきた出来事を声に出して整理を始めた。
「高田先生は、私と結婚したいの・・・?そんなそぶりしたこと無かったじゃない・・・・。それになんで引っかかったんだろう・・・・。それに、将太さんは何だったの?キスされたよね・・・?好き?なの?」
「もう、分けわかんない・・・・。」
ワインとビールで悪酔いした茜が呑みすぎたことを後悔するのはあと何時間かあとの話である。




