夜勤明けの朝の真実
また女の子達がそわそわする夏が近づいてきた。
大都市でもない、かといって小さくも無いこの町にも週末には鮮やかなワンピースに身を包んだ華やかな乙女達が嬉しそうに彼氏達と歩き町並みに彩を添えていた。
仕事の夜勤明けに先輩とモーニングを食べに来ていた喫茶店の窓からの景色を見ていた斉藤茜は「いいな~。」と思わず本音をつぶやいてしまいはっとした。先輩が気にしないことを祈って何気ない仕草でコーヒーを口にするが、
「何が?」と先輩の半田理沙が聞いてきた。
思わずヒヤッとするが「何でもありません。」と苦笑いで答えると。
「茜、最近恋愛してる?」と鋭い質問を受けた。
実は茜は今年で25歳になる社会人3年目の看護士なのだが忙しく、シフトがある事に加えて仕事を覚えるので精一杯だったせいもあって社会人になってから片思いすらしていなかった。
「うううう・・・・。」思わず返事に困ると、やったり顔の先輩はやっぱりね、あんた奥手だからね~。と呆れ顔だ。
「理沙先輩は良いですよね~。綺麗ですもん・・。」
理沙は本来ならかなりのポッチャリ系に属する体格なのだが彼女には大人の色気と自信に満ちた笑顔でファンの多い頼りがいのある看護士だ。最近は見ないが以前医師にしつこくアプローチされて「誰が医者と付き合うか!」とざっくり切り捨て、悲しげな医師の後姿がたびたび目撃されていたらしい。
「茜、綺麗だったら恋愛できると思う?」
意外な質問に「?」な顔をしていると、理沙は淡々と語り始めた。
「最近ね、茜は仕事も覚えていい看護士になったと思うよ。うちらこの仕事だと一生勉強してもすべてを知り尽くせないから面白いって思うんだ。でも、茜ががんばってるの知ってるよ。最近仕事場でもいい顔してる。でも、ひとたびユニフォーム脱ぐと自信のかけらも無い顔してどうしちゃったのかなって思っていたのよ。恋愛は顔だけじゃないよ、顔がよくても自信なさげな男には惹かれないでしょ?女も同じだよ。ちなみに私は茜はかわいいと思うよ。」
仕事で認められていた喜びと真意をつく言葉に声が出なかった。




