紅色
はじめましてです。
夏の終わり
郵便屋さん
そんな感じの短編です。
よかったら
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ちりん ちりん
ちりん ちりん
少しずつ近づいてくる、あたしの好きなおと。
畳に寝っ転がって、長い黒の髪の毛をいじっている。
特に意味は無かった。
無意識的に、でもちょっと意識的に。
畳の匂いがちょっとする。
このにおいは嫌いじゃない。
髪をいじるのを止めて、ため息をつく。
なんだか、いらいら。
なんだか、もやもや。
理由なんか知らない。
今のちょっと、ちっちゃい子みたい。
キキッって歯が浮く、ちょっと嫌な音。
だけどちょっと、どきどきするおと。
「紅ちゃん」
ガラスの扉越しに聞こえる、落ち着いた声。
でも聞こえてないふり。
「紅ちゃん?」
くすっ。
いまのは、うっかり。
語尾に「?」が付いたの、分かったから。
「いるよ」
ゆっくり答えてみる。
「手紙、お父さんからだよ」
「いま行く」
立ち上がって、扉のとこまで小走り。
くもりガラス越しに、ちょっと恥ずかしくなる。
がらがらがら
「凛太郎くん」
「はい、手紙」
「ありがと」
触れあう手先。
こういうとき、どきどきするって、本に書いてあった。
でもあたしはしない。
だって、どきどきしてるなんて、分からないもん。
「ひとりなの?」
「うん。お母さん、買い物。お祖母ちゃんは三宅さんち。」
「お留守番、偉いね」
くしゃ。
頭をちょっと撫でられる。
いまのはちょっと反則。
「偉いねって、また子供扱い」
「だって子供だろう?」
「そうだけど、ちょっと大人に近い子供」
ちょっぴり背伸び。
また笑われる。
でもその笑顔は、きらいじゃない。
「じゃあ僕、まだ仕事だから」
にっこり笑顔。
目線が、ちょっと下がる。
ふと。
最近うちにやって来た、冷たい便利くんを思い出す。
「すいか」
すっごくちっちゃい声だったかもしれない。
息切れしたかもしれない。
「え?」
「すいか…食べる? 冷たくて、甘いのとってある」
手紙がちょっと湿っぽくて、端が折れてる。
あたしの声も、ちょっと熱っぽい。
「いいの?」「うん」
「じゃあ、終わったら紅ちゃんとこ寄ってもいい?」
「待ってる」
「ありがとう。じゃあ、後でね」
いまのも反則。
ちょっとずつ遠ざかるおと。
ちりん ちりん
ちりん ちりん
ちょっと切なくて、ちょっとどきどき。
机の上に手紙を置いて、朝顔に水をあげに行く。
オレンジの光が、青い朝顔を紅色に変える。
かなかなかな…
いかにもな感じのおと、嫌いじゃない。
はやく。
はやく、六時にならないかなって想ってるのは、ないしょ。
ついでに言えば、お母さんやお祖母ちゃんが、七時まで帰って来ないで欲しいのも、ないしょ。
紅い服のままで、来るのかな。
着替えて来るのかな。
今度は無意識に、髪の毛をいじる。
出来れば紅いままで、来てほしい。
紅色。
きらいじゃない。
いかがでしたか?(゜゜`
幼い作品、
読んでくださって
ありがとでした。