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追放系でも今日も気分よく帰ります?

 ***

 ◆モノローグ


 今日はいつもと違うギルドに来ていた。

 理由は特にない。気分だ。

 冒険者ってのは、別に所属支部が固定されてるわけじゃない。

 日本国内のダンジョンはどこもギルド管理で、登録さえしていれば全国どこでも潜れる。


 ここは――神奈川県・海鳴うみなりダンジョン支部。

 海沿いの街にある、そこそこ有名なダンジョンだ。

 特徴は「中層から急に水場が増える」「魔物がやたら湿っぽい」。

 冒険者の拠点としては広くて綺麗で、飯もうまい。

 ただし、冒険者の民度は……まあ、普通だ。


 俺は受付で手続きを済ませ、ロビーに向かった。

 そこで、ちょっとした“追放劇”を目撃した。


 ***

 ◆◆ギルドロビー


「あなた、ずっとそんなことしかできないのね」


 刺すような声が響いた。

 見ると、豪勢な装備を纏ったいかにも上級パーティといった風貌の女が、

 同い年くらいの女の子を見下ろしていた。


 女の子は小柄で、肩までの黒髪。

 装備は軽装の魔術師っぽい。

 年齢は……俺より少し上くらいか。


「ご、ごめんなさい……」


 女の子はしゅんと肩を落とす。

 だが、上級パーティの女は容赦しない。


「謝れば済むと思ってるの? どんくさいのよ、あなたは」


 後ろのパーティメンバーも同調する。


「マジで足引っ張るよなー」

「なんで来たのって感じ」

「才能ないんじゃね?」


 典型的なやつだ。


「あなたはもう来なくていいわ。

 “蒼風の爪”に役立たずはいらないの」


 そう言い放ち、上級パーティは去っていった。


 残された女の子は、しばらく立ち尽くしていたが、

 やがて小さく息を吐いて、受付の方へ歩いていった。


 俺は思った。


「あー……これ、追放系ってやつだ」


 最近よく見る。

 流行ってんのか?


 俺は追放されるより前に、

 “一回目でいらん”ってなるから経験ないんだよな。


 ***

 ◆ギルドロビー(続き)


 そんなことを考えながら、

 俺はこの地区の適当なパーティの誘いを待つことにした。


 今日は運が良かった。

 声をかけてきたのはCランクパーティで、ヨウジと名乗った。


「サポート希望のショウさん……?ですよね、宜しくお願いします」


 リーダーは柔らかい笑顔の青年。

 他のメンバーも礼儀正しく、俺のことを"荷物持ち"と呼ばず「サポートお願いします」と言ってくれた。

 善人パーティだ。

 さすがにここまで徹底してると、少し拍子抜けする。


「はーい、よろしくお願いします」


 俺は軽く返事をして同行した。


 ***

 ◆◆ダンジョン・上層


 海鳴ダンジョンは、上層は普通の洞窟だ。

 湿気はあるが、魔物も弱い。


 Cランクパーティは丁寧に進み、

 俺のことも気にかけてくれた。


「ショウさん、重くないですか?」

「休憩します?」

「無理しないでくださいね」


 ……優しすぎる。


 俺は荷物をウィンドウに載せてるだけなので、

 重いわけがない。


「大丈夫ですよ。俺、荷物持ちしかしてないんで」


「そんなことないですよ!ユニークスキルですよねそれ! すごく助かります!」


 ……本当に良い人たちだな。


 ***

 ◆ダンジョン・中層手前


 中層に入る前、リーダーのヨウジが言った。


「今日はここまでにしましょう。

 無理して事故るのが一番よくないですから」


 判断が早い。

 引き上げのタイミングも完璧だ。


 俺は心の中で感心した。


 ***

 ◆ダンジョン出口


「ショウさん、今日はありがとうございました!」

「また機会があればお願いします!」


 彼らは笑顔で手を振って去っていった。


 良い人たちだった。

 だが――


「……笑い飛ばせる相手じゃなかったから、

 ちょっと気持ちよくない日だったな」


 俺は苦笑した。

 気分よく帰るには、

 相手がちょっと嫌なやつのほうが都合がいい。


「帰るか……」


 そう思ったときだった。


 ***

 ◆ダンジョン入口(再び)


 見覚えのある姿が目に入った。


 ギルドで追放されていた女の子だ。


 彼女は一人で、

 ダンジョンに入ろうとしていた。


 装備は軽い。

 表情は硬い。

 足取りは震えている。


「……おいおい」


 俺は思わず声に出した。


「一人って、マジか……?」


 追放された直後のソロ潜り。

 しかもこのダンジョンは途中から急に危険度が増す。


 経験の浅い魔術師が一人で入る場所じゃない。


 だが、彼女は迷いなく入口へ向かっていた。


 俺は頭をかいた。


「……はぁ。

 面倒なことになったな」


 そして、彼女の後を追った。



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