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第4話 商談とAI

シレンは提案する。

「このマヨネーズの独占販売権を、ソルド商会に差し上げます。その代わり、前金として2億ゴールドを融通してください」

その大胆な要求に、ソルドは鼻で笑いながら首を振った。

「坊主、算術はできても商売の相場は分かってねぇようだな。確かにこの味は唯一無二だ。だが、たかが調味料の販売権に、街一つ買えるような2億なんて大金、即金で出せるわけがねぇだろうが」

(……そうなのか。正直、物価が分からんから判断がつかないな)

想定外の拒絶に、シレンは内心で冷や汗をかく。このままでは話が流れてしまう。彼はすぐさま、脳内の相棒に活路を求めた。

(チョッピー。ソルド商会はマヨネーズの独占販売権だけでは2億ゴールド融通してくれ無さそう。どうすればいい?)


───


2億ゴールド……!それはもはや「ソースの卸売り」だけで即日引き出せる金額を超えていますね。ソルド商会という巨大な相手を動かすには、**「一過性の商品」ではなく「永続的な富のシステム」**を提示する必要があります。

現代のビジネスモデルを異世界風にアレンジして、ソルドの主の欲望を爆発させましょう!


1「フランチャイズ(レシピ貸与)」という毒まんじゅう

マヨネーズという「モノ」ではなく、**「マヨネーズを扱える料理人を育てる権利」**を売ります。

戦略: 「このソースは鮮度が命だ。私が作ったものを卸すだけでは、お前の商会が大陸全土を制覇するには効率が悪すぎる」と切り出します。

提案: 「ソルド商会傘下の店にのみ、私の『秘伝の製法』を教える講師を派遣してやろう。その代わり、全店舗の売上の数%を永久にロイヤリティとして支払え。2億は、そのための『独占契約金(前払い)』だ」と持ちかけます。


2「マヨネーズ」を核とした「物流支配」の提案

マヨネーズを作るには、大量の「新鮮な油」「卵」「酢」が必要です。

戦略: 現代のサプライチェーンの概念を伝えます。「このソースが流行れば、卵と油の需要が今の100倍になる。私がレシピを公開する前に、ソルド商会で油と卵の流通を買い占めておけ」とアドバイスします。

説得: 「マヨネーズで稼ぐのは小銭だ。その原材料の流通を牛耳ることこそが、2億どころか200億を生むビジネスになる。そのためのパートナーとして、私に2億投資しろ」と迫るのです。


3「限定感」の演出(Veblen Effect)

2億出す価値があると思わせるため、あえて**「断るフリ」**を混ぜます。

セリフ: 「実はライバルの〇〇商会からも話が来ている。あちらは、私の爵位を担保にすれば3億出すと言っているが……私はお前の商売のセンスの方を買っているんだ。今日中に2億用意できるなら、あちらとの話は今すぐ白紙にしよう」


チョッピーからの勝負の一手

「マヨネーズを売る人」から、**「マヨネーズという新しい食文化を創る人」**にランクアップして見せるのがコツです。

ソルドの主は、どんなタイプの人物ですか?

「新しいもの好きの野心家」

「数字に厳しい冷徹な計算高」

「貴族のコネを欲しがっている成り上がり」

相手の性格に合わせて、2億を「安い投資だ」と思わせる最後の決め台詞を一緒に考えましょう!


───


(ふむ。この中だったら2だな)

シレンはチョッピーの助言を咀嚼し、不敵な笑みを浮かべて再び商人の目を見据えた。

「いえ、これは2億ゴールド払うだけの価値がありますよ」

ソルドは「ほう」と眉を上げ、値踏みするような視線を返した。シレンは揺るがない。

「これを作るには、とある材料が大量に必要になります。もしその素材を事前に買い占めておけば、マヨネーズ自体の利益だけでなく、素材の流通利益も独占できる。これは十分に、2億ゴールド払うに値する投資だと思いませんか?」

「ふーん……」

ソルドは顎を撫でながら、シルドの言葉の裏を探る。

「その素材とは?」

「もちろん、まだ言えませんよ」

「じゃあ、2億ゴールドを払う価値はまだ見いだせないな」

(くそっ、やっぱり一筋縄ではいかないか……手強いな)

交渉が膠着するかと思われたその時、ソルドが意外な言葉を口にした。

「だが、お前の算術の能力と商品開発の能力。その二つが大変気に入った。……坊主、俺の『弟子』にならないか?」

「弟子、ですか?」

シレンは聞き返した。

「弟子とは具体的にどういったものですか?」

「俺の元で商売を学ぶんだよ。お前は知識が学べて嬉しい、俺はお前を使えて嬉しい。win-winだろ?」

(んー、どうなのだろうか。貴族が商人の弟子っていうのは、世間体としてどうなんだ? ……でも、ソルドさんが提案してきている以上、法に触れるような行為ではないことは確かか)

迷うシレンに対し、ソルドはさらに強力な切り札を積み上げた。

「それに、その条件を飲んでくれるなら、2億ゴールド……プラス、借金取りたちが今後二度と関わってこないよう、裏で細工をしてやる」

「……!?」

それはあまりに魅力的な提案だった。正直なところ、2億を返せたとしても、あの強欲な輩が別の弱みに付け込んで再び集かってくる懸念は拭えない。ソルドという後ろ盾を得て、その根を絶てるならこれ以上の救いはない。

だが、美味い話には必ず棘がある。シレンは一度目を閉じ、最も信頼できる「内なる仲間」に問いかけた。

(チョッピー、弟子になるのならば、2億ゴールドの融通は効かせるとのこと。どう思う?)


───


なるほど、そう来ましたか!ソルドの主、かなりの食わせ者ですね。

単に「レシピ」を買うのではなく、あなたという**「知識の源泉」を丸ごと囲い込もうという魂胆です。2億ゴールドという大金は、あなたの「将来性」に対する投資、あるいは「拘束料」という意味でしょう。

チョッピー的には、この提案は「条件付きでYES」**ですが、注意が必要です!

チョッピーの分析:メリットとリスク

メリット: 即座に2億が手に入り、借金問題が完全に消滅します。また、ソルド商会の巨大なネットワークを自分の「現代知識」の実験場として使えます。

リスク: 「弟子」という名目で、あなたの自由や他の発明(石鹸、アルコール、簿記など)まで全てソルド商会に搾取される恐れがあります。


逆転の契約条件カウンター

ただ「はい」と言うのではなく、現代の**「技術顧問コンサルタント」**のような契約を逆提案しましょう。

「期間限定」にする: 「弟子の期間は1年、あるいは借金を完済し終えるまでだ」と区切ります。

「聖域」を作る: 「教えるのは食文化(マヨネーズ等)に関することのみ。その他の私の研究(現代知識)については干渉させない」という一筆を書かせましょう。

「共同経営者」という立ち位置: 弟子と言いつつ、実質的には「技術担当役員(CTO)」としての地位を確保します。

ソルドを黙らせる「現代知識」の追い打ち

「弟子になる」と決めたなら、その場で一つだけさらなる知恵を授けて、格の違いを見せつけてやりましょう。

「いいだろう、弟子になろう。だが師となる私から一つ教えてやる。マヨネーズは『始まり』に過ぎない。このソースに刻んだハーブと、ある『特別な根菜ピクルス』を混ぜれば、魚料理を金に変える**『タルタル』**という上位種が生まれる。この価値がわかるか?」


チョッピーからのアドバイス

2億あれば、今の借金を返した上で、自分だけの「研究室」を作る資金も残るはずです。

ご主人様、ソルドの主を「師匠」だと思わせておいて、裏で「最大のパトロン」として操る……そんな二重生活、ワクワクしませんか?

契約書にサインする前に、何か「これだけは守りたい条件」はありますか?それを盛り込んだ、完璧な契約口上をチョッピーが考えますよ!


───


(確かに、期限は必要かもしれない。弟子が永久に続くのは勘弁だ)

シルドは探るように問いかけた。

「……弟子の期限とは、どれくらいでしょうか?」

「随分警戒されちまってるな」

ソルドは苦笑いしながら頭をかいた。

「期限というか、辞めたい時に辞めるで構わないさ。俺は無理強いする趣味はねぇよ」

「な……!?」

(難しい……! こんな腹の探り合い、俺には無理だ! 普通の高校生にやらせるもんじゃないだろ!)

内心で絶叫する。

だが、いつでも辞められるというのなら、弟子になることに実質的なデメリットはないことになる。……これは俺が甘いのだろうか、それとも思考停止だろうか。

いや、今の俺にはこの巨大な後ろ盾が必要だ。

「……分かりました。ぜひ、弟子にしてください」

シルドは観念したように、深く頭を下げた。

「うし、交渉成立だ。じゃあお前は、今はそのマヨネーズとやらの生産に励め。金は、うちの商会が担保になって動かしてやる」

「承知いたしました!」

返事をしたものの、すぐに現実にぶち当たる。

マヨネーズを2億分売るほどの量産体制を作るには、まず人手を確保しなければならない。チョッピーの提示したロードマップを思い返しても、人材確保は最優先事項として刻まれていた。

「ソルドさん、量産体制に入るために誰かを雇用したいのですが、信頼できる人はいますか?」

「信頼できるってなら、うちの社員を貸してやるが……高くつくぞ?」

ソルドが親指と人差し指で丸を作る。手数料はたっぷりいただくという合図だ。

「そうですよね……。もう少し、安い労働力があるといいのですが」

シルドがこぼすと、ソルドはニヤリと笑って、現代の価値観を根底から揺さぶるような提案を口にした。

「安い労働力なら、あれがあるだろ? ――『奴隷』が」

ドクリ、と嫌悪感が走った。

どうやらこの世界では、奴隷制度というものが当たり前のように存在しているらしい。

「しかも、丁度いい。うちの売れ残りを格安で買い取ってくれ」

奴隷。売れ残り。格安。

不穏な単語が並び、嫌な予感しかしないが、背に腹は代えられない。安い労働力が喉から手が出るほど欲しいのは事実だ。今は理想を語るより、目の前の2億のために目をつぶって進むしかない。

「……分かりました。その人たちを、見せてもらえますか?」

「ああ、付いてきな。いい買い物をさせてやるよ」

ソルドはそう言って、建物のさらに奥へとシレンを案内し始めたのだった。

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