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6話 カリナのパーフェクト魔法教室

魔法の設定が変わりまくってめっちゃ書き直しまくりました。これを書き直しす度に。書き溜めてる話しも書き直しました。

 ギルドで一悶着あったが、気を取り直して俺と新人はカリナが待っているであろう食堂へ向かった。


 歩いてすぐの場所で、五分もかからず到着する。


 カリナ行きつけの食堂は、石造りの壁に瓦屋根という、なかなか洒落た外観をしていた。


 両開きの扉の上には木製の看板が掲げられており、「宵闇亭」と店名が記されている。


 扉を開けると、むわっとした空気とともに、様々な料理の香りが鼻をくすぐる。


 そういえば、今日はまだ何も食べていなかった。


 店内は薄暗く、壁や天井に取り付けられた魔道ランタンの淡い光が空間を照らしている。


 乱雑に置かれたテーブルには、ちらほらと客が座っていた。


 その奥で、黒いローブをすっぽり被った怪しい人影が、小さな丸テーブルに腰掛けていた。


 規則正しいテンポでスプーンを動かしているその人影は、間違いなくカリナだった。


 新人に「ついてこい」と声をかけ、カリナの席へ向かう。






「カリナ、調子はどうだ」


 スプーンの動きが止まり、カリナがこちらを振り向く。


「いつも通り」


「なるほど、良さそうだ」


 ……知らんけど。


「座って」


 カリナは俺たちに短く言うと、再びスプーンを動かし始めた。


 サラとレオンを見ると、カリナの独特な空気に当てられたのか、2人とも固まっている。


 何処となく呪いの人形っぽいしな。


 仕方ないので、俺が座るように促すと、まるで椅子に剣山でも仕込まれているかのように慎重に腰を下ろした。


 帰りたい?腰が浮いてるぞ。


 ビクつく2人を横目に、俺も席に着く。給仕を呼んで火酒と適当な料理を注文する。


 サラとレオンは……適当でいいや。







 一息ついたところで、本題に入る。


「今朝言ってた新人を連れてきた」


 目で2人に挨拶するように促す。


「レオンです」


「サラです」


 ぎこちないながらも自己紹介を済ませた2人に、カリナはビー玉のような目を向ける。


「カリナ、リカルドとは元々同じパーティーで活動してた」


 魔法以外の話題で、カリナにしてはよく喋った方だ。


「カリナ、それで相談なんだが」


「女の子」


 ……だから会話を一足飛びに進めるな。


「そうだ。何か分かるか?」


 説明しようとすると先回りされるので、端折って聞いてみた。


「魔力、沢山あるね。それで?何が聞きたいの?」


「質問と相談だな」


「話して」


「まず質問だ。

こないだこいつに俺の詠唱を丸暗記させてファイアボールを使わせてみたんだ。

俺よりかなり大きな火球が出た。

破壊力も桁違いだった。

なんでだ?」


カリナはスプーンを皿に置き、俺を真っすぐ見つめて言った。


「当たり前」


「どう当たり前なんだ?」


 カリナと話すコツは簡単だ。会話を諦めないことだ。


「呪文に魔力を込めすぎた」


「俺もサラも、魔力なんて込めた覚えはないぞ?」


 サラも頷く。だがカリナは首を横に振る。


「呪文は、世界に語りかける言葉であると同時に、魔力を声に乗せる手段でもある。

つまり、呪文には二つの役割がある」


カリナは指を立てて続ける。


「一つ目は、世界に“こうしてほしい”と注文を出すこと。

二つ目は、魔力をその注文に込めること」


「注文って……どういう意味だ?」


「リカルドのファイアボールの呪文は、

“炎よ集まり、球となれ。進みて敵を焼き尽くせ”って意味になる。

つまり、火球を作って飛ばして燃やせって注文」


「注文書だから呪文はきっちり唱える必要があるのか」


「別に、リカルドの呪文じゃなくても出る。

炎、なんかいい感じになれ。飛んでけとかでも」


「……随分適当な注文だな」


「ん、適当な注文だと世界が“雑な部分を補完する。

 その補完にも魔力が必要。

 魔力が多い人は雑な注文でも発動できたりする」


「魔法が注文で、魔力が金ってことか?」


「そう。注文書が呪文、材料費が魔力。

世界は職人みたいなもの。

でも、曖昧な注文をすると“手間賃”が発生する」


 俺は思わず唸った。魔法って、そんな仕組みだったのか。


「じゃあ、呪文を唱えただけじゃ魔法は出ない?」


「出ない。発動の意思がなければ、魔力は声に乗らない」


「つまり、呪文+意思=魔力が込もるってことか」


「そう。世界は呪文で工程を受け取り魔力で材料を受け取る。

足りない部分は術者の思考から補完する。

その補完にも魔力が必要。魔法は“お釣り”の魔力で作られる」


「……つまり、何割かは魔法にならずに世界に持ってかれてるってことか?」


「ん。世界は意外とがめつい」


 世知辛い。


「今のお前の話を聞く限りだと、俺とサラで無意識に込めてる魔力量が違うってことか?」


「ん。彼女はとても魔力が多い。

何も考えずに魔力を込めると膨大な量を込める事になる。最悪暴走」


「……もしかして、結構危なかった?」


 冷や汗を流す俺は恐る恐るカリナに尋ねる。


「ん。死んでたかも。

リカルドは魔法の理屈を知らない。

ただ呪文を覚えて、意思を込めて唱えてるだけ。

それでも魔法が出るのは、魔力が少ないから暴発しないだけ」


 カリナは無情な表情で言った。


 マジか……やはり素人が手を出すものではない。


「私、そんなに危なかったんですか?」


 横目でサラを見ると青ざめていた。これはごめん。


 そんな俺を気にするでもなく、カリナはサラに頷くと話を続けた。


「彼女の魔力は豊富だけど、扱い方を知らない。

それが良い方向に働けば破壊力が増すし、悪ければ暴発する。

今回は破壊力の増加って結果になった。良かったね」


 俺はサラを命の危機に晒していたことに気づき、改めてカリナに尋ねる。


「それで、お前の目から見てサラは魔法使いとしてやっていけるか?」


 カリナは無言でサラを見つめる。モゾモゾしてるサラは少し我慢しろ。


 カリナは怒ってるわけじゃない。……トイレじゃねえよな。


「分からない。魔法は魔力だけでどうこうできるものではない」


「……すまん、もうちょっと詳しく」


 サラが不安げにこちらを見る。俺が促すと、カリナはスプーンを置いて短く考え込んだ。


 ちょうどその時、給仕が料理と酒を運んできた。


 酒をひと口流し込んでいる間に、カリナが再び口を開く。


「まずは言語の習得が必須。それから魔力のコントロール方法の訓練も必要。

魔力の扱いにはセンスがいる。だから、魔力が多い人が必ずしも上手くいくとは限らない」


「つまり、魔力は邪魔なだけで意味がないってことか?」


「そうは言ってない。

ただ、詠唱には意味があるファイアボールなら火球になれって命じた言葉に込められた魔力を使って火球を作る。

その時に流し込まれた魔力が多いと当然制御も困難になる。

世界は基本、全体を見て魔法は作らない。

工程事に込められた魔力を使ってその工程を行う」


「料理で例えると鍋に具材を入れろって指示を出すと渡された材料全部ぶち込むって事か?」


「ん、だから、彼女みたいな魔力の大きな子は工程事に込める魔力の調整を行う必要がある。

リカルドは保有魔力がヘボいから、何も考えなくてもよかっただけ。

魔力が多い人は無意識に込める魔力も多いから大変。

でもそこを超えれば大成することも多い」


 なる程、つまり俺は魔力を理屈も知らず、何も考えずに魔力を込めても問題なく発動する程度の魔力しか持ってなかったわけか。


「つまり、サラには見込みがあるってことだろ」


 俺の言葉に、カリナは下を向いて考え込む。やがて顔を上げる。







「ん」


 カリナ独特の肯定。魔法以外ではとことん省エネな奴だ。


「それでだ。ここからが相談なんだが」


「話して」


 俺はニヤリと笑い、単刀直入に切り出す。


「サラに魔法を教えてやってくれねえか?」


「……へ?」


 サラが驚いて目を丸くし、間抜けな声を上げる。


 カリナは一瞬動きを止め、数秒後に再始動。コテンと首を傾げる。


「何故?」


「まぁ、カリナ聞け」


 勿体ぶって言う俺に、カリナの目が細まる。


 彼女は回りくどいのが嫌いだ。これは失敗だ。悪い癖が出た。


「お前にもメリットがあるんだ」


「どんな」


「人に物を教えるのはな、自分の理解も深まるんだ。

この二日間で俺はそれを痛感したぜ。魔法の知識がないからとにかく詠唱を覚えろとしか説明できないとかさ。

今だって初めて知ったんだぜ俺がサラを殺しかけてたなんてよ」


 まぁ、俺は分からないことが分かっただけだが。


「……」


「お前だってさっき俺に魔法の説明をしてた時、何か無かったか?

結構楽しそうに話してた様に見えたんだがな」


 実に気持ちよさそうだった。


 そしてカリナはまた固まった。


 下を向いて何やら考え込んでいる。


 カリナが下を向くのは珍しい。


 大抵、考え事の時は顔は正面、意識はお空の彼方へ飛ばす女である。


「頼む。俺はサラに魔法は教えられねえんだ。

見込みがあるなら面倒見てやってくれねえか?」


 頭を下げる。正直殺しかけてたとは思わなかった。


 危険を危険と認識出来ない奴に教えられる事なんてない。意地でもカリナに押し付ける。


 そんな俺の様子をみたカリナはやがて顔を上げると一度小さく頷いた。


「やってみてもいい」


「よし来た!明日からでいいか?」


「ん」


「だそうだサラ、やる……」


「やります!」


 早えし怖えよ。あと近え。さっきまでびくびくしてた奴はか?これが。


 鼻息荒く迫るサラから仰け反るように身を離しながら、カリナを見る。


「じゃあ、カリナ。明日からよろしく頼むわ」


「ん。場所は私の泊まってる宿の部屋。

夜だったらいつ来てもいい。

居なかったら遠出して留守にしてるから、その日はなし」


 カリナが感情の籠もらない目でサラを見ながら告げる。


 サラはカリナの言葉にしきりに頷く。


 無理すると首痛めるぞ。


 拳を握りしめ、日頃の大人しさが嘘のようにやる気を漲らせるサラの横で、複雑な笑顔を浮かべるレオンを見る。


 まぁ、こいつは俺が見ればいい。


 サラにだけ手を焼いてレオンを放置するのは俺の主義に反する。


 ……まぁその主義も、たった今作ったものではあるが――こいつは俺が何とかしてやる。これは俺の仕事だ。

■魔法の仕組み(カリナの説明より)

・魔法は「呪文(注文書)」と「魔力(材料費)」で構成される。

・呪文は世界に“こうしてほしい”と伝える言葉。 古代語を用いる。

・魔力はその注文を実現するためのエネルギー。

・魔力が多いほど、雑な呪文でも発動できるが、暴走のリスクも高まる。

・魔法は「発動の意思」がなければ起動しない。

・魔力は工程ごとに使われるため、調整が必要。

・魔力が多い人ほど、制御の訓練が重要になる。


サラは魔力の保有量が非常に多く、今後の訓練次第で大成する可能性があります。

……ただし、暴走すれば死にます。リカルド、反省中。


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