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3話 杖で殴れよ

魔法って不思議よね

 何故か緊張する2人を伴い。修練所へと向う。


 中に入って入り口近くの壁に立ちかけられていたボロの木剣を抜き取りレオンに渡した。


 レオンは帯剣してたからこれでいいとして問題はサラだった。


「サラ、お前は杖を装備してるが魔法が使えるのか?」


「はい……その、少しですけど」


 成る程魔法か、冒険者成り立てで使えるとは珍しい。


 意外に高度な教育を受けてるのか?


「どんな魔法が使える?」


「火を出したり水を出したりです」


「よくわからんな。あそこに的が見えるだろ。ちょっとここから撃って見ろ」


 サラは暫くじっと的を見つめていたが俺に向き直り一言。


「届きません」


「何?」


「私火は出せますけど、それだけです。水もチョロチョロと出せるだけです」


「……それでどうやって戦う」


 考え込むサラ。考えるなよ。


「火で炙る?」


 違うそうじゃない。考えなくても、戦えないだろうがクソガキ。


「……ちゃんとした魔法は追々、考える。暫くは、まぁ、杖で殴れ」


 遠距離から攻撃出来る所に魔法の強みがある。しかし、届かないらしい。要するに薪の着火等に使われる簡単な魔法で戦おうとしていたのだこの小娘。松明でも装備しとけ。


「はい……」


 がっくり項垂れるサラ。この世の終わりみたいな表情だ。


 ……こっちがいじめてるみたいではないか。







「……ちょっと見てろ」


 俺は的に向き合いつつ言った。


「戦闘用では一番簡単な炎の魔法だ。これから詠唱を行う。しっかり覚えろ。意味が分からなくても、詠唱が合っていれば発動する」


 ーーらしい。ちなみに俺は魔法使いではない。受け売りである。


「Ignis, congregare! Forma globi constitui! Progredere et hostem ure!」《炎よ集まり、球となれ!進みて敵を焼き尽くせ!》」


 詠唱の意味?知るか。意味が分からないのは俺も同様だ。


 音として記憶に焼き付けただけの言葉。


 世界が理解する言語らしい。


 とにかくこれが炎の魔法の詠唱なのだ。出ればいいのだ。


 翳した手に炎が集まる。炎は球体を象ると勢いよく飛び的に当たった。


「今のが炎の最下級魔法、ファイアボールだ。やってみろ」


 魔法を唖然として眺めていたサラがポツリと言った。


「えっと、何を?」


 ……一度じゃあ無理だよな。俺も紙に発音書き写して覚えたんだった。


「俺がさっき言った通り詠唱して魔法を出してみろ。呪文は間違えるな。何が起こるか分からん。発音は『イグニス、コン・グレ・ガーレ・ フォルマ・グロビ・コンスティトゥーイー! プロ・グレ・デレ、エト・ホステム・ウレ』だ、間違えるなよ。間違えると何が起こるか俺にも分からん」


 口をパクパクしながらオロオロするサラ。


「その、今の何語ですか?」


「知らん。 俺も丸暗記してるだけだ。 知り合いの魔法使いによると世界に語りかける為の言語らしい。世界語とかじゃないか。知らんが」


 気持ちは分かるが俺は本職ではないのだ。知らんものは知らんのだ。覚えろと言う他ない。


 その後、意外に記憶力の良かったサラに何度か詠唱の復唱をさせ、いざ本番である。


 緊張した面持ちのサラが的と向き合ってる。


「イ、イグニス、コン・グレ・ガ、ガーナ・ フォルマ・グロビ・コンスティトゥーイー! プロ・グレ・デレ、エト・ホステム・ウレ」


 発音が違う!物覚えがいいから油断してたぜ畜生!


 止める間もなく、サラの掲げる杖の先端に魔力が集まった。


 だが炎は球にならず、ぐにゃりと歪んだ塊のまま暴れ出す。


「きゃあっ!」


 サラが慌てて杖を振ると、炎の塊は横に逸れてサラに駆け寄ろうとしていた俺目掛けて飛んできた。


「うおおおぉ!?」


 驚いて飛び退くと眼前を炎が通り過ぎていった。髪の毛が少し焼けた。魔法怖い。


「アホ!間違えるなって言っただろうか!」


「ごめんなさい!」


 米つきバッタの如く頭を下げるサラを見て溜息を吐く。

 いや、やらせた俺が悪い。


「……おい。今“ガーナ”って言ったな。“ガーナ”じゃなくて“ガーレ・レ”だ」


 やっぱり杖で殴らせた方がいいわ。


 俺が本職の魔法使いなら教えてやってもいいのだが生憎俺もよくわからん。


「あ、あの」


 どうしたもんかと悩んでいるとサラが自分から声を掛けてきた。


「も、もう一度やってみたい……です」


「ぇ゙!?」


 俺はさっきサラの魔法に髪の毛が少し持っていかれたわけだが……


「い、いや、ほら危ないしまた間違えたらお前もどうなるか分からないし」


「大丈夫です!」


「何を根拠に?」


 随分元気よく言い切ったなおい。


「完全に覚えました」


「……本当に?」


「本当です」








 数分後サラから充分に距離をとったレオンと俺がいた。


「レオン、サラって意外と押し強かったりするか?」


 俺の問いかけにレオンが頷く。


「あいつ人見知りなだけで結構気が強いです。あと、なんかこだわりのあることとかに関しては凄くグイグイきます」


 猫被ってるだけかよ。


「覚えてもいない魔法に何を見いだしたんだあいつは……」


「楽しかったんじゃないでしょうか」


 俺は焼かれかけたわけだが。


 俺たちが立っていたあたりで豆粒みたいになったサラが深呼吸をしている。


 そして杖を掲げる。始めるようだ。


「Ignis,ーーー Forma glーーーー Proーーーere eーーーーre!」


 距離をとっている為サラの声は途切れ途切れで聞こえてくる。


 詠唱が完了したのか、サラの掲げた杖に炎が収束し球体となりーーデカくね?


「り、リカルドさん!サラの奴、あれ平気なんですか!?」


 レオンが目を丸くして叫んだ。知らん。俺をそんな目で見るな。俺は悪くねえ。いや、俺が悪いのか?


 とにかく、俺が出したファイアボールは拳大の大きさなのに対して、サラの出した火球は明らかに大きかった。


 聞いた事がある。保有魔力が大きい者は同じ呪文を詠唱しても威力が上がると。あれがそうなのだろう。


 以前居たパーティーでも魔法職の奴は魔法の威力が高かった。しかしあれ程の火球は見たことがない。


 大きくなった火球はサラの元から勢いよく飛び出す。


 一直線に飛翔した火球は的に命中。目標を灰にした。


 ギルドの設備を壊してしまった。リンダに怒られる。


 初対面時が嘘のように満面の笑みで駆け寄ってくるサラ。取り敢えず、知り合いの魔法使いに相談しよう。


 才能があるなら魔法に関してはそいつに押し付ければいい。


 俺はあいつを冒険者にはしてやれるが魔法使いにはしてやれんのだ。


 続いてレオンと軽く手合わせしてみたが、見事な素人である。攻撃は大ぶりばかり。剣を振る度に体が振り回される。


 レオンの攻撃を交わし続けると彼は勝手に疲れて動きが鈍くなっていった。


 まぁ、俺としてはこっちを予想していたのだ。サラの件があったから逆にホッとした。


 しかし、まぁ、レオンも素人としては悪くない。


 最低限の体力と弱い魔物ならば戦えるくらいの力がある事か分かった。


 これにて本日の教導依頼は終了である。


 明日からはこいつら連れて依頼するのか。骨が折れそうだ。


 余談ではあるが、魔法を本格的にやるなら読み書きは必須だな、などと迂闊に零してしまった。


 サラは俺が根負けするまで文字の読み書きを教えてくれとせがんできた。


 めっちゃ強引だった。リンダみたいだ。末恐ろしいガキだ。


 俺の仕事が増えた瞬間である。

魔法の設定が変わる度に書き直しまくりました。

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