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18話 よくある共存の形



 結局、コボルト共を6体連れ帰って来た俺達。


 サラが常時翻訳魔法を使う訳にも行かないので簡単な遺志疎通のサインを決めた。


 ハンドサインみたいなもんだ。どうしても話したいことがあれば口に手を当てろと言っといた。


 コボルトは今の所、大人しくしている。カリナが持ってきていた干し肉を一心不乱に噛んでいる。


 獣肉をただ干しただけだが、お気にめしたらしい。なんか臭みが無いらしい。処理の仕方の違いだろうが、お前らそれでいいのか?

  

 俺達の拠点としている町、カデナートの周りにはそれなりの城壁が町の周縁をぐるりと囲んでいる。


 何故か。

 外敵を入れないためだ。そんな町にペットと言い張ったところでコボルトを入れ込もうとしたらどうなるか。


 当然止められる訳だ。

 一応、魔物をテイムして連れ歩く人間は居るわけだが、コボルトは前例が無いらしい。


 当たり前だ知性持つ魔物をどうやって、テイムする。


 コボルト共の扱いはともかくとして、憂慮されたのは安全性である。結局門番だけで話はつかず、ドルガンのやつが町のお偉いさんを連れてきて話をつけた。


 ドルガンの奴、一体何言って丸め込んだ。


「カリナは魔法構文、リカルドは交渉内容を纏めてギルドに提出しろ」


 ……何故俺がそんな面倒な事をせにゃならん。言い出しっぺのレオンとサラがやるのが筋だろうに、解せん。


 レオンはまだよく字が書けない。


 サラはカリナに付いて魔法の完成度を高める。


 ハルナは今回、完全に巻き込まれてる。


 ……俺しか居ねえじゃねえか。クソが。


「紙代とインク代は出してくれよ……」


 それぐらい請求しても罰は当たらんだろう。


 俺は閉店間際の雑貨屋に駆け込むと、閉め作業を中断させられ、何か言いたげな店主を横目に紙とインクを購入して宿へと戻るのだった。







 翌日、ギルドに報告書を提出しに行くとカリナがいた。目の下に隈が出来ている。どうやら徹夜したようだ。


 後ろにはコボルト共が控えていた。丸洗いされたらしく、毛並みが良くなってるのが腹立つ。


 遠巻きにこちらを観察する冒険者達はコボルトがいつ暴れても対象できるように、武器に手をかけて過ごしている。


 普通に顰蹙買いそうだなこれ。


「カリナ、魔法構文の提出か?」


「ん、早く提出して宿に戻る。彼らを使って構文の改善を行うから。」


「どんな状態なんだ?」


「宿の店主が凄く困ってた。昨日は無理言って6体、私の部屋に押し込んだ」


 クレイジーである。


「サラはどうしたんだ」


「今は宿で寝てる」


 徹夜してたのってコボルトが部屋に居たせいじゃねえの?


「そいつら、これからどうするんだ?」


 洗浄済コボルトを見ながら俺が言うと、カリナが感情の籠もらない目で言った。。


「取り敢えず、奴隷に装着する魔道具を参考にしたものを作った。主人に危害を加えようとすると全身が痛むやつ」


 犬ころ共の扱いがどんどん非人道的になっている。


「コボルト共とは昨日あれから話したのか?」


「ん、町で過ごす簡単なルールとこの子達を養うにあたって協力して貰いたいことを説明した」


 その時、コボルトが口元に手を当てる。


 話したいことがあるサインだ。カリナがギルド内部にも関わらず魔法を使用する。


 やがて詠唱が終わるとコボルト共が話し出した。


「おい、カリナ!俺の事を睨みつけやがるあのクソ共は殺してもいいのか?」


「ダメ」


 即答である。当然だ。睨み付けてくるクソ共とは遠巻きに観察してる冒険者共の事だろう。


 コボルトの言葉がギルド中に響き、周囲がざわつく。


「今の、魔物がしゃべったのか?」


「魔法、かな?」


「それよりあのクソ犬、俺達を殺すとかほざきやがった。いい度胸だ。掛かってきたら八つ裂きにしてやる」


 周囲がのべつまくなしに話した結果、カリナの魔法はあっという間に切れてしまった。


 カリナが何か鳴き喚くコボルトに手を持差し出し制する。魔法切れの合図だ。


「魔法が切れた。これも課題点だね。翻訳先を選別出来てないから魔力の消費が激しい」


 もう一度、魔法を使ったカリナは直後にマジックポーションを飲み干した。  


 マジックポーションはジワジワと魔力を回復するので早めに飲む必要があるんだっけか。つまり、魔法が切れたらすぐに次の魔法を発動するつもりである。連続使用も辞さない構えだ。


「なにを言おうとしたの?」


「なんで俺等までついてこなきゃなんねえんだ……」


「宿にあなた達だけ置いて置けないから。見張ってる。変な真似をしたら、もう家族には会えなくなる」


 The、脅迫である。家族に会えなくなるなるというのはまあ、そういう事だろう。


「……もうあんたにゃ逆らわねえよ。こんなのも付けられちまったしよ!」


 コボルト共が自分の首に付けられた輪っかを差して言った。


 そんなコボルトをビー玉のような目で見返したカリナがぼそっと言った。


「魔物使いの首輪と仮名しよう」


 感情の籠もらない声でそう言ったカリナは続けてこう言った。 


「貴方達にお願いしたい事は昨日話した通り。

暫く研究に付き合って欲しい。

悪いようにはしない。

見返りとして食料の面倒は見る。

家族とも合わせてあげる。

研究が済めば解放してもいい」


 カリナに言われた事を訝しむようにコボルトの一体が言った。


「……本当だろうな」


「本当、ただし、印は付けさせてもらう。

人と生活した魔物がどうなるのか興味がある」


「その後、人を襲ったらお前は俺達をどうするんだ?」


「皆殺し」


「アオーン!ワン!ワン!」


 あ、魔法切れた。


 見事な遠吠えだ。負け犬共の遠吠えルーザドッグス・ハウリングと名付けよう。


 その造語。再び使用する機会はあるかわからんがな。


 もう一度、翻訳魔法を使ったカリナがコボルト共を黙らせ、俺達は観衆を置き去りに、石鹸の香りを巻き散らせるコボルト共を連れ立ちドルガン元へ向う。


 支部長室の扉を開けると、ドルガンが鎮座し書類仕事をしていた。


 絶望的に似合わない。


「ドルガン。お望みの報告書と魔法構文の写しだ。机、置いとくぜ」


 ドルガンの机に報告書とカリナの書類をボスと置くとそのまま「じぁあな」と言って立ち去ろうとした。


「リカルド、カリナ。少し話をしたい」


 逃げられなかった。


「カリナ、そのコボルトと話せるか?」


 カリナが本日何度目になるかわからない翻訳魔法を使用する。


「話していいよ」


  カリナが告げるとドルガンが口を開いた。


「俺はドルガン。お前達名前はあるのか?」


「……だったらなんだ」


 犬歯をむき出したコボルトが言う。


「本当に通じてるな。いや、気になっただけだ。

俺達人間は初対面では互いの名前を教え合うことから始めるもんでな」


 さして気にした様子もなく、ドルガンが言う。


「……俺達にそんなものはない」


 警戒するようにドルガンを見ながら言うコボルト。


「そうか、人間側の都合だが、貴様らを町に拘留する以上、各個体を識別する為の名前が必要だ。何か希望はあるか?」


「ねえ、んなもんなんだっていい。勝手呼びやがれ」


「そうか、じゃあカリナ、こいつらの名前を決めてくれ」


 そう言ってドルガンは赤地に番号の書かれた腕輪を出してきた。


「人間からは見分けがつかんからな。こいつの番号と名前を紐付けろ。囚人なんかにはめる腕輪だが……」


「1番ハチ、2番ポチ、3番タロ、4番チャチャ、5番ハル、6番タマ。これがあなた達の個体名になる。いい?」


 タイムラグなしで答えるカリナ。めっちゃ適当だった。一応確認を取るあたり、カリナなりに気にはしてるんだろうが。


「なんだって構わねえよ」


 そう言って1番の腕輪をとったコボルト。


「よし、貴方は今日からハチ」


 カリナの声につまらなそうに鼻を鳴らすコボルト。


「は、呼ばれたってわかんねえよ。お前らで勝手にやってくれ」


 吐き捨てるように言うハチの言葉にカリナは少し考えると、また何かの呪文を詠唱した。


 詠唱が終わり、カリナが「ハチ」と呼ぶと、コボルトの体がビクンと跳ねた。


「いでででで!!」


 体をのけぞらせながらイヤイヤするように首を振るハチを見て俺は言った。


「何したの?ーーお前」


「名前を呼ばれたコボルトに軽い電気が流れるような魔法をかけた。

今は魔法だけど、帰ったら腕輪に魔道具の機能として組み込む。

これでこの子達も自分が呼ばれたことがわかる。

凄く便利。でもちょっと電気が強かった」


 これはカリナなりの善意である。


 流石、道徳感はそれなりなのに倫理観0の女だ。やることが違う。


 適当に腕輪を取ろうとしていたコボルト共が手を伸ばしかけた姿勢で固まってるし。めっちゃ躊躇してた。


「これで、あなた達も名前が分かるようになるね」


 カリナにしては珍しく。本当に珍しく。目が笑ってない笑顔をコボルト達に浮かべていた。案外こいつなりに可愛がってやるつもりなのかもな。


 その笑顔は毎度毎度ゾッとするんだが。


「それじゃ、ポチとハルとチャチャとタロとタマもハチと同じ魔法かけてあげるからおいで」


 カリナが手招きすると、コボルト共がざっと後ずさりながら言った。


「「「「「俺達は大丈夫!自分の名前ぐらいは理解できるぜ!」」」」」


 声を揃えて言う5体をジッと眺めながら考え込むカリナが唐突に言った。


「ポチ」


「ワン!」


 カリナの犬になった瞬間だった。残り4体も自分の名前で返事をした。


「凄いね。これなら魔法は要らないね。いい子。いい子」


 そう言ってカリナはコボルト共の頭を撫でる。何この絵面。


「クーン」


 お前らそれでいいのか…

 カリナの無慈悲な躾で従順化されていて行く犬ころ共を俺とドルガンはドン引きしながら眺めていたのだった。


「か、カリナ」


 唯一、電気ショックを施されたハチがオズオズとカリナに声を掛けた。


「何?ハチ」


「いでででで!!」


 カリナに名前を呼ばれた事で電気が流れる。そして電気ショックが終わった瞬間、ハチは力強くカリナを見据えて言った。


「俺も覚えたから魔法解除してくれ。俺はハチだ!ワン!」


 コボルトのプライドは犬に食わせたらしい。


 カリナに上下関係を仕込まれた犬ころは以降飼い主のカリナそして飼い主とよく一緒にいるサラには従順になるのだった。



マイルドにしたつもりですが、かなりブラックな感じですね。人間っていいですね。

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