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原爆投下

 広島や長崎に原爆を投下された日には主だった人達は黙祷をする。日本人として当然だろうが、正直私は黙祷をそれほどしたことがない。


 被爆者に対して何も感情が無いわけではない。八十年経った今でも苦しんでいる生存者は沢山いる。


 多くの日本人達は被爆者を哀れんだり罪悪感を覚えたりする。しかし私は高校の時からアメリカへの憎悪を覚えるようになった。


 「アメリカの原爆の投下はテロだ」

 私が当時通っていた高校の化学教師がそんな事を言った。丁度、アメリカが九一一のテロの報復としてイラクやアフガニスタンに侵攻していた時だった。


 言われてみれば確かに、と、私は思った。アメリカは既に東京や大阪に空襲を仕掛けていたが、原爆の被害はそれを遥かに凌駕する恐ろしい行為だ。日本は唯一の被爆国だがアメリカも唯一の投下国なのだ。


 更に最近、私は原爆投下に疑問を持つようになった。何故、ドイツには原爆を投下しないで日本には二発も投下したのか。確かにドイツは日本より早く降伏したし冷戦で東西に分裂した。けれどもドイツもまた、日本と同じかそれ以上の非人道的な行為を国家的にしていた。ナチスによるユダヤ人虐殺、ホロコーストだ。非人道的な国家的犯罪を理由にするならば、ドイツもまた原爆投下されてもおかしくなかった。


 日本は確かにアジアを侵略し他民族に様々な暴力を振るい搾取してきた。けれども欧米もまたアジアや中東やアフリカに植民地を開拓して悪虐な事をした。中国を半分植民地にしたのは日本だけではない。


 日本がアジア侵略に対して罪悪感を持ったり反省したりするのは当然だけれども、欧米はどうだろうか。欧米は本当に日本を嘲笑できるのだろうか。


 アメリカが二度も日本に原爆を投下した理由は人道的な報復ではないとすると、民族差別と人体実験が動機ではなかろうか。新兵器を実戦で使う事による抑止力だ。非白人ばかりの日本人相手に原爆を投下してもアメリカ政府の良心は痛まない。そう考えたくなるのだ。


 その一方で広島県民や長崎県民が真摯に黙祷しながら平和を祈る。一番苦しんでいるこの人達が最も謙虚に戦争を悔いて平和を祈る。それに対して他の地域の日本人も見習うべきだろうが、私は正直に言えば釈然としない。広島県民も長崎県民もアメリカや核保有国に対して憎悪を持って良いのではなかろうかと思うのだ。憎しみは争いを生むと言うけれど、感情を抑圧する方が恐ろしい。


 少なくない広島県民も長崎県民もアメリカの核に守られている日本政府を批判しているが、こんな敗戦国を批判しても変わらないのではなかろうか。


 今の日本政府の態度は性犯罪被害者が別の性犯罪加害者から守る為に自分に性暴力を振るった加害者と一緒に暮らしているようなもの。国辱だ。アメリカとその他の核保有国を憎み非難する視点も有りかと思う。


 中国もインドもロシアもイギリスもフランスも持っている。イランやイスラエルや北朝鮮も恐らく持っている。これらの国は非難の対象ではなかろうか。日本を非難しても何も変わらない。


 むしろ被爆国だからこそ日本は核武装して世界に報復する可能性だってあるのだ。それを異常だと思うならば、イスラエルと戦争しているパレスチナの武装勢力も異常になる。実際は日本は少なくとも建前上は非核三原則を宣言している。日本を非難するのはあまり意味が無いと思う。

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