第7話「『真の使命』、そして『真の裏切り』の始まり」
僕の心を深く抉るミカエルの言葉は、僕がこの世界で信じてきた全てを、根底から覆した。
僕は、この世界の終末を回避するために、この世界を破壊しようとしていた。
ミカエルは、それを止めるために、僕を殺そうとしていた。
僕の使命は、**『偽りの使命』であり、ミカエルの使命こそが、『真の裏切り』**だった。
僕は、フィロナの手を握りしめ、ミカエルに告げた。
「ミカエル。僕は、彼女を救う」
「……愚かな。君がフィロナを救えば、この世界は、完全に消滅する。そして、君自身も、管理局の観測者としての資格を失い、この世界に囚われる」
ミカエルは、僕にそう告げ、再び銃を構える。
だが、その銃口の先は、僕ではなく、フィロナに向けられていた。
「時間異常の特異点は、発見次第、抹消する。それが、管理局のルールだ」
ミカエルの言葉に、僕は驚きを隠せない。
彼は、本当に、フィロナを殺そうとしているのか?
だが、僕は、フィロナを、ミカエルから守らなければならない。
僕は、フィロナをかばい、ミカエルの前に立つ。
「ミカエル。彼女を殺すなら、まず、僕を殺せ」
「……イリス。君は、自分の選択を間違えている」
ミカエルは、静かにそう呟き、銃の引き金を引く。
その瞬間、僕たちの脳内に、一つの映像が流れ込んできた。
それは、僕が知っている、この世界の歴史とは、全く違う歴史だった。
僕が、この世界の崩壊を止めるために、ミカエルを殺そうとしていたこと。
僕が、この世界の崩壊を止めるために、フィロナを殺そうとしていたこと。
「……これが、僕の、本当の使命……」
僕は、この世界の『新たな真実』を知った。
僕が、この世界の崩壊を止めるために、この世界を破壊しようとしていたこと。
そして、ミカエルが、僕を止めるために、僕を殺そうとしていたこと。
僕の物語は、ここから、本当の意味で始まる。
僕たちは、この世界の『新たな真実』を前に、本当の戦いへと向かうのだ。
だが、その戦いは、ミカエルとの戦いではない。
僕自身の、本当の使命との戦いだ。
僕は、フィロナの手を握り、ミカエルに告げた。
「ミカエル。僕は、君がフィロナを殺すことを許さない。僕は、彼女を救う」
「……ならば、君を殺す」
ミカエルは、そう告げ、僕に銃口を向ける。
その銃口の先は、僕の頭に向けられていた。
僕は、静かに目を閉じる。
僕がこの世界で選んだ選択は、僕自身の存在をかけた、最後の選択だった。