第4話「禁じられた選択、そして『最後の観測者』」
僕は、このループの中で、一つの決意を固めた。
【管理局】のルールを破り、フィロナを救う。
たとえ、それが、この世界を、そして、僕自身の存在をも消滅させることになったとしても。
僕は、彼女に微笑みかける。
「フィロナ。君は、僕がこの世界に来た理由だ」
「えっ……?」
僕は、彼女に手を差し伸べる。
「僕と一緒に来てくれないか?」
僕の言葉に、フィロナは戸惑ったような顔をした。
無理もない。
僕たちは、出会って間もない。
そして、僕は、彼女に、この世界が崩壊することを告げていない。
「……どうして?お兄さんは、一体、誰なの?」
「僕は、君を救うために、この世界に来た」
僕は、彼女に、僕の正体を明かす。
僕が【時間異常管理局】の観測者であること。
僕が、この世界の崩壊を止めるために、この世界をループしていること。
そして、この世界の崩壊は、フィロナ自身が引き起こしていること。
「……信じられない」
フィロナは、僕の言葉を信じることができなかった。
当然だ。
誰もが、自分の存在が、世界の崩壊を引き起こしているなどと、信じられないだろう。
「信じなくてもいい。ただ、僕と一緒に来てくれればいい」
僕は、彼女に手を差し伸べ続ける。
フィロナは、僕の手を見て、静かに頷いた。
「……わかった。お兄さんを信じてみる」
僕たちは、手を取り合い、この街から脱出を試みる。
だが、その時だった。
僕の脳内に、一つの声が響き渡る。
「イリス。管理局のルールを破るな」
その声は、僕がこのループを始めた時に、僕に与えられた、**『禁じられた真実』**を告げた声だった。
【管理局】のルールは絶対。
「観測対象に干渉してはならない」
「時間異常の特異点は、発見次第、抹消する」
僕に与えられた使命は、フィロナを救うことではない。
フィロナを抹消し、この世界の崩壊を回避すること。
それが、僕の本当の使命だった。
「イリス。君がフィロナを救えば、この世界は、完全に消滅する。そして、君自身も、管理局の観測者としての資格を失い、この世界に囚われる」
僕の脳内に響く声は、僕の心を深く抉った。
僕は、彼女を救えば、僕自身も消滅する。
それでも、僕は、彼女を救いたい。
僕の物語は、ここから、本当の意味で始まる。
僕たちは、【管理局】のルールを破り、フィロナを救うための最後の戦いへと向かう。
この戦いは、僕自身の存在をかけた、最後の戦いとなる。