第2話「千の死、そして一つの『正解』」
僕は、この街で、フィロナと出会う。
そして、彼女に恋をする。
「お花、いかがですか?」
街の片隅で、フィロナは、僕に話しかけてくる。
彼女の笑顔は、何度見ても、僕の心を揺さぶる。
だが、僕には、その笑顔が、あと24時間で消えてしまうことを知っている。
僕は、彼女を救うため、この世界をループする。
無限の可能性の中からたった一つの**「正解の選択肢」**を見つけ出すために。
最初のループ。
僕は、彼女に声をかけた。
「君の名前は?」
「フィロナです。お兄さんは?」
「イリスだ」
僕たちは、他愛のない会話を交わした。
だが、24時間後、街の崩壊に巻き込まれた彼女は、僕の目の前で死んだ。
次のループ。
僕は、彼女に、街から逃げるように説得した。
「この街は、あと24時間で崩壊する。君は、今すぐこの街から逃げなければならない」
「……どうして、そんなことを?」
彼女は、僕の言葉を信じなかった。
24時間後、街の崩壊に巻き込まれた彼女は、僕の目の前で死んだ。
その次のループ。
僕は、彼女を無理やり連れ出した。
だが、僕の行動は、街の崩壊を早めてしまった。
24時間後、街の崩壊に巻き込まれた彼女は、僕の目の前で死んだ。
何度繰り返しただろうか。
100回、200回、いや、もう数えることさえやめてしまった。
僕は、彼女を救うために、あらゆる可能性を試した。
だが、その全てが、彼女の死という結末に終わる。
その刹那、僕は理解した。
選択を誤るということは、**「彼女の死体だけを永遠に見続ける」**という、地獄のような報いなのだと。
だが、僕は、諦めなかった。
僕は、この世界の謎、彼女の秘密、自分自身の存在意義と対峙していく中で、一つの真実を知ることになる。
フィロナを救うことは、この世界そのものを変えることだった。
そして、この世界の崩壊は、フィロナ自身が引き起こしていた。
彼女は、この世界の崩壊を、無意識のうちに引き起こす、**“時間異常の特異点”**だったのだ。
僕は、千のループの果てに、彼女を救うことができるのだろうか。
そして、彼女を救うことができた時、この世界は、どう変わってしまうのだろうか。
僕の物語は、ここから、本当の意味で始まる。