第1話「24時間で世界が滅びる街」
世界が崩れる音は、静寂よりも静かだった。
2083年の地球。僕は、並行世界を保護する秘密組織【時間異常管理局(ChronoLoop Bureau)】に所属する観測者だった。コードネームはイリス。僕の使命は、時間異常によって崩壊する運命にある世界に介入し、その原因を特定すること。そして、その原因を取り除くことで、世界の崩壊を回避することだった。
この日、僕が観測対象として指定されたのは、とある異世界。
ここは、剣と魔法の世界だった。
僕は、この世界で、ある少女と出会った。彼女の名前は、フィロナ。
彼女は、街の片隅で、小さな花を売っていた。
僕は、彼女に恋をした。
だが、その世界は“あと24時間で崩壊する”と判定された世界線だった。
僕は、彼女を救うため、禁じられた**“時間改変”を決意する。
救うには、無限の可能性の中からたった一つの「正解の選択肢」**を見つけ出すしかない。
僕は、たった一人、同じ24時間を何千回と繰り返す中で、世界の謎、彼女の秘密、自分自身の存在意義と対峙していく──。
そして、今、僕は、この世界にいる。
もう何度繰り返しただろうか。
100回、200回、いや、もう数えることさえやめてしまった。
この世界は、あと24時間で崩壊する。
僕は、この街で、フィロナと出会う。
そして、彼女に恋をする。
「お花、いかがですか?」
街の片隅で、フィロナは、僕に話しかけてくる。
僕は、彼女に微笑みかける。
「ありがとう。でも、今日はいいんだ」
僕は、彼女から離れようとした。
だが、その時だった。
僕の脳内に、一つの映像が流れ込んできた。
それは、フィロナが、街の崩壊に巻き込まれ、死んでいく映像だった。
その刹那、僕は理解した。
選択を誤るということは、**「彼女の死体だけを永遠に見続ける」**という、地獄のような報いなのだと。
僕は、彼女を救うため、この世界をループする。
何度も、何度も、何度も……。
そして、僕は、この世界に隠された、一つの真実を知ることになる。
フィロナを救うことは、この世界そのものを変えることだった。
そして、この世界の崩壊は、フィロナ自身が引き起こしていた。
これは、千のループの果てにたどり着く、一人の少女を巡る壮大な構造ミステリー。
僕は、千のループの果てに、彼女を救うことができるのだろうか。