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閑話 クリスマス

メリークリスマス!皆様が素敵なクリスマスを過ごされますように☆

「イブは何もなく過ぎてしまったな…フフフ‥でもまだ今日はクリスマス‥」

真秀が休憩室で突っ伏しながら何やらぶつぶつと呟いている。そんな真秀の頭をよみねが持っていたペットボトルで勢いよくぶっ叩いた。ごん、と鈍い音がした。

「うるさいわね。そういうことを言っていいのは普段から恋愛活動心がけているヤツだけなのよ」

「いいいたああい!」

真秀は突っ伏したまま頭を抱えてぴくぴく震えている。確かにアレは痛かっただろうな、と読真は首をすくめながら暖かい珈琲を啜った。

今日は第九隊と一緒の訓練である。クリスマスや年末年始も変わらず、対異生物特務庁(イトク)のチームはスタンバイしておかねばならないのであまり関係はない。だが街の中はクリスマスムードをこれでもかと盛り上げているし、スーパーなどではすでに年末に向けての商戦も繰り広げられている。


「恋愛活動、する暇ねえんだもん‥」

机に上半身を寝そべらせたまま、顔だけをあげて真秀が恨めしそうにそう愚痴るとよみねは呆れたように言った。

「‥自分でそういう道を選んでんだから文句言うんじゃないわよ」

「せめて愚痴くらい言わせてくれ!」

「うざい!」

「お前、心の狭い女はモテねえぞ!」

「あたしは今モテても困るのよ!」

ドン!と机を叩いてそう怒鳴ったよみねの顔をじっと見て、真秀はしおしおとまた顔を伏せた。

「確かにそうだな‥」

どう見ても十一、二歳くらいにしか見えないよみねの姿を見てはそういうしかない。シダへの淡い思いを知っている真秀としては、それ以上の言葉をかけられなかった。

くつくつと笑いながら二人のやり取りを見ていた第九隊長のツメが、雑に真秀の背中を叩きながら読真に話しかけてきた。

流文字(りゅうもんじ)はどうなんだ?お前モテそうだけど、何か誘われなかったのか?」

「あー‥」

一瞬、そう口ごもった読真に、ガバリと真秀が顔をあげて叫んだ。

「うえっ!読真、何かあったの?誘われたの?」

その勢いに思わず読真は普通に答えてしまった。

「ああ、なんかクリスマスパーティーをするから来ないか、とか一緒にご飯しないか、とかそういうのがありましたね‥」


真秀はガタンと椅子を蹴って立ち上がった。顔が引き攣りそうにひくひくしているが、そうしながらも変な笑顔が作られている。どういう状態なんだ、と少し気味悪くなって何となく身体が少し後ろに下がった。

真秀はあっという間に読真の横に来てぐいぐいと襟元を掴んだ。

「え?え?お前実はめくるめくイブの夜を楽しんでたの?あれ?昨日お前俺と一緒にかつ丼食ったよな?あの後実は女子と楽しいことしちゃってたの?ええええ」

「うるさい!そんなこと言ってないでしょう!」

何と目にじわっと涙を浮かべながら唇を震わせて悔し気に読真の襟首をゆさゆさ揺する真秀がうっとうしくて、ドンと乱暴に押しのけた。

真秀は「ずるい‥」と言いながら恨めし気に読真を見上げてくる。読真はめんどくせえなと思いながらため息をついて説明した。


「誘われただけで行ったとは言ってないでしょう。そういう誘いがあった、というだけですよ。字通(あざとり)とかつ丼食ったの夜九時じゃないですか。その後何かする暇なんかないでしょ」

面倒くさそうにそう言ってひらひらと片手を振る読真を、それでも真秀は悔しそうに睨みつけた。

「ずるい!やっぱイケメンずるい!読真なんかあんなに無愛想なのにお誘いが色々あってさ、俺なんてあんなにみんなに挨拶しまくって交流に努めてるのに誰にも誘われなかったぁぁぁ」


うっとうしいな、と思っていたらよみねが再び持っていたペットボトルで真秀を殴った。今度はペットボトルの底を直角に落として殴っていた。すごい音がした。

「いっっ‥てぇぇ」

頭を抱えてうずくまる真秀を見下ろして、よみねはふん、と鼻を鳴らした。

「そういうウザいこと言ってるヤツなんか一生誘われないわよ。あんたは女ならだれでもいい感が出てるから相手にされないの!」

「えええ俺そんなことこれっぽっちも思ってないのに!」

うずくまって頭を抱えたまま涙目で反論する真秀に、腕組みをしてよみねは冷たく言った。

「へええ、じゃあどういう子がいいと思ってるか言ってみなさいよ」

真秀はまだ頭は抱えたままだったが、ぱっと笑顔になった。

「俺の事めっちゃ好きなかわいい子!」

「はいダメー」

「何でだよ!?」

よみねは腕組みをしたまま真秀の方に顔を向けて見下ろした。

「それは誰でもいいと同義語。自分のこと好きなら何でもいいんじゃない。しかもかわいい子、って。キモイ。誰でもいい風にしながら顔のよさも要求しちゃうところがキモイ」

「そんなことねぇのにぃ‥」

第九隊の隊員たちが横で大笑いをしている。第九隊の隊員たちは二十八歳から三十五歳で、四人中三人は既に結婚している。真秀たちのやり取りが微笑ましく思えたのだろう。

真秀は納得いかない、という顔をしながらしぶしぶまた椅子に座った。おやつのチョコバーをかじりながらツメの方に目を向ける。

「ツメさんは?ツメさん独身ですよね?恋人いるんですか?」

ツメは呑んでいたペットボトルを口から離して頷いた。その頷きに真秀は目を瞠ってがっくりとまた机に突っ伏した。

「マジか‥ツメさんもリア充‥」

よみねがそんな真秀を無視してツメに尋ねた。

「今日はもう訓練報告書けば上がりですよね?恋人さんとどこか行くんですか?」

よみねが年相応に、わくわくした顔でツメを見つめる。ツメは少しだけ笑って応えた。

「いや、特に行かないな。俺の方が今日は早いから、俺が晩飯作るんだ。今日は早上がりだからケーキも焼こうかと思ってる」

よみねがぱああと顔を明るくして満面の笑顔になる。

「うわあ~!素敵!そういうカップル憧れます!」

そう言ってじろりと真秀を睨む。

「あんたも好きな女に何かしてあげられる男になんなさいよ。何でも与えてもらおうなんて図々しいのよね」

とどめの一撃を食らって真秀がまた顔を伏せた。「ううう」と唸っている声が小さく聞こえる。


それを聞きながら、読真は

(今日もかつ丼は嫌だな‥でも絶対字通(あざとり)は晩飯一緒に食おうって言うだろうな‥)

と考えていた。

すると真秀が、またばっと顔をあげて読真に言った。

「読真!ケーキ買いに行こ!そいでフライドチキン屋に並んで夜フライドチキン食べよう!」

「嫌です」

「おおねええがあいいいい」

「嫌です」

「可愛い女の子無理ならせめて読真のイケメン顔を眺めて飯食いたいいい」

「きも」

「嫌です」

よみねと読真二人からの冷たい言葉を受けても真秀は読真に取りすがって蹴り飛ばされていた。


お読みいただきありがとうございます。

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