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『第 章 奪還』

謎の少年少女二人組に連れ去られたレジーナを取り戻すべくシーナとバハムート、ニーズヘッグは月明かりの照らす夜の荒野で二人の前に立ちはだかる。

「ド、ドラゴン・・・⁉」

少女の方、ユウナはバハムート達の重圧に震えていた。

対して少年の方、コウタは圧に押されてはいるものの警戒態勢をしていた。

「レジーナ!」

シーナは二人の足元で縛られてるレジーナを見つける。

彼女は悶えているが大きな怪我とかはなさそうだ。

「待ってて、必ず助けるから!」

シーナはコウタとユウナの前に立つ。

「君達、ヨルムンガンドの連中?」

「ご名答です。僕はコウタ。彼女は仲間のユウナです。」

「見た所まだ二十手前の子供じゃない。何故レジーナを狙ってるの?彼女に何かあるって言うのかしら?」

「それは極秘ですので教えられません。ですが僕達にとって彼女は必要な存在なんです。彼女をこのまま僕達に預けてくれたら今後貴女の前には二度と現れない事を約束します。」

するとシーナは腰を低くすると両手の拳に黒炎を纏わせた。

「生憎、私の仕事はその子の護衛なのよ。どんな理由だろうと、レジーナは渡さないわ!」

地面を蹴り素早い速度で迫るシーナ。

するとコウタは銀の羽ペンを持ちスケッチブックに何かを素早く書き込む。

その瞬間、シーナの繰り出す拳の前に突然盾が現れた。

「っ⁉」

盾を蹴って距離を取ると盾は消える。

(今の盾、どこから出てきた?)

「ユウナ。彼女をつれて下がって。僕はともかく、君は戦闘向きじゃない。」

「分かってる・・・。」

ユウナは袋詰めのレジーナを重そうに抱えて下がるとユウナの頭上にニーズヘッグが現れる。

「レジーナを返してもらうぜ嬢ちゃん!」

バハムートは後方支援につきシーナは攻めに出る。

拳に黒炎を纏って殴りつけるもコウタはスケッチブックから一枚引きちぎると鋭い形状の盾が実体化しシーナの拳を受け止める。

「また!絵に描いたものを実体化できるのか?」

「ご名答。これが僕の能力、僕の書いたものは魔力を通せば現実となる!」

もう一枚スケッチブックから引き抜くと樹木の身体をした人型の魔獣を実体化させた。

「なにこれ⁉樹⁉」

「あれ?この世界にマンドレイクはいないのかな?」

(マンドレイク?樹獣って意味?そんな魔獣は聞いたことが無いわ。この子は一体?)

訝しんでいるとマンドレイクは太い樹の根をこちらに仕掛けてきて寸前でかわすことが出来た。

(見たことない魔獣に何もない所からあらゆるものを生み出す魔法、厄介ね!)

すると一本の熱戦が樹の根を薙ぎ払う。

「バハムート!」

「樹の魔獣は我が引き受ける!お主はあの小僧を相手しろ!」

「オーケー!」

バハムートと共に根による攻撃を掻い潜りマンドレイクを突き飛ばす。

その拍子に乗っていたコウタが降りると同時にシーナはすかさず拳を振り下ろす。

しかし既に実体化させていた鋭い形状の盾に阻まれてしまう。

「っ!」

「僕を侮らないでください。」


 一方でレジーナを抱える少女ユウナの前に立ちはだかるニーズヘッグ。

「こちとらか弱い嬢ちゃんを傷つけたくないんだ。大人しくレジーナを返してくれ。」

「・・・それは出来ない。私達には、どうしてもこの娘が必要なの!」

ユウナはレジーナを抱え上げ走り出そうとする。

「行かせるか!」

ニーズヘッグが腕を伸ばすと、

「『止まって』!」

「っ⁉」

突如身体が石化したかのように動かなくなった。

(何だ⁉動けねぇ⁉)

その隙にユウナはレジーナを抱えてその場から逃げる。

暫くすると身体の自由が利くようになった。

「チッ!妙な魔法使いやがって!」

人間の脚にドラゴンの脚が負けるはずもなく、一瞬でユウナを先回りする。

再びレジーナを取り戻そうと腕を伸ばすが、

「『弾いて』!」

見ない壁のような何かに弾かれてしまう。

(また!何がどうなってやがる?)

ニーズヘッグがユウナの謎の力に苦戦してる中、浮かぶ盾を構えるコウタにシーナは、

「ねぇ君。一体何者なの?あまり見慣れない顔つきだし、何より、君の使う能力、ハッキリ言ってありえない。」

この世界に魔法は存在するが描いた絵を実物にする魔法など存在しない。

断言できる。

「・・・当然でしょうね。僕達は、()()()()()()()()()()()()()()()()。」

「え?それはどういう・・・?」

疑問に一瞬気を緩めてしまった隙をつかれ、鋭い盾による不意打ちをくらってしまい大きく弾き飛ばされるシーナ。

「敵に隙を見せるのは致命的ですね。子供だからって侮らないでください。」

次々とスケッチブックから紙を頬り出すと多種多様な武器が現れ一斉にシーナに降りかかる。

「「シーナ⁉」」

バハムートとニーズヘッグがこちらに振り向く。

「コウタ!何も殺すことは・・・!」

「生かせばしつこくその少女を追いかけるかもしれない。そうなれば彼女は僕達にとって害だ。今のうちに排除しなくちゃいけないんです。ユウナ、君の今の思想ではこの先この世界で生きていけないよ?」

「コウタ・・・。」

ユウナはギリッと歯を食い縛り、ボソッと何かを言う。

「昔の君はそんなんじゃなかったのに・・・。」

すると突然土煙から爆風が吹き荒れ辺りの砂ぼこりを吹き飛ばす。

「っ⁉」

そこには姿勢を低くし、漆黒の闇で巨腕を模った大きな腕と背中に翼の形をした黒い闇。

そして瞳は血のように深紅にギラつく変わり果てたシーナが立っていた。

「ヴァアアアアア‼」

咆哮と共にその赤い目でコウタとユウナを睨むと二人は感じた事のない程の恐怖に見舞われる。

(な、何だ⁉この恐怖感は・・・⁉)

(苦しい・・・!息が出来ない程に・・・!)

「シーナ・・・、お主闇の力を・・・!」

シーナに気を切られてる隙にマンドレイクによる攻撃がバハムートに襲い掛かる。

「くっ!お主の相手をしてる暇は無くなった!早々に消えてもらう!」

「・・・ハッ!今だ!」

我に返ったニーズヘッグが恐怖で固まってるユウナの隙をついてレジーナを奪い返した。

「しまった!」

「コウタ!前!」

ユウナの声に振り返るといつの間にかシーナの拳が音を立てずに目の前にまで迫っていた。

咄嗟にもう一体マンドレイクを実体化させるもシーナの黒い拳はマンドレイクをコウタごと殴り飛ばす。マンドレイクはシーナを攻撃するも正面から力任せにねじ伏せられ、マンドレイクの胴体を引きちぎってしまう。

その姿は紛れもなく、化け物であった。

「コウタ!」

ユウナが駆け寄るもシーナは容赦なく黒い拳を振り下ろす。

「『守って』!」

見えないバリアのようなものに防がれるがそれすらも強引に砕き割ってしまった。

「そんな⁉私の『マジックワード』が⁉」

「ガアァァァァ‼」

その黒い巨腕でユウナの首根を掴み上げるシーナ。

「よせシーナ!レジーナはもう取り返した!後はずらかるだけだ!」

ニーズヘッグが呼び掛けるもシーナの様子は変わらない。

ユウナは悶え苦しみ徐々に意識が消えかけたその時、何処からかの狙撃によりシーナの腕が破壊されユウナは腕ごと落とされた。

「何だ⁉」

すると月を背後に上空からフードを被った一人の人物がユウナたちの前に降り立った。

「ゴホッ!ゴホッ・・・!ショウヤ?」

ショウやと呼ばれたフードの男は咳き込むユウナに振り返る。

「先走った割に随分情けない状況だな。二人とも。」

「ショウヤ、何でお前が?」

「大河の馬鹿がレイラス王国に殴り込みに行ったんだ。ちんたらやっててもつまらんとかほざきやがってな。」

「あの馬鹿・・・。」

コウタは呆れた様子で頭を抱える。

ショウヤは黒炎で腕を再生させるシーナに向き直る。

「黒魔のシーナ。アンタとはまたいずれ会う事になるだろう。あの少女、レジーナは俺達ヨルムンガンドに絶対必要な贄だ。必ずアンタから奪い取る。必ずだ。」

フードの下から転移の魔石を取り出し三人はその場から消え去ったのだった。

それと同時にバハムートも相手していたマンドレイクを仕留め終えた。

月明かりが灯る夜の荒野に残された一同。

すると纏った闇が消えシーナはその場に倒れ込んでしまった。

「シーナ!」

二頭が駆け寄ると彼女は気を失っていた。

「無茶しやがって・・・!その力どれだけ危険か分かってるはずだろ。」

「御託はいい。一先ず二人の休める箇所まで連れていくぞ。そこで野宿しよう。」

バハムートはシーナを咥え、ニーズヘッグがレジーナを抱えその場を後にした。

すると運ばれるシーナの心臓部にドクンと重苦しい鼓動が鳴ったのだった。


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