『第 章 暗躍の少年少女』
すっかり暗くなった港町を迷子の少女と彷徨うレジーナ。
少女の親を探して回るが未だ見つかっていなかった。
疲れた二人は噴水広場で一休みしていた。
「ごめんなさい・・・。貴女の母さんなかなか見つからなくて。」
「ううん。お姉ちゃん、私のために頑張ってくれてありがとう。」
お姉ちゃんと呼ばれたのが嬉しかったのかレジーナは少女を抱きしめた。
「あのねお姉ちゃん。私思い出したことがあるの。」
「何ですか?」
少女が言うにはよく母親とよく使う近道があるという。
もしかしたらそこまで行けば少女の自宅の道順まで分かるかもしれないと思ったレジーナは少女に案内され路地裏までやってきた。
「こんな人目の付かない所が近道なんですね。それでどうですか?お家までの道思い出しました?」
「うん!大丈夫そう!ありがとうお姉ちゃん!」
少女はとびっきりの笑顔でお礼を言った。
「そうですか。それは良かっ・・・。」
すると次の瞬間、レジーナの意識が突如として朦朧とし始めた。
(あれ?なんだか、意識が・・・?)
ばたりと倒れ気を失ってしまった。
少女が慌てるかと思いきや至極冷静な様子だ。
すると頭上から声がする。
「お疲れさん。上手くターゲットを誘い込めたみたいだね。」
建物の上から降りてきたフードの人物。
ベルトにはスケッチブックが備え付けられていた。
「正直気が引けたわ。私達の目的のために、この人を生贄にしなくちゃいけないなんて・・・。」
「まぁしょうがないよ。僕たちはただ元の世界に帰りたいだけなんだ。現地人一人の命と引き換えと思えば安いものだよ。」
「・・・私は、どうしてもそうは思えない。」
「なに?一緒にいて情でも湧いちゃったの?」
「・・・・・。」
「まぁいけど。そろそろ元の姿に戻ったら?」
フードの人物がそう言うと少女は一言を発する。
すると身体が光り、学生服を着た茶髪の気弱そうな少女へと姿を変えた。
いや、戻ったのだ。
「君は優しすぎる。心を鬼にしないと僕らはいつまで経っても日本に帰れないよ。ユウナ。」
「・・・うん。コウタ。」
翌日の午前中、昨晩ならず者に構ってたシーナは完全にレジーナは見失い街を彷徨っていた。
「お前さぁ・・・。」
「悪かったってニーズヘッグ。今必死に探してるわ。」
念話越しで呆れられるシーナ。
一晩中街を探したが妙な事にレジーナの行方が完全に途絶えてしまっていたのだ。
「時間的に船に間に合わないわね。一旦キャンセルしてこないと。」
乗船予定だった船の停まる港へ赴き、キャンセルの手続きを終えるシーナは再び街へ駆け出す。
その途中大荷物を担いだフードを被った二人組とすれ違う。
「乗船か?」
「えぇ。出航目前で申し訳ないのですが、手続きをお願いします。」
船が出向してしばらく、シーナは未だ街中を探し回っていた。
バハムート達も認識疎外で姿を隠し上空からレジーナを捜索している。
「こっちにはいなかったぞ。」
「俺の方もだぜ。」
「分かった。私はもう少し奥を探してみる。」
徐々に焦るシーナは息を切らしながら高台への道を走る。
すると、
「ん?あの子は?」
昨日浜辺で迷子になっていた少女が母親と共に居たのを発見した。
シーナは急いで駆け寄る。
「君!お母さんの下に戻れたんだね。良かった。」
しかし少女はキョトンとした顔で首を傾げた。
「あのどちら様で?」
母親が尋ねる。
「えっと、昨日浜辺でこの子が迷子になってまして。私の連れが貴女の元まで送ったと思うのですが、この子を連れてきた女の子を知りませんか?」
しかし母親の反応も少しおかしかった。
「えっと、ごめんなさい。話が見えないのですが?」
「え?」
すると少女が元気よく答える。
「あのね。私ずっとママとパパと一緒にお家にいたよ!昨日私の誕生日だったからパパも早く帰ってきてくれたんだ。」
無垢な笑顔で答える少女にシーナは頭が混乱する。
(え、どういう事?だってこの子、浜辺にいたのは確実・・・?)
シーナは親子を見送り腕を組んでその場に立ち尽くす。
「何かがおかしい。何かを見落としてる気がする。もしかして、レジーナの身に何かあった?」
するとバハムートから念話が届いた。
「バハムート!何か分かった?」
「うむ。ニーズヘッグがレジーナの匂いを辿っていたのだが・・・。」
「途中でバッサリ二人の匂いが切れてるんだ。しかも妙な匂いが一つ増えてる。その後二つの匂いは一緒に港の方まで向かってやがるんだ。」
シーナはこれまでの情報をまとめる。
(レジーナの匂いが消えて一つ知らない奴が増え、少女と共に移動した?・・・っ!)
シーナはようやく事の真意に気が付いた。
「やられた・・・‼」
彼女の視線は沖に出た船を見ていた。
一日を費やし夜、船は向かいの大陸へ到着する。
大勢の乗船客が降り、荷物を抱えたフードの人物二人も降りてきた。
「コウタ。ここから拠点までかなりの距離があるわ。転移の魔石で向かう?」
「いや、転移の魔石は貴重だ。なるべく消費したくない。どっかの力馬鹿とは違って後先考えず使う僕じゃないよ。」
二人は人の通りがない夜の荒野を歩く。
「それにしても君の能力。ホントに便利だね。魔獣の襲撃が一切来ないなんて。」
「夜だから寝ているのもあるだろうけど、いざとなったらまた言うわ。」
意味が不明な会話をする中、担いでいた袋が突然暴れ出した。
「おっと、僕の効果が切れちゃったか。」
袋を降ろすと中から布で口を縛られたレジーナが顔を出した。
「また眠ってもらわないと。ユウナ、ちょっと待ってて。」
コウタはベルトから銀細工の羽ペンとスケッチブックを取り出す。
そして何かを書き込もうとした。
その時、
「見つけたーーー‼」
上空から凄まじい勢いで二つの巨大な影が落ちてくる。
レジーナを担いでその場から下がると土煙の中からバハムートとニーズヘッグが現れる。
そしてバハムートの背からシーナも降りてきた。
「まさかもう追いついてくるとは・・・。正直ドラゴンを侮っていたかも・・・。」
爆風でフードが剥がれたコウタはボブカットの眼鏡をかけた少年だった。
「私の依頼人、返してもらうわ!」