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『第 章 組織ヨルムンガンド』

突如シーナたちの前に現れた大柄の男。

持っていた家の破片を投げ捨て頭のリーゼントを整え直す。

「おいシーナ。アイツのジャケットのワッペンを見ろ。」

「蛇に翼の生えた生物・・・、ヨルムンガンド!」

「何だ?知ってたのか?俺達も随分有名になったもんだな。」

陽気に話す男にそっと背後にレジーナを隠すシーナ。

「バハムート、お願い。」

「分かった。」

レジーナをバハムートに預け前に出る。

それと同時に大柄の男も瓦礫の上から飛び降りてきた。

「女。その王女を渡してくれたら命だけは見逃してやるぜ?それともあれか。俺と殺り合ってくれるのか?」

拳を鳴らし脅してくるがシーナの答えは当然、

「後者だ!」

ニーズヘッグと共に戦闘態勢に入る。

「面白れぇ!」

瞬時に目の前に迫る男の拳をすれすれで躱し即カウンターの蹴りを入れる。

しかしその一撃を受け止められ、すかさずニーズヘッグがクローをお見舞いし男を弾き飛ばした。

「入った!これでしばらく動けないはずだ。」

しかし男は何事もなかったかのように立ち上がった。

「嘘だろ⁉ニーズヘッグの一撃を受けて平気なんて⁉」

「いや~。今のは聞いたぜ?お返しだ!」

そう言い男は家の瓦礫を持ち上げ投げ飛ばしてきた。

「ニーズヘッグ!」

シーナの指示でブレスを放ち家を粉砕。

するとその目くらましを利用し男がすぐ目の前まで迫りシーナを殴り飛ばした。

「シーナ!」

「くっ!」

「王女の護衛だって言うから少しは期待してたんだが、なんか弱くねぇか?ドラゴンもそこまで歯ごたえがねぇし、お前本当にあの『黒魔のシーナ』なのか?」

拳を鳴らしながら見下す男に怒りが現れるバハムートとニーズヘッグ。

すると、

「弱くて結構。むしろそれが私の望みだ。でも、レジーナを守るため、今はこの忌々しい力を使うわ。」

拳をぶつけ合うと火花が散り彼女の両手に黒炎が纏う。

そして突き出される両拳が男の腹部に直撃。

凄まじい勢いで後方へ突き飛ばされた。

「俺の比じゃねぇじゃん・・・。」

「ドラゴンが人間に負けてどうする。」

しかしそのシーナの一撃を受けても男は立ち上がった。

(まだ立つのか?奴の耐久力は一体?)

「マジかよ。この俺が痛みを感じてやがる。はは、ハハハハハ‼いいねぇ!俺を滾らせたのはお前が初めてだ!王女を連れ去るよりもお前たちと戦った方が何倍も楽しそうだ!」

そう叫ぶ男は後ろへ飛び瓦礫の上に降り立つ。

「今回は引いてやる。万全の準備をしてからまた来るからよ!お前も今度は本気でこい!じゃぁな!」

そうして大柄の男は村を破壊しまくった後暗闇へ姿を消していった。

「・・・。」

「妙な奴に眼を付けられたな。」

「ヨルムンガンド、なかなか侮れん組織かもしれんぞ。シーナ。」

「あぁ・・・。」

しかしシーナはあることが疑問に残っていた。

(奴の戦闘スタイルは肉弾戦だった。じゃぁ昼間の矢による奇襲は一体・・・。)

第三者がいる可能性も出てきたが今はレジーナを守れたことを素直に喜ぶ。

・・・訳にはいけなかった。


 村の住民が避難した広場に向かうと村人は突然シーナに石を投げつけてきた。

なんでも先ほどの大柄の男の狙いがレジーナだと叫んでいたため村がこうなったのはシーナたちのせいだと皆口々に言い放ってきたのだ。

当然バハムート達ドラゴンは怒りを見せるが当のシーナが止める。

村人に罵倒を浴びせられながらもシーナたちは深夜にも関わらず村を発ったのだった。

「ふざけんじゃねぇぞ・・・!アイツら・・・!」

「今回は完全に逆恨みだ。こちらに落ち度は微塵もない。」

怒りを露わにする二頭。

「よしなさい。二人とも。」

「お前はそれでいいのか⁉これまでもそうやって全部自分で背負い込みやがって!」

「ニーズヘッグの言う通りだ。そのままではいずれ心が壊れるぞ?」

「やめろと言っている!見て分からないの?」

静かに怒りながらシーナは涙目で歩いてるレジーナを見てドラゴン二頭は言葉を瞑んだ。

「ごめんなさい・・・、やっぱり、私のせいですよね。ごめんなさい、ごめんなさい・・・。」

何度も謝るレジーナに二頭は頭を冷やす。

「すまぬ・・・、配慮が足りなかった・・・。」

「悪い・・・レジーナは何も悪くねぇのに・・・。俺達が勝手に怒ってただけだ。」

「私はともかくこの子にももう少し心がけなさい。」

珍しく二頭がしゅんと落ち込んだ。

シーナは歩みを止めレジーナを抱きしめる。

「私の方こそごめんね。貴女にこれ以上負担を駆けさせないよう気を付けるわ。だから泣かないで。」

「・・・はい。」

シーナの腕の中で涙を拭きとる。

「で、今日寝床どうする?いつも通りの野宿か?」

「今夜は詫びも兼ねて我の翼の中で休むといい。」

「え、やった!中々触らせてくれないバハムートの翼の中で寝られる!」

「元気じゃねぇか・・・。」


 その頃、先ほどまでいた村では大勢の住民が辺りに漂う紫色の霧の中で全員息絶えて倒れていた。

その中で一人、村長だけは辛うじて意識があった。

「な、何故こんなことをする・・・⁉」

目線の先には空中でホバリングする義手を付けたワイバーンがいた。

「何故?君達は俺の標的を追い出し、これまでの準備を台無しにされたんだ。」

ワイバーンは建物の屋根の上に降りる。

「俺は完璧主義なんだ。どんな依頼でも下調べも徹底的に準備し確実に完遂する。それが俺の流儀だ。君達は俺の計画を台無しにした。準備だってタダじゃなんだ。その代償は、君達の命で償ってもらうよ?」

ゴーグル越しからでも分かる。

彼の瞳は冷徹に冷たく、そして恐ろしかった。

村長が何やらわめいているが毒の霧で舌が回らず何を言ってるのか分からない。

ワイバーンは義手に付けた連射型のクロスボウで村長を射抜き、バタリと倒れたのだった。

「はぁ・・・。また一から練り直しか。それよりも、『ヨルムンガンド』。また面倒な連中が動き出したな。」

ワイバーンは翼を羽ばたかせ月の輝く夜空へと消えていったのだった。


 とあるアジトの一室。

テーブルの周りに座る三人のフードの人物。

そこへ村を襲撃した大柄の男がリーゼントを整えながら入ってきた。

「よう。戻ったぜ。」

「大河。何故王女を連れ去らなかった?」

フードの人物の一人が話す。

声からして青年だ。

「それがよ。王女を護衛していた冒険者の女。世界で噂されてるドラゴンテイマーだったんだよ。さっきは本気を出してなかったがアレはかなり強いぜ。」

「また出たわ。大河の悪い癖。」

今度は女性声のフードの人物が話した。

「大河。私達の目的を忘れたの?」

「忘れてねぇよ。ただ()()()()()()に要る間はなるべく好きにしたいからな。」

「やはりお前に単独行動させるべきじゃなかったな。今度動く時は必ず誰か一人ついていけ。」

渋々頷く残りのフードの人物たち。

するとテーブルの中心に置かれた水晶玉が光出す。

「・・・勿論です。貴方様のために、そして僕達のために、必ず王女を生贄として捧げます。」

フードの青年がそう言い水晶玉の光は消えた。

「必ず王女を捕らえるぞ。僕達の、()()()()へ帰るために。」


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