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『第 章 強襲』

冒険者に扮した王女レジーナの護衛依頼を受けたシーナ達は早速街を発っていた。

「本当にドラゴンを従えておられるんですね。」

「形はそうなってるけど実際は上下関係のない仲間さ。コイツ等遠慮なく年齢いじりしてくるからね。」

「三十路なのは事実だろ。」

「二十八だっつの!」

そんな賑やかに森を進んで行くとのどかな村にたどり着いた。

「うん。地図通り。今日はこの村で一晩止めさせてもらおう!」

ルンルン気分な足取りで向かう女性陣。

「やけに上機嫌だな?」

「当たり前だろ。ここ数日野宿だったんだからよ。」

満足に身体を清められない状況は女性陣にとっても大きな問題であった。

村の入口に就くと、

「うわ⁉魔獣⁉」

案の定、村の門番に身構えられてしまった。

シーナがなんとか二頭が安全の事を説明する。

「ドラゴンを従魔?信じられないんですが・・・?」

「でしょうね。巷じゃ世界初のドラゴンテイマーなんて言われてるから。」

シーナが遠い目をする。

「取り合えず安全であるのなら村に入っても大丈夫だと思います。ですが最初は村長に報告しなければいけませんので・・・。」

「じゃぁアンタらはここで待ってて。」

「何で⁉」

「このまま村に入っちゃ大騒ぎでしょ?後で迎えに来るから門番さんと待ってて。」

「致し方ない。ニーズヘッグ、ここは大人しく待つぞ。」

「ちぇっ!」

ふて腐れるニーズヘッグ。

「ここの突き当たりを右に進めば村長の家です。」

「ありがと。んじゃ早速・・・。」

「あ、待って!」

「きゃっ⁉」

門番が止める間もなくシーナが一歩進むと落とし穴に落ちてしまった。

「おい。あのシーナが「きゃっ⁉」て言ったぞ・・・?」

「ぶふっ!なかなか愛らしい声が出るではないか。くくくっ!」

笑いをこらえるバハムートであった。

「大丈夫ですかー⁉」

「だ、大丈夫・・・。」


 村長と挨拶を済ませ無事村に入れたバハムート達。

彼らが安全と分かった瞬間村の子供たちが二頭に群がってきた。

二頭は対応に天てこまいな様子なのでシーナとレジーナは二人で村周辺の森の中を散歩した。

「見てくださいシーナさん!青い小鳥です!本でしか見たことなかったけど実際はあんなに綺麗なんですね!」

レジーナは王女としての立場のせいかあまり自由に外に出れた事はないらしい。

初めて自分の眼で見る物にテンションが上がっていた。

「こらこら。あまりはしゃぐと危ないよ?」

「は、はしゃいでないです!そんな子供ではないんですから!」

どうみてもはしゃいでるが頬を膨らませて怒るレジーナにニッコリ顔のシーナ。

「・・・なんだか、シーナさんお母さんみたいですね。」

「誰がお母さんじゃい!」

そうツッコむも楽しそうに笑う二人だった。

その時、どこからかレジーナ目掛けて矢が放たれた。

一早く気付いたシーナはレジーナを抱きかかえ矢を回避させる。

(矢⁉一体どこから⁉)

瞬時に辺りを見渡すと木々の間を何かが移動する影が見えた。

(まさか、レジーナを狙う『ヨルムンガンド』の刺客か?殺傷力のある矢からして暗殺者の類だと思うけど、こんな真昼間から仕掛けて来るなんて・・・!)

木々の上を素早く移動する影は次々と矢を放ってくる。

シーナは矢を受け止めたり弾いたりとレジーナを守るが降り注ぐ頻度が高い。

「ちっ!」

シーナは拳を握ると黒い炎が纏う。

そして地面を殴りつけ石片を巻き上げると黒炎の爆発を利用して全方位に石片を飛ばす。

石片が辺りの木々を剃っていき、しばらくして静けさが戻った。

(・・・気配が消えた?適当に巻き飛ばしたとはいえかすった感覚もしなかった。あれは、相当な手練れだな。)

レジーナはシーナの足元で頭を抱え伏せていた。

「ごめんねレジーナ。びっくりさせちゃって。」

「い、いえ・・・。しかし先ほどの襲撃は?」

「あぁ、ちょっとこれは厄介な護衛かもね。」

そう言い地面に刺さる毒の付いた矢を見るシーナだった。


 その夜。

村近くの草原にて野営をする一同。

「聞いたぜ?レジーナを狙う刺客に襲われたってな。」

胡坐をかいて狩った魔獣の肉を貪るニーズヘッグ。

「手腕からして暗殺者の類だと思うんだけど、気に掛かるのは襲撃した時間帯だ。」

暗殺者であるなら暗い夜に仕掛けるはず。

しかし先の襲撃は太陽が輝く真昼間。

シーナはその事が気に掛かって仕方なかった。

「それで村から出てここで一晩過ごそうって言ったのか。」

「あぁ。相手は得たいが知れない。村人を巻き込むのは避けたいからね。」

するとスープを食べていたレジーナの箸が止まる。

「ごめんなさい。私のせいで皆さんに迷惑を・・・。」

「気にしておらん。どのみち我らのサイズでは村にいることは難しいのだ。それに・・・。」

世間から迫害されてるシーナを見てバハムートは口を止めた。

「まぁ俺達野営は日常茶飯事だ。お前が気に病むだけ時間の無駄だ。」

「ニーズヘッグ。お主もう少し言葉を選べんのか?」

「あ?何が?」

キョトンとするニーズヘッグにレジーナは思わずクスっと笑った。

「・・・何だか、ドラゴンのお二人はお城で聞いた魔獣とは違うんですね。」

「ん?どういう風に?」

シーナが前のめりに質問する。

「いえ、魔獣の大半は人々に害をなすものが多いと教育を受けてまして。でもバハムートさんとニーズヘッグさんを見てると人と大して変わらないんだなって・・・。」

「まぁアイツ等は魔獣の中でも知力がダントツに高いし言葉も話せる。意思疎通が出来るからそう思うのかもね。」

そうシーナは彼等を見て微笑む。

「それでもシーナさんの方が凄いです!ドラゴンを従魔にしている事実なんて前代未聞です!」

「まぁ確かに周りの連中から世界初のドラゴンテイマーなんて言われてるけど、私はあの二人を従魔なんて思ったことは一度もないわ。」

「え?」

「私にとってあの二人は、唯一心から笑い合える大切な家族なのよ。」

「家族・・・。」

するとレジーナは自分の家族を思い出す。

しかし彼女の表情は何故か不穏な感じだった。

(家族、か・・・。)

その時、村の方から巨大な爆発音と爆炎が夜闇を照らした。

「っ⁉」

「何だ⁉」

明らかに爆発の規模がおかしい。

異常を感じたシーナたちは急いで村に向かうと突如家がこちらに吹っ飛んできた。

「あぶねぇ!」

すかさずバハムートが魔法壁で二人を庇い、ニーズヘッグが飛んできた家を粉砕した。

「一体何が⁉」

すると瓦礫の上から家の残骸を片手に持ったリーゼント頭の大柄な青年が現れる。

「よう。お前がこの国の王女だな?」


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