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『第 章 夜闇の暗殺者』

シーナにお姫様抱っこされてる少女がキョトンとした顔で見てるとシーナは投擲されたナイフをかわす。

「くそ・・・!王女の関係者か?」

「厳密に言うとつい最近関係者になった、かな?」

現場を見られたからかフードの連中は次々と魔法陣をこちらに向けてきた。

「まぁそりゃ排除しようとしてくるよね。でも・・・、舐めるなよ?」

複数の魔法が放たれるもシーナは少女を抱えたまま身軽にかわしていき、屋根の上を疾走する。

「わわわっ⁉」

「喋らないで。舌噛むよ?」

追ってくるローブの魔法攻撃を高い身体能力で躱していき、少しひらけた広場に降りる。

後を追うようにフードの人物はシーナを囲むように屋根の上に配置し一斉に炎魔法を放った。

少女が恐怖で目を瞑ると、

「ここなら思いっきり使える。」

シーナはニヤリと笑みを浮かべた瞬間、背中から二本の黒炎の触手が現れ炎魔法を全てかき消す。

「な、何だこれは⁉」

「こんな力見たことないぞ⁉」

動揺する彼らを無数の黒炎の触手を操り周囲を全て薙ぎ払い仕留める。

「ば、化け物・・・!」

「失礼な。れっきとした人間だ。」

連中の意識を刈り取り事なきを終えた。

お姫様抱っこされた少女は終始目が点になっていた。

「さてと。大丈夫だったか?お嬢さん。」

「は、はい・・・。」


 馬車襲撃後、助け出された少女とシーナはギルド長の部屋で向かい合わせに座っていた。

そこへギルド長が入室してくる。

「こっちはひと段落ついたぜ。御者さんも軽傷で済んだらしい。」

「良かった・・・。」

少女はほっと胸を撫で下ろした。

「あの、助けていただき、ありがとうございます。」

「大丈夫。私が引き受けた依頼だからね。その先行仕事さ。」

改めて少女は姿勢を正す。

「改めまして、私はレイラス王国第二王女、レジーナ・レイラスと申します。訳あって冒険者の身なりをしてますがご容赦ください。」

一通り話し終えた後、シーナは彼女を連れ去ろうとした連中について質問した。

「君を襲ったあのフードの連中、奴らは何者だ?」

「私も詳しくはわからないのですが、以前から付きまとわれてるような感じがするんです。理由に心当たりはないのですが・・・。」

するとギルド長が話に割って入る。

「奴らを縛り上げて監禁しているが、奴らが共通に身に着けていた物だ。」

そう言いデスクに一つのワッペンを放り投げる。

そのワッペンには蛇に翼が生えたような生物がシンボルとされていた。

「なにこれ?」

「っ!これは⁉」

「何か知ってるの?お姫様?」

「現在私の兄が調べてる邪教団の紋章です!名は確か・・・。」

「『ヨルムンガンド』。」

突然ギルド長が名を言い当てた。

「知ってたのか?」

「うちでも噂になってて調べてたんだよ。まさか本当にお姫さんを狙ってる連中だとはな。」

やはり国の王族。

何かと付け狙われることもあるのだろう。

「お姫さんを狙ってる理由はわからねぇが何しろ得たいが知れねぇ。何を目的としているのかも・・・。連中に関しては謎が多すぎる。おそらく護衛の間こいつ等がまた襲ってくる可能性もあるが、降りるなら今の内だぜ?」

ギルド長の言葉にシーナは、

「ここまで聞いて投げ出す程薄情じゃないさ。必ずやり遂げるよ。」

「・・・まぁお前のあの実力に加えドラゴン様が二頭もついているもんな。お前さんらに手を出す奴等なんて相当な実力者か馬鹿だけだ。」

そう笑い話をしながらシーナたちは退室しようとすると、

「おい。」

「ん?」

「正直ぶっちゃけるとこの依頼、どうもきな臭い。気を付けろよ?」

「?よくわからないけど、分かった。」

部屋に残ったギルド長はふうっと体の力を抜く。

「妙な胸騒ぎがするな・・・。」


 その後、レジーナを連れて裏庭で待ってるバハムートとニーズヘッグと合流する。

「お?終わったか?」

「ヒェッ⁉」

巨体なドラゴンが喋ったこととその存在感に当てられたレジーナは顔を青くして腰を抜かしてしまった。

「バハムート、アンタ認識疎外・・・。」

「ちゃんとかけておるぞ。その娘が耐性が薄いだけだ。」

落ち着きを取り戻しレジーナは多少震えながらもバハムート達に挨拶をする。

「は、初めまして・・・!王都まで護衛していただくレジーナと申します・・・!」

「ほう。なかなか根性あるじゃねぇか。大抵の奴らは俺達を見るとめちゃくちゃ怯えるのに。」

顔を近づけるニーズヘッグにレジーナは再び怯える。

「お姫様を怖がらせるな。ニーズヘッグ。」

「無茶言うな。」

「すみませんね。これでもウチの従魔なんで安全ですよ。レジーナ様。」

するとレジーナは一瞬黙り、ずいっと顔を寄せた。

「シーナ様!これから旅を共にするのですよ?敬語は不要でお願いします!」

「え、いや、流石に平民の立場でありながら王族にため口は・・・。」

「私がいいと言っているのです!今後私の事はレジーナとお呼びください!」

頬を膨らませ腕を組む彼女にシーナは観念したようにため息をつく。

「でしたらそちらもため口で結構です。んんっ!じゃぁ王都までよろしくね。レジーナ。」

「っ!はい!シーナさん!」

「敬語やん。」

二人は互いに握手を交わし、ドラゴン二頭はただただ見守るだけだった。


 月が夜を照らす山岳地帯。

そこでは一つの村が盗賊に蹂躙されていた。

「おらぁ!男は全員殺せ!金目の物と女は根こそぎ頂くぞ!」

炎に包まれる村で虐殺や強姦、窃盗が繰り広げられる。

「頭!全部奪いやしたぜ!」

「よし!ここにもう用はない。ずらかるぞ!」

盗賊たちが奪った物と大勢の女を連れて岩山を下山する。

「・・・ん?」

「どうした?」

「いえ、来た時こんな所に岩壁なんてあったかと思いまして?」

「暗くて来た道が分かりづらくなってんだろ。しっかり覚えとけ!」

手下にげんこつを下し下山を進める。

だがおかしなことに一向に岩山を降りてる感じがしなかった。

(どうなってやがる?普通だったらとっくに山を降り終わってるはずだぞ?)

盗賊の頭が違和感を覚えてるといつの間にかひらけた場所にやってきていた。

「ちっ、仕方ねぇ。明るくなるまでここで野宿だ。おい。さっさと火を起こせ。」

「へい!」

手下の一人が火打石を手に取る。

その時、どこからか放たれた一本の矢が頭部に突き刺さり手下はその場に倒れた。

「っ⁉」

その攻撃を筆頭に矢の雨が降り注ぎ次々と手下がやられていく。

「何だ⁉どっからの襲撃だ⁉」

「頭!あそこ!」

上を見上げると月をバックに大きな翼を有した一人の影が岩の上に立っていた。

しかしその影は人間ではなく、

「ワ、ワイバーン・・・だと⁉」

それは義手を付けたワイバーンだった。

彼の腕に装備された特殊なクロスボウから連続で矢が放たれ盗賊の手下を射抜いていく。

しかも矢には毒が仕込まれており刺さっただけでも絶命するよう作られていた。

「連射式のクロスボウに毒の矢・・・、頭!間違いありません!あのワイバーン、巷で噂になってる殺し屋、『常闇の竜』です!」

そう叫ぶ手下も毒の矢の餌食となる。

「常闇の竜、だと・・・⁉」

ワイバーンは飛翔し頭の前に降り立つ。

「俺の事、知ってるんだ。」

「俺ら社会の逸れ者からしちゃ有名な話だ・・・。まさか俺たちまでお前の標的にされるとはな・・・!」

「依頼があってね。この辺りを騒がせてる盗賊の討伐。だから君達には今ここで消えてもらうよ。」

「へっ!ドラゴンに遠く及ばないトカゲ風情が、舐めるなよ‼」

二刀流の斧を持って切りかかる盗賊の頭。

ワイバーンは軽い身のこなしでその連撃をかわし上空へ飛翔する。

盗賊頭は片方の斧をブーメランのように振り投げ応戦する。

「どうした!自分だけ飛べる特権を使って卑怯な戦い方しか出来ないのか⁉」

「別に卑怯とか思ってないさ。君達に比べたらね。」

「何?」

その時、急に身体の力が抜け頭は膝をついてしまった。

(何だ?身体が、痺れる⁉)

よく見ると辺りに薄っすら霧のようなものが発ちこめてる。

それは手下に刺さった毒の矢から噴き出していた。

「その毒は人間の血液に触れることで反応し痺れ毒の霧を出すようになってるんだ。痺れるだけで命の別状はないから安心していいよ。」

「ぐっ!きたねぇ手を使いやがって・・・!」

「そうだね。でも・・・。」

ワイバーンは腰からサーベルを取り急降下し、切りつける。

「君達の方が、よっぽど穢いよ。」

剣を鞘に納めると盗賊の頭は縦真っ二つに切り裂かれたのだった。

手下の盗賊も毒の矢で全て絶命している。

「討伐完了。」

捕まった村人がただ眺めていた中、ワイバーンは翼を羽ばたかせ月の輝く夜空へと消えていった。


 ワイバーンはしばらく飛行していると通信の魔道具が鳴る。

近くの巨木の上に降り魔道具を起動させる。

「・・・次の依頼?随分早いね。先ほど別の仕事を終わらせたところなんだが。」

『今回のは貴様にしか頼めん重要な依頼だ。』

「・・・言ってみて。」

謎の人物から依頼の内容を聞き、ワイバーンは月を見上げた。

「・・・了解。その依頼、承る。」


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