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『第終章 新時代の幕開け』

騒ぎを聞きつけたバハムートは崩壊したレイラス王国を見て言葉を失っていた。

「何が起きたのだ?これは一体・・・?」

都内を駆け巡るバハムートは倒れる多くの亡骸を横切りながらも中央の王宮へと向かう。

その途中、覚えのある気配を感じ取り近くの瓦礫の山を退かしていく。

そして、

「っ‼レジーナ⁉」

瓦礫に埋もれたレジーナを見つけたのだった。

しかし彼女は崩壊に巻き込まれた事で肉体はボロボロ、腹部には鉄骨も突き刺さっており出血量も多い。

辛うじて息はあるものの、もう助からないだろう。

「・・・・・。」

目の前に自分たちを裏切った少女がいるがバハムートはぐっと堪え話を聞き出す。

「何があったのだ?」

「・・・バ、ハ、ムート、さん・・・?」

「あぁ我だ。お主がシーナにしたことは許せないが今は置いとく。この地に何が起きたのだ?」

レジーナは虚ろな目でバハムートを見る。

「ニーズ、ヘッグさんが、生きて・・・。」

「何⁉ニーズヘッグが⁉」

「お父様も、お兄様も、住民たちも、皆死んでしまいました・・・。」

「・・・そう、か。」

「ごめんなさい・・・。」

「っ!」

「私はただ、家族に認めてほしかった、だけなんです・・・。でも、今更になって、気付いた。本当は私は、シーナさんや皆さんと、冒険したかったんだって・・・、でも私は、決して許されないことを、してしまい、ました・・・。」

血を吐き出し苦しむレジーナ。

「レジーナ!」

「ごめんなさい、バハムートさん・・・、シーナさん・・・、ごめんな、さ、い・・・。」

罪悪感と後悔を抱きながら、レジーナは息を引き取った。

「・・・・・。」

バハムートはそっとレジーナのまぶたを閉じ、再び王宮へ走り出す。

そして、混沌の破壊竜と化した親友と再会した。

「ニーズヘッグ・・・。生きておったのか。」

「バハ、ムート・・・。」

王宮の頂上から降りてくるニーズヘッグはバハムートの前に立つ。

「この惨状は、お主がやったのか?」

「だったら何だ?」

「何故こんなことをした?」

「何故?決まってんだろ・・・。人間を絶滅させるんだよ・・・!」

「っ⁉」

驚きのあまり声を出せなかった。

「奴らは俺達から大切な人を奪った!それだけじゃねぇ。これまでもアイツを傷つけてきた奴等も、全部殺す!人間共は俺達の逆鱗に触れたんだ。だから、全てをぶっ壊すんだよ!」

「馬鹿な事をほざくな!人間を、人類を絶滅させるだと⁉何を血迷っておるニーズヘッグ!」

「血迷ってんのはお前もなんじゃねぇのか⁉主を、シーナを殺した人間共が憎くないのか⁉お前だって本当は滅ぼしたいほど憎んでるだろう?人類を。」

「・・・憎んでいない、と言えば嘘になる。だが、それが人類を絶滅させる理由にはならん!」

その時、ニーズヘッグが瓦礫を投げつけ魔法壁で防ぐ。

「なぁバハムート・・・。鋭いお前の事だ。レジーナの事、前から怪しいと思ってたんじゃないのか?」

「っ!」

そう。

バハムートは道中レジーナの心中や行動に少々違和感を感じていた。

初めこそは気の迷いだと思っていたがレイラス王国に入った後、彼女の訝しい行動に懸念が高まっていた。

それでも考え過ぎだと自身に言い聞かせそのままにしてきたのだ。

「確かに、今思い返せばもっと前からお主等に相談していれば結果は違っていたのかもしれない。それは完全に我の落ち度だ。」

「何故言わなかった?お前が少しでも違和感を相談してくれれば、シーナを失わずに済んだかもしれないだろ?」

「・・・すまない。」

「謝ったってなぁ、もうアイツは帰って来ねぇんだよ‼」

怒りに任せニーズヘッグはブレスを放つ。

咄嗟に回避するバハムートだがすぐさま掴みかかるニーズヘッグを正面から受け止める。

「やめろ!人類を滅ぼすなど、シーナが許すと思うか⁉」

「シーナはもういない‼全部人間、お前のせいでもなぁ‼」

持ち前の怪力でバハムートを背負い投げ拳を振り下ろす。

寸前で回避しバハムートもブレスを放ち距離を取る。

それでもニーズヘッグは襲い掛かりまるで自我を失ったかのように暴れまわる。

バハムートもなんとか応戦するが親友との戦いは躊躇してしまい次第に劣勢となってしまう。

「よせニーズヘッグ!我はお主と戦うつもりはない‼」

「テメェには無くても俺にはあるんだよ‼」

高エネルギーのブレスを上空へ放つと空で爆散し流星群となって降り注ぐ。

バハムートもブレスはかき消していくがその隙をつかれニーズヘッグの一撃を諸に食らってしまった。

「がはっ⁉」

勢いよく殴り飛ばされ追撃でブレスも直撃してしまう。

暫く土煙が蔓延してると上空へ飛翔するバハムート。

ニーズヘッグも後を追って飛翔し空中戦となる。

互いの魔法、肉体の激しいぶつかり合いとなり鋭い一撃が二頭の間を広げた。

「ニーズヘッグ、考え直せ!我はお主と殺し合いをしたくはない!」

「まだそんな甘い事言ってやがるのか?何度言おうと俺の考えは変わらない!お前が憎いこともなぁ‼」

「っ‼」

親友であった彼にその言葉を突き付けられ、バハムートは心が苦しくなる。

もはや自分の知ってる親友は何処にもいない。

いや、自分が親友を変えてしまったんだ。

あの時の自分の選択が誤り、全てを失ってしまった。

躊躇している間にニーズヘッグに首元を掴まれ地上へと投げ飛ばされた。

激しくバウンドし横たわる。

ニーズヘッグは城の頂上に降り立ち怒りの咆哮を上げ続けた。

深手を負い身動きだ出来ないバハムート。

その時、シーナの最期の言葉を思い出した。

走馬灯のように脳内に流れる亡き主の願いを。

『シーナ・・・。』

するとバハムートの暗い瞳から一点の赤い光が現れる。

同時に身体からどす黒いオーラが溢れ動けないはずの身体がミシミシと動き出す。

(すまぬシーナ。どうやら、お主の願いは聞き届けられないようだ。もう奴との争いは、逃れられない。)

ニーズヘッグ同様、自我を失ったような咆哮を上げるバハムート。

ニーズヘッグも飛び掛かりバハムートに掴みかかってきた。

しかし先ほどの彼とは違い俊敏な動きでニーズヘッグに食らいついた。

「ウォォォォォ!!!!」

「ガァァァァァ!!!!」

大地を震わす二頭の咆哮が王国を包み込む。

(どこから間違えてしまったのだろうな。もしあの時、我が相談を持ち掛けていれば。レジーナの心にもっと寄り添ってやれば。シーナも、レジーナも、親友との絆も、全てを失わずに済んだのだろうか。どこかで道を誤らなければ、今でも全員で笑い合えた未来があったかのもしれんない・・・。)

そして二頭の竜の壮大な戦いはたった二日間に渡り、レイラス王国は地図からその姿を消したのだった。



 戦いが終わり雨が滴る。

王国は跡形もなく消滅し、その場にはボロボロに傷ついた二頭の竜だけが残っていた。

戦火の跡地で立ち尽くすバハムート。

彼の目の前には瀕死状態の、かつての親友の姿があった。

ニーズヘッグの逆鱗を鎮めることは出来たが、失ったものがあまりにも多すぎた。

バハムートは何も言わずその場を離れていったのだった。

暫く雨の音が鳴り響いているとどこからともなく・・・、腕を押さえる()()()()()が現れた。

「たった二頭の争いで国一つ消し飛ぶのか。・・・このドラゴン、結構利用価値があるんじゃねぇか?」

ジエトは不気味な笑みを浮かべるのだった。



 それから数百年。

地図から消えたレイラス王国は時と共に忘れされていった。

しかしその地で起きた二頭のドラゴンの伝説は残り、やがてその戦いは『憤怒の逆鱗』と呼ばれる災害となる。

そして、ニーズヘッグの消息も絶った。

あれから生き延びたのか。

はたまた力尽きたのか。

それはもう誰にも分らなかった。

それから全てを失ったバハムートは一人で生き延びていた。

もしまた主を見つけ仕えるとなったその時まで力を付けていた。

多大なスキルを習得、人間の技術を学び、いつした全ての竜種の頂点『竜王』と呼ばれるようになった。

しかし、彼の心には今も大きな穴が開いている。

かつての主や親友。

守れなかった者もいる。

彼女らを思い出すたびに自分の存在が何のためにあるのか分からなくなっていた。

だがそんな時、懐かしみを覚える魔力を感じ取ったのだ。

「何だ?この魔力?かなり大きな反応だな。」

それは何者かによる召喚の魔力反応だった。

「今まで数回召喚に応じ相手に幻滅してきたが、これは何か違う?心から、純粋な思いが伝わってくる。」

気付くとバハムートはその召喚に応じていた。

するといつの間にかとある地下空間に立っていた。

周りには学生服を着た少年少女が驚いた表情をしており、教師と思われる人物たちも腰を抜かしている。

「ほう、強い魔力に引かれ召喚に応じてきてみれば、なかなか面白いことになっているではないか。」

そして、己を召喚したであろう()()が目の前にいた。

バハムートは少年を一目見た時、かつての主シーナの面影を見た。

(この少年、どこかあやつに似ているな。)

「フッ。」

バハムートはこの時、心の奥に潜めていた誓いを立てる。

もう二度と、あの時にように同じ過ちを繰り返さないと。

「お主が我を召喚した人間か?」

「は、はい。そうです・・・。」


本編 

世界最強のドラゴンテイマー めっちゃ強い仲間と世界を見ます!

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