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長らく更新が出来ずすみません。今回も楽しんで頂ければ嬉しいです!
なんだか突拍子もない方向へ話が進み、アイリーンは話の展開についていくのに必死だった。
それはまた、公爵も同様に複雑な心境を抱えていた。
これからどうなるのか、不安が押し寄せる。自分の力だけではどうにもならない話になりつつあることに恐怖を覚えた。
「腕輪は王族の血筋を持つものが所有することにより大いなる自然のを安定させる力を持つことができます。り愚かな人間はその効力を得られると思ったのでしょう。人間が手にしたとて雨の一滴の恩恵もありません。記憶がないのはご自身もしくはお母様であるアメリア様が消された可能性が高いです。
アイリーン様がお気づきでいらっしゃらないと思うので、あえて言わせて頂きますと、私は男です」
アイリーンはあまりの驚愕に表情も体も固まった。
えっ!!!!それは、びっくりです。
女の人そのままじゃない!
公爵はどうかと顔を見上げると、やはりなといった顔でノラを見ている。
え!!!
公爵様はお気づきでいらした?私だけが気づかなかった感じでしょうか。
「さらに付け加えさせていただきますと、私とアイリーン様の関係は婚約者同士でございます。アメリア様と一緒にこちらの世界へお出でになった際、アメリア様がお決めになられました。そして、私は承諾いたしました。よって、近々お迎えにあがります」
「え!!!それはどういうことなの?」
「残念だな。すでにアイリーンと私は婚約をしている。アイリーンも良い返事をくれ、近々婚約と婚姻を結ぶ予定だ。ノラといったか。アイリーンの承諾もなしに連れて行くつもりか?」
えっ!!!!
ちょっと待ってください!婚約もまだですが、結婚ももうすぐなのは聞いてません!
「人間と暮らすよりも種族が同じ者たちと暮らす方が良いと思いますが。ニンフの力を知られ、それを悪用する恩恵にあずかりたいと考える輩が多いのが人間ですから。それとも・・・アイリーン様のお母さまの意思を無視なさるおつもりでしょうか?」
満面の笑みを浮かべ挑発するように公爵を見た。公爵の表情は固まり、眉間に皺が寄っている。
恩恵にあずかりたいという人間、それは、スタール伯爵しかり、ノーフォーク公爵しかり、皇后陛下もしかり。
【あなたがニンフと決まったわけではありませんが、そうだった場合、力を貸していただきたいと思っています】
皇后陛下の言葉を聞いていなければ反論が出来たが、親族からの発言が重くのしかかり、言葉に詰まった。アイリーンも同様に頭の中に皇后陛下の言葉を反芻していた。
「だめです!!私にはまだ決められません。あなたがニンフということも、お母様の意思だということも。何もかもはっきりしていません。私は公爵様に結婚する意志をお伝えしました。私の気持ちは慮って頂けないのですか?」
「仰る通りです。今日はたくさんのことがありましたね。ゆっくりお休みください。近々またお目にかかりましょう」
ノラは言いたいことを伝えると、ノラの姿はみるみるうちに薄くなり、やがてそこには何もなかったかのように、姿が消え見えなくなった。到底人間にはできない姿の消し方に、そこにいる全員が茫然とただ見つめるしかなかった。これがニンフなのか・・と誰しも心の中で思ったが声に出すものはいない。
間近で見ていた騎士たちは魔法でもみたように呆けている。
公爵は消えたノラの追跡は不可能とし、部屋から騎士たちを下がらせた。
「はぁ、これはいったいどういう事態なのだ?スタール家とニンフ・・・ノラの言うことが正しければ、アイリーンの母上とあなたは、ニンフで間違いないな。伯爵はそれを知らなかったようだが・・・」
苛立ちを含む声、ノラの婚約者という言葉に憤りを隠せない。
アイリーンは公爵様とは呼ばず、名前で呼んだ。
「アーチボルト様」
名前で呼んだか?アイリーンが私を名前で。ただ名前を呼ぶだけで心穏やかにしてくれるのはこの世でアイリーンだけだ。
愛らしい声で名を呼ばれ、公爵の苛立ちは一気に消滅する。変わって笑みが自然とあらわれる。
「ん?」
優しい声音に戻し、自身の膝に抱えるアイリーンの顔を覗き見る。その公爵の顔には、不安など微塵もなく、頼れる男性そのもの。その顔を見たアイリーンは安堵し、胸に顔を埋めた。
「はぁ・・・・なんで、どうしてこんなことに・・・・」
「全くな。私も同様な意見だ。しかし、私はあの男に譲る気はさらさらないぞ」
「私も・・・・・同じ気持ちです。意見が合いますね」
顔をさらに胸に埋めた。真っ赤になっている顔を公爵に見られるのは恥ずかしかった。ノラに婚約者と言われ、自分が公爵に心を砕き愛おしいと感じている気持ちにアイリーンは今さらながらに気が付いた。演劇だろうかと思えるような公爵との出会いにプロポーズ。
自分の気持ちが流されているかもしれないと迷っていた自分を笑ってしまう。
決して流されているわけではない。
公爵のことを、信頼して、共に年を重ねながら同じ時を生きることを喜んでいた自分に気づいた。
私。
私。こうしゃ、アーチボルト様とおじいちゃんおばあちゃんになるまで、一緒に生きたい。
その想いを公爵に伝えたいが、どう伝えていいかわからなかった。正直に伝えるのは恥ずかしいし、愛の告白のようで心臓がドキドキする。
「ノラ・・・・こちらの世界に攻撃する勢いですね」
顔を伏せながら、アイリーンはあえて話題を変えた。
「自分の種族を貶めた輩を赦せるものなどいないだろう」
「ふふっ」
「どうした?」
「敬語・・・じゃなくなってます」
「・・・いや・・か?」
「嫌ではありません。距離が近くなって嬉しいのです」
敬語は素晴らしいとは思うが、互いの距離を縮めるには硬い口調に聞こえる。それを崩し、いつも通りに話してくれたことが単純に嬉かった。
互いに目が合い、そして徐々に唇が近づいた。
重なる口づけはどこか甘く、そして切ない気持ちにさせる。
これからどうなるんだろう、、私。
ニンフの世界に連れていかれるのかしら・・・そうしたらアーチボルト様とも・・・・別れ・・・
そんなの、絶対にいやっ!
「アーチボルト様、ノーフォーク公爵に侵入し、例の隠し部屋へ入れば、きっと物的証拠を押収できるはずです。踏み込みましょう!私がスタール家と他の家門との繋がりがあるものを確認できていれば良かったのですが…」
「いや、アイリーンは突然のことにも関わらずよく頑張った。ケガもせず戻ってこれたことだけで私は嬉しい。ノーフォーク公爵家に入るには、簡単にはいかない。王家の書状が必須になる。それを入手するのは難しくはないだろうが、隠し部屋を開けるにはアイリーンの力が必要となるだろう。あなたにはこれ以上傷ついてほしくない・・・しかし時間を置けば隠し部屋の存在自体が抹消される。それはわかっているのだが・・・危険な目にあってほしくはないのだ、私は」
「大丈夫です。皇帝に書状を送り朝一で乗り込んで証拠を抑えましょう。ノラよりも先に!スタール家の家族とも私は向き合わなくてはいけません!」
火蓋が切られた。
これから先は後戻りはできない。
動き変化する未来へ向かってアーチボルトとアイリーンは共に一歩を踏み出した。
アイリーンの未来はこれからどうなっていくでしょう!
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