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コロナがまだ流行っていますので皆様気を付けてお過ごしくださいね♪
アーチボルト・インシュバル・ルクセンハイムは邸宅に戻り、執事より詳細を確認した。執事の表情通り、内容はスタール家のことだった。
スタール家に当時の現状を確認するため、10名以上の体制で治安部隊が立ち入り捜査を開始し、ルードベキアは小屋に放置されている死体の男との関係を聞かれていた。断固、関係を否定している。のらりくらりと親子共々 言い訳を口にしているようだが、治安部隊とて馬鹿ではない。すでにルードベキアと母親であるソフィアが暗殺専門の組織に依頼をしていたことは確認済で、言い逃れは難しい。
「皇帝陛下は?」
「書簡が届いております」
執務室に戻ると、執事が淹れたお茶を飲む。渡された陛下からの手紙に目を通した。昨日早馬で陛下宛に今の状況をざっくり説明する書簡を出していた。その返事だった。
通常であれば多忙の陛下からの返事が届くまで時間がかかるが、今回は内容が内容だけに返答も早い。
すぐに登場し直接説明するよう書かれた簡素な返事だった。
「本日登城するとすぐに書簡を送ってくれ。報告を受け次第支度をして登城する」
「かしこまりました」
しばらくするとノックがし、騎士団長のスペンサーとスコットが入室した。スペンサーは特に情報を得ているわけではないが情報共有すべく執事が気を利かせたようだ。
「ご苦労。お前たちが握っている情報を聞こうか」
「「はっ!」」
「先ほど、執事からご説明があったと思いますが、一旦治安部隊は伯爵家を後にしています。これから情報状況物的証拠を揃えて再度 伯爵家の捜査に入る予定です。他の貴族もどこから情報を入手したのか、ルードベキアが公爵家治安部隊と共に伯爵家に戻ったという噂が広がっており、この噂だけでも伯爵家に大打撃かと」
スコットが影から受けた情報を話した。
令嬢と言われる女性たちは余程の田舎か、金銭的に苦しくない限りは、一般的に一人では外出をしない。大概は護衛騎士とメイドと共に外出をする。狙われることも多いからだ。それが常識とされる中、護衛も連れずメイドもいない状態で治安部隊と共に伯爵家に戻れば、面白おかしいネタを提供しているようなものだ。
当面はスタール家の話題で持ちきりになるだろう。その噂話をうまく利用しスタール家と繋がる別の家門のしっぽを掴める可能性がある。
公爵は渋い顔をしている。
「その噂、使用人を使って過剰に尾ひれをつけて拡散するよう仕向けてくれ。使用人から使用人へ、各家門に広がれば、収集をつけるためスタール伯爵は必ず動き出すだろう。奴が誰と繋がっているか、今後どう動くのか」
「ビビりなスタールであれば、すぐに動くでしょうね。社交界の噂は広がりが早い、ちょうど舞踏会シーズンです。サファイアとルードベキアも噂を消すために奔走するでしょう。舞踏会へはアイリーン様をパートナとしてお連れになる予定ですか?」
スペンサーは今後の護衛体制を組むため、公爵に尋ねた。
「うむ。その予定だ。まだアイリーンには話していないんだが…」
「両家の間で良好に婚約が成立していません。そこにアイリーン様を婚約者として皆様にご紹介すれば、スタール家の馬鹿が黙っていません!」
スコットは公爵に楯突くように声を荒げた。
スコットは直接アイリーンの口からスタール家での扱いを聞いていた。それを知る上で、さらに社交界で好奇の目にさらされるのは、友人の一人として許せなかった。
「スコット・・・食い気味だな。それは問題ない。陛下からはすでに承認を得ている。矢面に立つのは私であり、私が縦になる。心配はいらない」
公爵の言葉を聞いたスコットはホッと安心した表情を浮かべた。
「では、アイリーンの専任護衛にしていただけませんか?舞踏会の間だけで構いません」
スコットのこの態度、ただの相談相手・・・というわけではなさそうだな。
スコットの心の内を垣間見た気がした公爵だったが、即答でスコットの意見を却下した。
スコットは影の任務を請け負っている。舞踏会だけでなく人が集まる場所にはできない。顔や声、体格が周囲のものに覚えられれば今後任務を遂行しにくくなる。
影は影であり表舞台に立つことは出来ない。そのため、公爵家には専任の騎士たちがいるのだ。
「私はこれから陛下に会うため登城する。スペンサーは舞踏会のための専任騎士の選抜を頼む。スコットには2日休みを与える。実家に戻って気分転換をしてこい」
その言葉でこの報告会を締めくくった。察したスペンサーとスコットは部屋を出ていく。
「スコット、公爵様にアイリーン様のことをあのように話すな。誤解が生まれる」
「わかっています。ただ、アイリーン様が今までどれだけ、虐げられてきたのか知っている手前、俺は、、好奇な目にさらされるのを防ぎたかっただけです」
「理解しているが・・・・彼女はわれらの主 公爵様の婚約者だ。線をきちんと引くべきだ。二日貰った休暇を有意義に使って息抜きしてこい」
「はい。ですが誤解なんてないですよ。俺、アイリーンの兄のようなもんなんで」
へらへらと笑いながスコット。スペンサーはスコットの頭をポンポンと叩くと自室に戻るため、スコットに背を向け歩き出した。
団長の背をじっと見ていたスコットも、同じく踵を返した。