8、婚約者と涙
今日は我が家のサンルームでサラとお茶をして過ごしている。
今、サラの家はシャーロット様の結婚準備で皆慌ただしくしているらしい。
「ウィル、私たち長く一緒に居過ぎて、感情を言葉にして伝え合う事が疎かになってしまってると思うのよ。」
サラが真剣な顔で訴えかけている。
サラが更に続ける。
「お互いのことで不安な事があるなら打ち明け合うべきだし、相手が嫌だと思うことはしちゃダメよね。」
だから藪から棒にどうしたんだっての。
そう言えば、昨日ジャスティンが我が家に来た。
その時に僕は婚約の事を打ち明けた。
侯爵家同士の婚約だから、すぐに発表はあった。
なのでジャスティンも僕が話す前に知ってるようだった。
そりゃあ、もう、手放して喜んでくれたよ。
もの凄く喜んでくれた。
めちゃめちゃ喜んでくれた。
曇り一つない喜び顔はあまりにも晴れやか。
悪意も嫉妬も全くひとつもない。
満遍の笑みで「良かったね」と言いながら、
男同士なのに抱きしめて祝福してくれた。
もう1人2人ジャスティンがいたら胴上げされてた。
ジャスティンが婚約したら僕もそうなるだろう、けど。
けど……!
けどさ……!
いや本当もう、その場にサラがいなくて良かった。
あれは……なんて言うか……サラの失恋の瞬間だ……。
本人はいなかったけど、居た堪れない気持ちになった。
ひょっとして……その事?
その事を打ち明けてほしいのかな……。
打ち明けるにしても、言葉は選びたいのだが。
「結局のところ、ウィルはどうなの?
私たちの結婚、正直どう思っているの?」
あ、まだそこか。
「僕個人的には良かったと思ってるよ。
そりゃ、シャーロット様に憧れる気持ちはまだあるけど、純粋にサラと過ごす時間は好きだし、楽しい家族になると思う。」
「結婚するって事は、家族になる事だけど、
夫婦になるって事でもあるのよ?」
「そうだね。
ん?どうしたの?
家族と夫婦って同じじゃない?」
何故だかサラの顔がだんだん赤くなってきている。
僕は全く嘘のない気持ちを伝えた。
サラの意図する事がよくわからない。
若干涙目になっている?
ギュッと目をつむって意を決したように話出した。
「考えてみて?
夫婦になると言うことは、私たちは、き、キッスを、キスをするって事よ?私たちキスをしたり、抱き合ったり、セ…、こづ…、こど…、子どもを作ったりするかもしれない行為だってするかもしれないかもしれないと言うことよ?ウィルは私とキスできる?ウィルは、私とそう言った愛を確かめ合う行為をする時、お姉様と重ねてしまうのではない?だって髪の色も瞳の色も同じなのよ?意識しないで、私を、サラをサラだと思って、そういったことを出来る?」
ここまで一息に言った。
この辺から僕はパニックに陥り出してしまった。
「瞳の色は同じじゃないよ?同じ栗色でも……、
サラは焼栗でシャーロット様はマロングラッセのように違う。」
「……え、悪口?」
「僕はどっちも好きだけど。
違うでしょ?色も味も。」
もう、自分が何を喋ってるのか解らない。
さっぱりわからない。
ここからどう答えたら良いか分からない。
どんな言葉をかけるのが正解か分からない。
僕がサラとキスできるかだって?
できると思う。
ただ、シャーロット様と重ねる事がないかと聞かれると、全くない、とは、言い切れない、かも、しれない。
サラをサラとしてしか見てないつもりでいるけど、
例えば灯りが消えて月明かりしかない状況だとしたら……、いやいや、それってどんな状況なんだ、
落ち着こう、大丈夫、何が大丈夫か分からないけど僕なら大丈夫。
いつでも冷静にやってきたじゃないか。
サラの瞳からからいよいよ涙が溢れてしまった。
僕はサラが泣くところを見た事がない。やばい。
心を打ち明け合うべきだと、そうサラは望んでいる。
サラとシャーロット様を重ねてしまう時が来てしまうかもしれない。
だけどそれは言葉にするべきではない。
逆の立場になって、サラが僕をジャスティンの替わりにしたら、サラとキスする時、僕をジャスティンと重ねてたら……。
……嫌すぎる。
そんな夫婦、最低じゃないか。
狼狽えて言葉に詰まっていたら、サラは握りしめた手の甲にポトリと涙を落として言った。
「私、ウィルとキスするの、嫌かもぉ〜」
そして「うわーん」と、子どものような泣き方を始めてしまった。
このへんのやりとりの為にR15にチェックをしたのです。




