5、婚約者と観劇
今日はウィルと劇場に行く約束をしている。
先週の実のない話し合いから1週間。
婚約して初めてのお出かけ。
演目は『レオナルド&ケイト』
平民のレオナルドと貴族のケイトは愛し合うのだが、身分の違いから引き離されてしまう。
ラストシーン、別れさせられたケイトはレオナルドを想い続け、誰のものにもならず、たった1人だけが心に住む事の孤独を喜び歌っていた。
孤独を喜びだと思える気持ち、私ももっと大人になれば解るのかしら。
……いや、待って。
その前に。
婚約したばかりだというのに、なぜこのオペラを選んだのかしら……。
誰だっけ、これ見たいって言ったの、私か。
流行ってたからな。
幕が閉じられ、チラリとウィルをうかがうと、
「ケイトは心の中をレオナルドの居場所とする事で、自分を保ってたんだね。」
と言った。
ウィルがなんか「わかるわかる顔」してる。
気がする。
ウィル、引きずるタイプね?
まぁそりゃそうよね。
そうでなきゃ9年も片想いしないわ。
人生のほぼ半分はお姉様が好きなんですもの。
私の片思いの長さとは比べ物にならないわね。
私はウィルのことは好きだし、
夫婦になる事は全然考えられないけれど、
家族として一緒に生活するのは楽しいと思うのよ。
恋心が……恋心が動いたことないのよウィルを相手に。
あとはときめきが有れば、ケイトの心がレオナルドでいっぱいになったように、私の心はウィルで埋まるのかもしれない。
でも、
ずっとひたすら1人を想い続けて孤独でい続ける事を幸せだと思いたくないわ。
今はまだジャスティン様のことを考えてしまうけれど、もう私はウィルと婚約したのですもの。
縁がなかったのだと諦めるし、忘れる努力をするつもりなの。
いつも前向きでいたいわ。
私は性格や考え方は時間が経てば成長して変化するものだと思ってる。
1人の人に縛られて、視界を遮るような、心を閉ざすような、心の動きを押さえつけるような、そんなこと、私には出来ない気がするのよ。
「私は、ケイトのようになりたくないし、
ケイトのような人と結婚するのは嫌だわ。」
わかるわかる顔していたウィルがスンと無表情になった。




