初仕事、完了(?)
検問所を無事(?)突破し、やかましい音を引き連れながら地獄の道をひた走る。
天界は道とかも舗装され、まるで現世なんじゃないかと思うほどキレイな空間だった。しかし、地獄へ入るとまるで違う世界だった。道も舗装されておらず、バイクを走らせていても石をめちゃくちゃはね上げている。更には曇天模様の仄暗さで覆われているため、真っ昼間だがヘッドライトは必須だろう。
これが世紀末なのか?と思うほど荒廃した雰囲気が漂っていた。世紀末知らんけど。
数分走らせていると、そろそろ配達先が近付いてきた感じだ。1回止めて、場所確認するか。
えーと依頼主は、お店?『デビルBAR・WALL OF DEATH』。
えええ、名前からして行きたくねえ・・・。なんかぶつかり合ってそうな名前・・・。
でもさすがに荷台の異物もだんだん元気がなくなってきたように思える。一応食べ物らしいし、鮮度とかの問題だろうか。とっとと店まで配達して、さっさと引き渡してしまおう。このまま持っててもやかましいだけだろう。
再度走らせようとアクセルを捻ろうとしたその時、服をクイクイと引っ張られた。えっ、何?振り向くと、角が生えた子供?がおれの服をつまんでいた。
「ニイちゃん、いまヒマ?」
いきなり話しかけられた。無視するのも気が引けるしな。兄貴として対応してやるか。
目線を合わせて、返事してやることにした。
「ごめんな、兄ちゃんはいま仕事中なんだ。この荷物を、配達しなきゃなんだよ。」
「ソウなの・・・」
子供は明らかにシュンとしてしまった。何の用かは知らんけど、申し訳ないな・・・。
「あー、話だけでも聞くぞ?おれが何か手伝えれば、配達終わってからでも手伝うからさ」
「ホント?話、聞いてくれる?」
「おお。兄ちゃんの目標は、懐の広さで世界を獲る事なんだ。」
「よくわかんないケド、すごいね!」
子供の話を聞くと、実は親と喧嘩をして家を飛びててきてしまった。戻りたいけど、どうしていいか分からないようで助けを求めていたらしい。
「悪口とかも言っちゃって・・・。なんて言って戻ったらイイのか・・・ぐすん」
「あーもう泣くな泣くな。話はわかったよ。兄ちゃん一緒に謝ってやるからさ。なっ?」
「ホント?いいの?」
「もちろん。だから、泣くのはやめろな。ちゃんと親御さんに向き合って、謝れるか?」
「ウン!がんばる!」
「そーか。配達終わったら付き合ってやるから、ちょっと待ってろな?」
「ニイちゃん、ハイタツって後ろに積んでる荷物?」
「そーだぞ。兄ちゃんも何運んでるかわかんねえけどな!ハッハッハっ」
「・・・なんかさっきからすごい荷物揺れてるケド、大丈夫?」
「ハッハッハ・・・・・・は?」
言われて振り返る。荷台がガタガタとものすごい荒ぶっている。そして、次第に荷台のケースがパンパンに膨れ上がり――
ボーーーーーン!!!!!!!
「おわあああぁああああ!!何!?なにごと!?」
「荷物が!!破裂したヨ!!!」
「世界一簡潔な状況説明ありがとう!って、そんな場合じゃねええええーーー!!」
スーパー横ローリングで、荷物(?)の一撃をかわす。
荷台を突き破って出てきたのは、5mくらいはあろうかという大きさのウネウネしたタコみたいななにか。どうやって荷台に収まってたの?というサイズ感だ。とりあえず……
「逃げ!逃げの一手!!おい少年!はやく逃・・・って、おーーい!捕まるの早いて!」
「わああー!助けテーーー!」
「触手みたいなのに絡め取られてる!一定の層から需要がありそうなんて言ってる場合かおれぇ!少年をどうにかしないと!」
「1人でも愉快なニイちゃん助けテーー!」
「誰が愉快なぼっちじゃ!後で説教だ家出少年!!」
プルルルル。プルルルル。
突如、身につけていたエプロンから着信。ポケットに携帯が入ってた。いつの間に?とりあえず出て状況を!!
『あ、もしもーしアッキー?そろそろ配達終わった〜?』
「ヤマさんそれどころじゃないっす!荷物が!暴れだして!阿鼻叫喚!」
『えぇ?アレ処理したの店長やろ…おーい店長ーー?アッキーの荷物暴れだしとるらしいで〜?』
『なに?神経は締めたのにな。もしや筋肉締めだ足りなかったかな?アッハッハッ!』
「笑ってる場合か筋肉ぅ!あんたのせいですか!」
『む!筋肉とは褒めてくれるな!!実は今日良いタンパク質が手に入ったから、キミにもあげ』
「いいから!今いいから!こいつどうしたらいいんすか!?」
『あぁ、そいつはほぼタコだからね。酸性の――(ブツッ)』
「え?酸性の?なに!?」
『(プー、プー)』
「切れやがった!なんで!?電池切れ!?こんな時に!?」
くそ!この間にもタコ(?)が暴れ狂ってる!
とりあえず酸性がどうたらって言ってたな…。なんか聞いたことある。タコは海水が酸化すると、酸素が上手く運べなくなるとか何とか。現世で友達だった伊沢が言ってた気がする。元気かなアイツ。
「おいおい、一体なんの騒ぎで・・・うぉ!?デビルフィッシュ!?デカ!」
そうこうしてる間に、近隣の人が騒ぎを聞き付け出てきた。みんな人型ではあるけどゴツイ。ご立派な角生やしたり、翼生やしたりしてる。正直タコよりこっちの方がインパクト強い。
「父サーーン!助けテー!」
「我が息子ヨシユキ!!家を飛び出したと思ったら、一定の層から受けが良さそうな囚われ方をして何をしてるんだーー!」
あっ、そこは地獄も共通の認識なんだ。じゃねえわ。いまツッこむ事じゃねえ!
「インパクトある見た目で、息子さんに名前ヨシユキって付けたんですね!渋い!」
「ニイちゃん多分それも違ウーー!」
つい。気になったから口に出てしまった。しかもそこも今ツッこむ所じゃなかった。
「す、すみません!酢かなにかありませんか!?アイツを黙らせなきゃヨシユキが!」
「む、貴様そのエプロンは・・・デリヘルの!本当に問題しか起こさんなお前ら!お前らの被害計り知れないぞ、分かってんのか!?」
「ごめんなさい新入りだから分かりません!酢!今ほしいの酸っぱいの!辛口の評価じゃなくて酸味のあるもの!プリーズ!」
「おお?丁度持ってるよ、ホワイトビネガー」
狐みたいな風貌したイケおじ風な方が、ホワイトビネガーをくれた。
「丁度でホワイトビネガー持ってる人いる!?まあいいや!喰らえタコ野郎!」
タコにホワイトビネガーを投げつけた。おっ、なんか嫌がってる?ヨシユキに対する締め付けが甘くなった気がする。
「お代わり、行っとく?(ホワイトビネガーを差し出しながら)」
「いただきます!」
「おい、野次馬のあんたらも投げろ投げろ!ヨシユキを救ってくれ!」
ヨシユキパパが呼びかけ、周囲にした5人くらいでタコを囲んでホワイトビネガーを投げつけた。人間と悪魔たち、恐らく史上稀に見るふざけた共闘スタイルなのではなかろうか。
ホワイトビネガーをみんなで投げつけるという、ここ100年は見ないであろう光景の戦闘を5分ほど続けた。すると、
「あ!ヨシユキが解放された!」
「父サン!怖かったヨ〜!」
「よしよし!よく頑張ったな!」
「明らかに動きが鈍くなってるぞ!トドメさせトドメ!」
「樽で叩きつけてやんな!(ホワイトビネガーの樽を差し出しながら)」
「「う、ぉぉおおお!せぇーーの!」」
バゴォーーーーン!!!!
みんなで協力し、タコの脳天から樽を叩きつけてやった。
するとタコは目を回し、その場に沈んだ。
「うおおおお!やったぁーーー!」
「フゥーーー!やるねえあんちゃん!」
「ニイちゃんカッコイイーー!」
こうしてお仕事一発目、特大タコ討伐戦は周囲との共闘もあり、無事白星をあげた。みんなとホワイトビネガーを片手に、勝どきをあげた。大勝利、バンザーーイ!
・・・・・あれ?おれ何しに地獄まで来たんだっけ?
ふと我に帰った時、肩をトントンと叩かれた。あっ、イケおじ風な狐さんだ。
「あんちゃん、これ。受け取りな」
「ん?これは?」
紙ペラを手渡された。なんか書いてあるが、どれどれ…
『請求書、ホワイトビネガー代。50,000ヘル』
・・・・・・・・・・。
「検問所で、天界の通貨と地獄の通貨両替出来るから。後でいいから、耳揃えて持ってきな」
「えええええ・・・。」
配達未完了、おまけに借金も作っておれの初仕事は終わった。
こんな結末、こんな結末ぅぅ・・・。
「ニイちゃん、真顔で涙流してルー!どしたー?」
「ああ、酸味キツかったからな。ちょっと染みたんだろ、ホワイトビネガー」
「はい、染みてます。心に・・・しみてます」
塩辛い涙、漂う酸味ある香り、タコの磯の香り。
それらが辺りを包み込み、初仕事は幕を閉じた。
酸っぱさを洗い流すことなく、涙は流れ続けた。
夏の暑さに耐えきれずに溶けてました。頑張って月に三回は更新できるように頑張るね♡