やっとスタートです
「すみませんでした」
謝罪と同時におれは土下座で誠意を示した。
「おお・・・なんてきれいな土下座なんだ!あれは王たるものの土下座だよ!」
「土下座の王はもはや敗戦王やない?」
「いや!今までも土下座できっと修羅場を収めてきたのだろう・・・いうなれば、歴戦王だ!」
「店長、もしかして最近モンファンやってます?」
外野がうるさい。
「・・・・・」
うるさい外野から意識を戻せば、目の前には少女が一人。露骨にむすーーっとした顔をしている。
「あのう、この流れで大変恐縮なのですが、自己紹介させてもらってもよろしいでしょうか?」
「・・いらないわよ。だいたいわかってるから。」
おや?まだこっちにきて数時間しかたってないはずだが。情報がやけに早いんだなぁ。
「今日天界に来た、セクハラド変態。合ってるでしょ?」
「なんっっっにも合ってませんが!!??」
「ちょ、立たないで!土下座してなさい!」
「理不尽!!」
あまりの誤回答に思わず立ち上がって突っ込んでしまった。叱られたのでとりあえず土下座の姿勢には戻った。
「店長、アッキーはいつになったら着替えるん?」
「ハルちゃんが落ち着いたらじゃないかい?ぼくはあのままでも良いと思うんだが」
「そりゃ店長はお仲間を見つけはったようでええやろうけど・・・」
「でもいいじゃないかあの土下座の姿勢。おしりプリっとしてるよ。」
「ぷ・・くく・・!やめやほんま・・・!」
外野がうるさい。
「改めて、今日からお世話になります。よろしくお願いします。」
「そんな恰好で挨拶しないでくれる?」
思いのほか辛辣だ。初対面でとげとげ過ぎない?
「はぁ、分かりましたよ・・・お目汚ししてすみませんでした。着替えてきます。」
とぼとぼ事務室に戻った。初対面の女子にあの態度されるとメンタル来るな・・・まぁ裸エプロンかましたおれが悪いか。
「おおい、アキモトくん!ちゃんとしたユニフォームを渡しておくよ」
「いやちゃんとしてない自覚あったんすか!おかげでおれ、あの子にゴミ見るような目で見られましたよ!」
「ははは!ハルちゃんは人見知りする子だからね!しょうがないよ!切り替えていこう!」
「んな簡単に切り替えられるかい・・。ん、ハルちゃん?あの子の名前ですか?」
「そうさ!でもまあ、自己紹介は本人からされた方がいいだろう?あの初対面を挽回するためにもね!」
「・・・!そうか、そうですね。そこは大事にしないといけないですね!」
「うむ、その意気だ!」
熱血にみえて、冷静に物事見てるなこの人。しのびねえな。
とりあえず、店長に渡されたちゃんとしたヤツを着よう。
エプロンかオーバーオールかシャツか・・・何種類もあるようだったが、ヤマさんがかっこよかった印象なのでオーバーオールを着ていく事にした。
さっきのフロントのとこに戻ると、ヤマさん一人だけいた。
「あれ、さっきの子は?」
「休憩入る言うてコンビニ行ったで~」
「まじすか、ちゃんと弁解しようと思ったのに・・」
ってあれ?コンビニって言った?天界コンビニあるの?便利すぎね?
「まあとりあえず、それはこれ配達してからやってな~」
ヤマさんからほかほかの小箱をわたされた。なんだかいいにおいがする。
「ほら、天界初仕事やで?気張っていきや!ま、現世でやっとったんなら難しいこともないやろし、気楽になぁ」
「そ、そうですよね。でもちょっと緊張しますね」
「そう?でもそのユニ似合っとるで、かっこええわ」
きれいな人にかっこいいと言われてしまった・・・感無量・・・。
「お、きれい?うれしい事いうやん~」
しまった。声に出てた。はず。
「それハルっちにも言えば、すぐ弁解できると思うで。頑張りや~」
そういうもんかなぁ。そんな会話しながら車庫に向かった。
「とりあえず、このバイク使うたらええわぁ。天界製やから強靭やで!」
「そうなんすか。うお、形はバイクなのに、よく見たら見たことない素材・・・なにこれ」
「地獄の門番してるやつの骨らしいで?ガーゴイル?とか言うてたなぁ」
いかちいなあ・・・。でも、そのいかちい所に配達行くんだから、頑張らんとな!
そう意気込み、エンジンをかける。よし、いくか・・・!
「それじゃ、安全デリHELLいってきます!」
「気ぃつけてなぁ~」
スタートは快調。・・とは言えないかもしれないが、スロットル回せばもやっとした気持ちは吹き飛ぶもんだと、自分では思っている。
この新天地での走り出しが、おれにとって良いものになるように祈りをこめて、アクセルをふかして――
『・・ガタガタ!ガタガタガタ!』
「・・・え!?荷台震えてません!ちゃっとヤマさん!?何入ってんすかこれ!?ちょっとぉーーーー!?」
――良いスタートか、果たして前途多難か。
背にある荷物に恐怖を感じながら、おれは地獄への初仕事に繰り出していった。
オリンピック見てて更新遅れちゃった☆