再就職しました
「書類の手続きは済んだので、それを基にして面接していきますよ~」
「はい・・・」
さすがに三度も殴られちゃ顔面めり込みすぎて前が見えねえ。
「まあ面接と言っても適性検査みたいなもんですよ。楽に楽に」
「適性検査?なんの適性なんすか?」
「お仕事につく際の適正です!相性悪かったら続きませんからね〜」
・・・え?お仕事?天に昇ってまでも働くの?
「てっきり、死んだらお空の上でゆるふわスローライフでも送って心穏やかに過ごすのかと…」
「それが出来るのは、天命を全うした方が中心になりますね。要は寿命でお亡くなりになった人が対象です。」
ほうほうそんなルールが…
「ん、そうすると働く対象の人ってのは…?」
「いい質問ですね!対象は不慮の事故や事件で、道半ばで惜しくも亡くなってしまった方ですね。なんせ、寿命分清算しないと転生できない決まりなので、その分働きましょうってことなんですよ」
「ええ、でも池上さん。寿命なんて人それぞれなんじゃないですか?」
「誰が彰ですか。まあ確かに寿命分では長すぎますので、天界にはとあるシステムがあります。ポイントシステムです!」
ポイントとな?
「現世は働くとお金が貰えますが、ここではその代わりにポイントが貰えます!それを貯めていくと・・・」
「寿命の代わりにポイントで転生が出来るんですね!なるほど、最終目標の転生のために働くというわけですね」
「まあそういうわけです。ポイントの使い方はお金とほぼ同じなので、まあ頑張って稼いでくださいって感じですね」
超他人事やんけ・・・でも仕事する意味は理解できた。その再就職先の斡旋をここでやっちゃうてことか。
「おっと、脱線しちゃいましたね。それでは面接始めましょうか」
「脱線してないでしょ。むしろ言わなきゃいかん情報じゃん。脱線どころか本線ですよ」
「細かいことは気にしないでください。まったくもう」
逆ギレっぽい反応された。おれが悪いんかこれ。
「えー、それでは始めます。まずは出身と名前をお願いします。」
「就活か!!えー、生まれは日本、名前は秋元です。」
「ありがとうございますアキモトさん。職歴見ると、デリバリーの仕事を長くしていたんですね・・・?」
「あー、そうですね。はやりのスーパーイーツってやつです。実は黎明期からやってたんで、かれこれ6年くらいは」
「へぇ、なかなかの職歴ですね!あれ、そういえばデリ部門人が足りてないってこの前ぼやいてたような・・・。ちょっと確認してきます!」
「あ、ちょっと待・・行ってしまった」
受付嬢的な人は足早にどっか行ってしまった。確認とか言ってたな。
まだその仕事やるとか言ってないんだけどな・・・もうちょい吟味させてくれよ。
「お待たせしました~、即戦力は大歓迎とのことです!内定ですね!おめでとうございます!」
「レスポンス早いし、なんもしてねえのに物事が進むなぁ!?ほかの職種とか案内ないんすか?」
「だって職歴見る限り、デリバリー以外でなんかやってました?脇見もせずにそれ一本しかやってないじゃないですか」
「うぐぅ、それはそうだけど・・・でも!どうせやるならなにか新しい仕事を!」
「ちなみに配属はデリヘル部門です。」
「新しい職種がおれを変え・・・いまなんて言いました??」
「配属はデリヘル部門です。ご不満なら、ほかの職を探して・・・」
「いえ、その仕事受けさせていただきます。ちょうどまたデリしたいと思ってたんです。キリッ」
「・・・・・」
受付嬢がいぶかしげな眼で見ているが、そんなものは関係ない。
おれは新天地での仕事に今燃えているんだ。うん、期待で胸がいっぱいだ。
別に?配属がデリヘルとか?そういうのに惹かれたんじゃなくてね?使命感がそうさせたというか。うん別に。マジで。
「受付嬢さんおれ頑張りますよ!ぜひやらせてください!」
「あ、はい、手続きはしときますんで、追って連絡しますから・・・ちょっとテンションきもいんであっち行って待っててください」
元気に返事して、席を立った。ふふ、デリのヘル、響きがいいよね。どんな仕事だろううふふぅ・・!
「・・・もしもし、先ほどの件ですが・・・はい、一人決まりましたよ。デリHELL部門です。・・・え?また釣ったのかって?人聞きが悪いなぁ。あっちが『やりたい』って言ったんですよぉ、ふふ」
興奮してたおれは、受付嬢のあくどい会話に気づくことなく、その場を後にしたのだった――