昇天しました
「ご新規一名様です!誰か対応いけますかーー?」
「私行けますよ、担当変わります!」
――寝ぼけた体に、慌ただしい声が鳴り響く。
なんかふわふわした感覚だ。
えっとまずおれは、なんで寝てたんだ?
・・・あぁ、そういえば事故って動けんくて、そのまま寝ちゃって・・・
「こんにちは!お目覚めですか!?」
「おわぁ!!?」
親方、目が覚めると目の前に女の子がいました。
びっくりしたよ。なんせ、頭に輪っかが浮いてましたから。
「わぁ、近年まれに見ないテンションで驚かれましたね・・・」
「そりゃ起き抜けに、近年まれに見ないテンションで話しかけられましたからね」
「え!『美少女に話しかけられたからね!?』」
そんなこたぁ言ってねえ。
「やだなぁ~、まあ美少女なんて?そんな事ないこともないこともないですけど?」
「まあ美少女どうこうは置いといて、それよりここは」
「・・・・・」
「美少女に話し掛けられて舞い上がる気持ちはわかりますけど、ちょっと落ち着いてくださいよ~」
「ハナから落ち着いてるし、前が見えねえ」
話遮ろうとしたらグーパン食らわせてきやがったこの女。
しかも横っ面じゃなくド正面。めり込んでないおれの顔?
「とりあえず、ここはどこなんですか?なんか役所?っぽいような」
「いい質問ですね!ここは天界のお役所です!」
「へえ天界・・・てんかい?池上さんいまなんて?」
「誰が彰ですか。天界、ですよ。あなたは今しがたお亡くなりになりました。なので、天界に展開されて今書類審査中です」
は?天界・・・?亡くなった・・?色々聞きたいことも今の会話で山ほど出てきて頭がパンクしそうだ。とりあえずなんか言わなきゃ・・。
「天界に展開とか、なかなか粋な事いいますね」
「・・・・・」
「先ほど言いましたが、ここは天界。亡くなった方を一番最初に温かく迎える、心優しい場所です」
「心優しい奴がこの短時間にグーパン二回も浴びせますか?」
前が見えねえ(二回目)
「よくそんな神経逆なでする言動できますね、死因もそれに関係してるんじゃないですか?」
「あんた死んだ人間によくもそんな口きけますね」
そんな軽口を返して、自分自身ではっとした。
「おや、こんな落ち着いてる人も久々でしたが・・ご自身が亡くなっているのを自覚しているのもかなり久々ですね」
はっとしたのはそれに気づいたから。
そう、おれは既に亡くなっている。
そうか、おれはあの事故で・・・そのまま起きることなく、おれは
「すみません、書類審査終わったぽいんでこちらで受付済ませて頂いていいですか~?」
・・・あのさぁ、こちとら愕然と事実を受け入れてる最中なのよ。
絶望があとからやってくるタイプのやつなのよ。
少しくらい気を遣え空気を読めこのアホぉ・・・。
そう心の中で畳みかけてやった。
「・・・・・ほう、この私をアホとな」
あれ、声に出てた?てっきり心の中かと・・・
おや?目の前に拳が