昇天しました(別の意味で)
初仕事(討伐)を終え、代償に早くも軽い借金を背負ってしまったおれ。
今、そんなおれはと言うと・・・
「もぐもぐ・・・うわウマっ。さっぱり食べれる上に食感も肉厚っ」
「さっき狩ったしな。鮮度抜群だろ」
角を生やしたオーガさんに提供されたタコを食っていた。
なんと言っても、さっき倒したばかりのタコ野郎。生きてるのかってくらい美味い!
死んでからもこんな美味いご飯が食えるなら、この世界も悪くないな〜!
・・・・・
「ってバカ!おれ仕事中だっての!!!」
「あんちゃん、店から連絡来てたろ?迎えいくからそれまでゆっくりしとけって言われてたじゃねえか」
「あ・・・そうでした」
先ほどの件で荷台を突き破って出てきたタコ。その勢いで、バイクまでイカれてしまった。
その旨を報告すべく連絡したのだが・・・
〜回想〜
『・・・あ!繋がった!アッキー、無事やった?』
「無事ですけど!!死にかけましたよ!??なんすかあの荷物!!?」
『言ったやろ?一応フードやであれ』
「めちゃくちゃ暴れてましたよ!食えるかあんなん!」
『美味いんよ?WODならオーガのおっちゃんおるやろ?食わしてもらいよ、絶品やで〜』
「WOD?」
『配達先やろ?wall of death』
「あれってそう略すんですか?」
『さてはライブとか行かない人生だったやろアッキ〜』
現世の事でいじり、ヤマさんはケラケラ笑っていた。なんて人だ。
「あ、ところで。店長さんいますか?ちょっと報告を」
『店長?あー、今日はちょっと立ち直れんかもなぁ』
『うぅ、うぅぅ・・・』
「え、泣いてる!?なんで!?」
『いやな?その暴れた奴の処理チョンボったの店長やしな?罰としてプロテイン没収したんやけど・・・こうなってん。』
『プロテインンン・・・あれが無いと落ち着かないんだぁ・・・すううぅ・・・はあぁぁ』
「なんかヤバい物の隠語だったりしませんよね、プロテインって」
『タンパク質含有量80%超えの合法ドラッグやね』
ヤバいやつの巣窟だなあそこ。
『で、報告て?』
「あ、そのタコとの戦いでバイク壊れちゃって。あと借金も出来ちゃって。どうすればいいかなと」
『バイク壊れたかぁ。しゃーなしやな〜・・・あ?借金??』
「すんません借金はこっちの話です。バイクの事だけ対処して頂きたいです」
『あ、おお・・・まあ、じきにそっちの配達とかも行くと思うから、そん時拾ってくわ。WODで仲良うしとき〜』
「承知しました。お待ちしてまーす」
〜回想終了〜
「初日から迷惑かけるなぁ・・・うわ美味っ」
「レモンで酸味あっても美味いだろ?」
オーガのおっちゃんがまたドヤ顔してる。さっきのヤマさんの話しぶりからして、結構馴染みの得意先なんだろうか?
「おお、基本はアンタのとこから仕入れてるよ。即日で回してくれる事多いしな。仕事が早いのは良いこった。」
聞くとそうらしかった。検問の人も言っていたが、ウチは結構評判がいいらしい。
「まあ、同じくらい問題も起こすがな。なんでおたくが繁盛してるのかがわからんくらいだ」
前言撤回。問題だらけのようだ。恐らく今回ので、おれも問題児扱いだろうなぁ。
「でも今回のはさすがにビビったなぁ。暴れ出すだなんて」
「引き締まったデビルフィッシュを踊り食いしたかったが、これはこれで酒が進むぜぇ」
「体動かした後の酒は格別だよなぁ〜」
一悶着あった後だが、そんな店内でワイワイと、さっきのタコをつつき、先程の戦闘の話を肴にしながら酒をぐびぐびと飲んでいる地獄の住人(?)たち。見てるとちょっと飲みたくなってくるなぁ。
「あんちゃんも、どうせ迎え待ちならちょっとくらい飲んでってもいいんじゃねーの?」
「そうですかね?」
「飲もーヨ!ニイちゃん!」
「お、ヨシユキぃ!ケガしてないか?ごめんな兄ちゃんの荷物のせいで巻き込んじまって」
「楽しかったからイイよ!父サンとも仲直り出来たし!」
そう言ってヨシユキは、オーガのマスター(ヨシユキパパ)と笑顔を交わす。
「おおそうだ。その礼をしてなかったなあんちゃん。一緒に謝る、とか言ってくれたんだったな」
「いえいえ。実際はその後あんな戦闘巻き起こしてますから。何もしてないっすよ」
「いや。子ども目線に立って声をかけるのは、魔族でも人間でも中々出来ねえ事だぜ?男気あるじゃねえか」
「そう言って貰えると嬉しいっす」
「よし!礼に、今日はうち持ちで飲んでけ!そのデビルフィッシュ(タコ)とも合うやつ出してやるよ!」
「マジすか!じゃ、お言葉に甘えてちょっとだけ」
マスターの心意気で、1杯頂くことにした。
ドリンクを1杯貰うと、ヨシユキもジュースを持っていたので、軽く乾杯を交わし、ひと口グビり。
「濃っっっ!!」
びっくりした。フルーティな色だったので、軽めのカクテルか何かだと思ったら全然違う。なにこれ。喉焼けるかと思った。
「マンドラゴラのエキスで作ったアルコールだったんだが・・・合わなかったか?」
「いや、思ったより濃かったからびっくりしただけです。むしろ・・・美味い」
初手はびびったが、口に残る味わいはジンジャーエールのような感じ。なんとも刺激があってイイ。
感心していると、後ろから声をかけられた。
「おいおいデリのとこの〜。飲み慣れてねえのか?」
「人間にゃ魔族の奴はキツいだろお?普通のにしとけって」
「「HAHAHA!!」」
「またアイツらは酒が入って・・・。あんちゃん申し訳ねえな。気にしねえで・・・おい?あんちゃん?」
気がつくとおれは、声を掛けてきた連中のテーブルへ足を運んでいた。
そしてテーブルにドンッ!と酒を置く。
「「へ??」」
テーブルの連中の声が重なる。ガーゴイル、コボルトといった所か。
「飲み慣れてない・・・か。なぁあんたら」
「な、なんだよ」
「飲み比べ、しようぜ」
「あかんわ、遅くなってもうた〜」
じきに行く言うて、2時間くらい経ってしもたわ。堪忍なアッキー、暇してへんやろか。あそこのバーもクセ強いんぎょうさんおるからな〜。まあ、アッキーなら何とかやっとる気もするけど。
「(ガラガラ)お久〜。オーガのおっちゃん、ウチの奴迎えに来た・・で・・・?」
WODに迎えに来たが、なんだかいつもと雰囲気が違う。なんか盛り上がってるというか、熱気があるというか・・・
その渦中と思われる風景に目を向けると、そこには――
「タコの時は意気揚々だったのにぃ!?どーしたよおぉい!??」
「か、勘弁してくれ・・・俺の負けだ・・・」
「おおお!あのガーゴイルさんも沈めたぞ!あのあんちゃん5人抜きだぜ!!」
「こりゃ逸材だ!さあ次張った張った!!」
「もう終わりですかぁ?飲んじゃいなよ!そんなお酒なんて!(ぐびぐび)」
「「オオオオオーー!」」
なんか、うちの新人がえらい囃し立てられとる。どんな状況??
「お、いらっしゃい。久しぶりじゃねーかチーフさん」
「おっちゃんお久〜。んで、これはどないなっとるん・・・?」
「ああ〜・・・。ちょっと客が酔ったテンションで、あのあんちゃん煽っちまったんだがよ。そこから発展してこんな事に」
「ニイちゃんすげーな!向かう所敵無し!カッコいいヨ!」
「ヨシユキ?あれは一時のテンションで自分自身を錯覚しているんだ。カッコよく見えるかもしれんが、ああなってはいけないぞ?ああなると、人間性Fランとか言われるらしい」
「よくわかんないケド、わかった!」
「よし、良い子だ」
「あの状態で回収せなあかんの?だるいわァ〜・・・」
ほんま気いおっきくなっとる奴やな。謎の歴戦の勇者感出しとるけど、よくいるイキリ散らかし大学生感満載や。
「おーいアッキー?帰るで?」
「ひゃ、あれ?ヤマしゃん?なんでここに」
「迎えくる言うとったやろ?」
「・・あっ、もしかしてヤマさんが次のチャレンジャーですかぁ?」
「話聞いとった?」
「いいでしゅよ!ヤマしゃん!おれが勝ちますからね!まずはこのシュワシュワから――」
「はぁ〜〜(ゴソゴソ)」
しゃーないか。ちょお力技やけど・・・
「堪忍してなっ!」
「へ??」
(ゴンッッッ)
フライパンが脳天に叩き込まれる。
いい気になって覚醒していた脳が、強制的にシャットダウンされる。
薄れゆく意識のなかで、ヤマさんの呆れた顔とギャラリーの楽しそうな顔が交互に見えて、あれおれ何やってたんだっけとちょっと冷静になって、そのまま眠りに落ちていった――




