間話3 少し昔の話
朝田がまだ早乙女だった頃、アメリカ軍に出向中の時の話。
はぁ・・・面倒なことになったなぁ・・・
暗闇に包まれた視界の中で俺は溜め息を吐く。理由は明白である。捕まったのだ。我らがUSAの兵士が。ん?お前は日本人じゃないのかって?・・・俺は身売りされたんだよ・・・アメリカと日本での合同演習。アメリカ対日本でやった時、アメリカ軍の普通科連隊の敵、というかアグレッサー役として立てこもり犯を演じたんだが、最初の部屋に突入してきた分隊を纏めて爆破して、その後続が脱出しようとするのをまた爆破して、家屋の中央に追い込む様にしてそのまま掃射で一掃したんだ。ヤケを起こしたアメリカ側はアメリカ側のアグレッサーとして居た特殊部隊を繰り出して来たが、ほぼ素手の状態で全員締め上げたらいつの間にか米軍に行かされたんだ。一ヶ月くらい前に見たニュースには、日本とアメリカでの日本が比較的有利での安保強化、更に経済政策までセットで付いてきた・・・つまり俺は、米軍から非常に高い価値を見出され、そしてそのまま売られたんだ・・・まぁ、あの腐った政治体制の国から脱出できたのはまぁまぁだった。と、思い込もうとしている。他にも、同じような隊員がいるらしいが、この広いアメリカで会うことはないと言っていい。というかここまで来るのに入出国手続きをしたのかすらわからないので、もしかしたら書面上は日本にいるのかもしれない。しかし1人の隊員を犠牲にするのは如何がなものかとは思うが・・・国家の為ならと言うのであれば、・・・と無理矢理納得している。そして今、テロリスト共に人質として捕まってしまった。そう、生死を厭わないクズ共に・・・そして最初は教官としてやっていたのだが、勿体無いとでも思われたのか、先程戦場に立ち、そして現在、クソ野郎共に捕まったというわけである。具体的には奇襲をかけられ、怪我をしてしまい、そしてそのまま見捨てられ、現在に至る。こういうテロ組織とは基本的には政府側は話に応じないし、テロ組織もそれをわかっているからプロパガンダの引き立て役として虐殺したりするのが常である。その為怪我をした俺の手も自分で巻いた包帯しか巻いておらず、それどころか目隠し猿轡に両手足に手錠までされている。俺の場合、米軍側からしたら2つの考え方に分かれると思う。日本から預かっている隊員を戦場に送り出した挙句、そのままロストなんてしてしまったら日本の反米感情が爆発しかねないという考えや、友好国の国民を前線に立たせて、捕まったらそのまま見捨てるなんて事したら米軍のメンツが壊れるなどの考えと、たかがイエローモンキーに戦力を割くなんてという考えが小さくは生まれてしまう。もちろん、普通の米兵の場合でも極力救出するが、それが人種が白人でないというだけで待遇が大きく変わる隊もあるし、逆に人種に関係なくアットホームな隊もある。ただ、近年は改革が進んでおり、指揮官が変わっただけで大きく変化するという例も少なくない。
「おい、降りろ」
・・・両手両足に手錠されて目と口を塞がれている状態でどう動けと言うのだろうか。
しかし相手は問答無用で車から蹴り落として来た。そして罰だとばかりに右足に1発弾を撃ち込まれる。悶える俺をよそに、目隠しだけは取られた。
「お前の寝床はここだ」
ただの机がある部屋に引き摺られ、それの上に放られる様に載せられる。そこからであった。人生で最初の試練。
拷問という、人道など1mmも気にしないテロリストらしい行為が、始まったのである。
そして俺はここで、両足を失った。
リンゲル砦 収監から1ヶ月。
牢屋に詰め込まれた俺は、何をするでもなく、1人壁にもたれ掛かり、部屋の隅を眺めていた。最初は、周りからは暴れる様な音や、泣き叫ぶ声、そして叩かれる様な音がしていた。しかし、最近は静かになった。おそらく、スパイ容疑をかけられ、説明された元隊復帰の条件を聞いて、錯乱し、価値がなくなったと判断された奴が消された様だ。俺は抵抗しなさ過ぎて疑われたが、暇つぶしに壁に書いたゲリラ戦の論文の様な物を見つけた指揮官が、俺の収容場所を集団房から独房に変え、集団房に書いていた物を紙に書き写した様だ。ちなみに新しい牢屋は、並んだ牢屋の一番入り口側である。何人か上手いことやって脱走しようとした様だが、自分は生きる価値を見出さないが、同時に死ぬ価値も見出せないのでチクってやった。俺が寝ている間に抜け出そうとしたやつもチクり、更に俺が寝ている間に俺を殺して脱出しようとした奴は、どこから持ち出してきたのかわからない角材を逆に奪い、気絶させて看守を呼んだ。その結果、模範生として多少良い飯と水をもらえる様になった。まぁ、それでも所詮豚箱のメシだが。おそらく残飯であろう。グチャグチャの良く言えば雑炊。悪く言えば少々衛生的な生ゴミである。そんな毎日を過ごしていたある日。監獄の扉が開いた。まだ飯の時間では無いのだが・・・階級の高い服を着た、まさに武人を体現した様な風貌の、前世では中年と呼ばれるであろう風貌の男が言った。
「おい。お前は、どのくらい戦える」
視線を動かさずに答える。
「周りには基本新兵しか居りませんでしたので。正確な評価は難しいかと。本来であればここで評価されるはずだったのですが」
少々嫌味混じりに言うと、彼とその取り巻きはは少し驚いた様な表情をしたが、しかし直ぐに彼の表情は険しくなる。
「つまり、君は君を推し量る物差しがないと?」
「その通りであります。そもそも精霊の儀も終えておりませんので」
「君の両親は2人とも帝国のスパイだった。今から約1ヶ月前、王立図書館の禁書室に忍び込んだのが確認されている。またその後に帝国の工作員により牢から出されて今頃は帝国に帰って奴らの泥水でも啜っているんじゃ無いか?」
「自分は聴取で話した事以外は一切知りません」
「そうだな。まさか幼児の頃から全て話してくれるとは思っていなかったよ。私が見た中で最も記憶力が良い人間だ。しかも記録を漁っても矛盾点も一切見つからない。こんな不思議な事があるかね?」
「自分は覚えていたことを話したまでです」
「しかも君が持っていた物もとても興味深い。調べてみたらキリショペクチェの鍛冶屋と一緒に作ったそうじゃ無いか。しかもどれも非常に短期間で作り上げ、おまけに失敗もほぼしていない。しかも作っているのものはほぼ全て帝国が得意なカラクリばかりと来た。これを見て、君を信じられると思うかい?」
「自分が得意なことをしまでです。処刑するのであればどうぞ」
「ふむ。そうだね。しかしそれでは説明できないこともあったからな。まぁ、少し場所を変えよう」
そう言うと、彼は後ろの取り巻きの1人に合図をし、俺を独房から出し、とある一室に軟禁された。飯はまともになった、と言いたいが、5日に4回は缶詰である。しかも保存期間ギリギリの。そして5日に1回はまともな調理された料理が出て来た。そして時々呼ばれ、普通の兵に紛れて訓練を受ける様になった。ただし、常に憲兵に付き纏われているが。他にも、定期的に鍛冶場に入る許可を得た為、さまざまな剣を打った。そしてそれは、突然起こった。いや、始まった、と言うべきか。




