第六話 執事の昼
少ないけど許してください
陛下と姫様が話しながら朝食を摂るのを見ながら、一礼して退室する。1番の仕事である護衛はここまで来れば問題は無い。そして社交ホールへダッシュ。(人目に触れない様に)芸術祭は今年から絵画や彫刻だけではなく、音楽も含まれることになっている。しかし、そのほとんどがフリッツが前世から持ち込んだものを占めている。しかもパイプオルガンやピアノは、とくに手間がかかる。そのため、午前から準備に時間を充てることになっていた。
「おい貴様!なにピアノのハンマー折ってくれとんねん!?勝手に作業するなってあれだけ口をすっっぱくして言っただろうが!?これで新しいハンマー来るまで調鉉できないじゃねえか!?」
「…」
「だんまりか?あ?」
縮こまっている体に睨みを効かせながら、手はメモを書き上げ、それを渡して別の奴に指示を出す。
ハンマーとは、ピアノの鍵盤を叩くと下からポコンと鉉を叩くやつ。こいつがないとピアノの音が出せない。そしてこいつはそれを勝手にさわって折っちゃったわけで、…
「反省したか?」
「ハッハイ」ガクブル
「工房へ今すぐ取りに行け!直ぐにだ!」
解放されたかの様に走り去っていった。
「はぁ・・・」
とりあえず椅子に座って引き出した鍵盤を戻す。そして折れた部分以外の音を調整する。これが曲者で調鉉をすると他の所がずれる。つまり右から順に調鉉して一番左まで調鉉したとしても、一番右が素人でも分かるくらいずれてしまう。そのため、繰り返し調鉉をして、基準に近づけていく。(まあ、よほど放置しないとこうはならないけど)それが二台である。(どちらもグランドピアノで、鉉の長さが違う)途方もない時間がかかる。
「取ってきやした!」
「貸せ」
鍵盤を引き出して、ハンマーを手早く取り付ける。そして戻して、鍵盤のふたを取り付けたら、最終確認する。そして終わったら、チェロ、ギター、リコーダー、etc…これらをすべて調整する。
「おやぁ。フリッツではないですか」
ニタニタと笑いながらTHE悪役な男が歩いてくる。周りの作業をしている奴らは、一旦手を止め、礼をした。
「(ハァ。面倒なバカが来た)こんにちは。えーとどちら様でしたっけ?」
適当にあしらいながら作業を続ける。
「ほう、私を前にしてその態度ですか」
こめかみが浮き上がっているような気がするが見向きもせずにスルーする。
「貴様!さっさとひざまずけ!」
「…」
腰の剣を抜いて斬りかかってきた。だが、
(へたくそ)
たまたま持っていたレンチを不意にあげたように見せかけて防ぐ。レンチと剣がぶつかるが、レンチは鋳造のかなりゴツメの工具。剣は装飾華美な、明らかに儀礼用のもの。しかもこいつの剣の握り方がなっていない。対してフリッツはしっかりとレンチを握っている。それがぶつかった結果・・・
「いでぇ!!」
Aくんは、剣を弾かれ、とりおとした。
「はぁ?なにこいつ。剣術学んでないのか?」
フリッツは、思わず、おもったことを、そのまますとれーとに、口にしてしまった。Aくんは、、かおをまっかにして、きりかかってきた。面倒だけど、スロー気味にストレーパンチをプレゼントする。…
「グボァ!」
ぁ、気絶しちゃったze…剣を取り落とすとか、たかが殴られただけで気絶するとか・・・新兵以下じゃん・・・回りがオロオロしてるが、手を挙げると、壁際で警備をしていた騎士が回s、
「おい!何で気絶させた!?」
「現在、芸術祭の準備をせよ。という王命を承けております。王命の遂行に支障が出るため、このような手段を取りました」
「肉体に被害が及んでいるが?」
「フィラヌ、よろしく」
「ほいほーい…んーーしょっと」
「うん、上手上手」
うん?なにしたかって?傷を癒してもらったんだよ。魔法って便利だねぇ。
「ほむ、起こして」
「はい」
「なっ」
「うう、はっ」
キョロキョロ見回して、俺を見ると殴りかかってきた。それを魔法障壁で防ぐ。
「ガッ、くぅぅぅ…」
「子爵、貴方には芸術祭の演奏者に陛下から直々に抜擢されたはずです。なぜここに?」
「ふん。こんな事できるはずなどないのだ!貴様にできるのかどうか、直々に…って聞けーーーーーーーー!」
「よーしこれでいいだろ」
丁度任せていたチェロの調律が終わった様なので試奏してみる。無伴奏チェロ組曲 第1番を試しに弾いてみる。これは組曲展覧会の絵を作曲者のヨハン セバスティアン バッハ(j.s.バッハ)が作曲した曲で、結構お気に入りだったりする。他に有名所で言えば、G線上のアリア、フーガト短調(小フーガ)等がある。弾き終わったので件の人を見、……どこ行った?
「奴は?」
騎士は奴と言われて直ぐに分からなかったようで、数秒フリーズした。
「あ、ああ。なんか走って行きました」
「そう」
その後は、特に何も起きなかった。




