第五話 執事の朝
短いけどゆるして
起床。今はだいたい前世の4時くらいだ。
庭に出て一時間かけて新兵のころから続けてきたトレーニングをする。
そして部屋に戻り、執事服を着る。ちなみに服の下は、コンバットナイフと精霊たちの待機場所のカゴが標準装備。この時間になると、他の使用人とすれ違う回数が増え始める。そして兵舎へ行き、今日の午前中の姫様の予定を通達する。
「おはようございます。キリシュル団長は?」
「執務室にいらっしゃいます」
「ありがとう」
執務室の前でノックする。
「どうぞ」
部屋に入る。
「おはようございます。こちらが午前中のの予定です」
「は」
畏まっているように見えるが、私が姫様の代わりとして居るためだ。···と、思いたい。
「確認しました」
「では」
かなりあっけないが、時間が迫っている。
そしてすぐに調理場(城の中に4つあるうちの主人、来客用へ)で、賄いを食べて専用のワゴンと茶菓子とお湯をもらう。そして姫様の部屋へ。時間は6時。部屋の前にいる護衛に会釈をして、ノックをする。
···
「はぁ」
隣の護衛のうち1人の顔馴染みが苦笑している。もう1人は初めてのようで、驚愕の表情を浮かべている。普通、執事が主人に対してため息を吐くなどあってはならない。そしてその主人(姫様)も、公の場で弱みを見せた事がない。つまり新人は初めてため息を吐かれるのを見たのだ。ワゴンを押しながら部屋に入り、ワゴンをテーブルの側に置き、壁側に鎮座している天蓋ベッドに声をかけながら、窓のカーテンを開ける。
「姫様、朝です。起きてください。・・・起きてください!」
こうなったら最終手段だ。天蓋ベッドのカーテンを開ける。中にミルクティー色の髪をした美少女が見える。・・・ピンク色の瞳を完全に開き、体を起こした状態で。薄手のネグリジェがかなり目に悪いが、欲情したら最悪打首である。直ぐに視線を外す。
「おはよう!フリッツ」
無言で紅茶を淹れる。
「ねえ、なんか返事してよ」
視線を逸らしながら答える。
「私はただの従者ですので」
姫様が頬を膨らませる。
「ふーん。一人で砦を制圧したひとがただの従者ですか。···あなたたちはどう思う?」
するとピョコンと俺の執事服の胸元のポケットから五人の小さな精霊が飛び出してきた。そして肩と頭にそれぞれ乗る。
「相変わらずたくさん連れてるわね」
「部屋に置いてく訳には行かないでしょう」
「「「「「おはよーー姫様!!」」」」」
出てきたのは精霊だ。姫様から見て右から、護、愛、フィラヌ、ほむ、義、と言う。
「まあ、明らかに"ただの従者"ではないよね。ご意義ありませんか?」
「「「「「意義なし」」」」」
(はぁ。···まあ、姫様も笑いながら採決に参加してるし、いいか)
「とにかく、御召し物を整えてください」
連れてきたメイドと共に衝立の向こうで着替え初めた。
「今日の予定は、午前中は入学試験勉強。午後が王宮主催の芸術祭です」
「はい」
「特に芸術祭は国王陛下が、心待ちにしていましたものです。それと、姫様が試験勉強をしっかりやっているかどうか気にされていらっしゃるようです」
「ハイハイ」
丁度着替え終わったようだ。姫様がベッドのそばに置かれているテーブルセットに座る。そしてさっき淹れたお紅茶様を飲んで一息ついている。それを見ながら、俺はポケットから懐中時計を取り出す。
「姫様、時間です」
「ねぇ、たまにはその子たちに王宮の景色を見せてあげたら?」
「「「賛成!」」」
「いやでもフリッツ様に迷惑をかける訳には···」
「いいよ」
「「「「「おぉ!」」」」」
「ただ、そのままの格好じゃつまらないから、これ着て」
取りだしたのは、前世で使っていた"朝田のカゴ"の制服を精霊サイズにダウンジングした物だ。実は全員デザインが全く異なる形をしているが、しっかりと統一性はある。フィラヌのは新しくデザインした。
「はーい」
衝立の向こうに消える。紅茶が無くなっていたので注ぐ。
「···りょうくん」
「はい?」(なんて言ったんだ?)
「いっいや、どうしてあそこまでなついているのかしらね」
「「「「「着替え終わったよーーー」」」」」
「では姫様、行きましょう」
食堂へ行く。そしてすれ違う人が俺の頭と肩を見てギョッとしている。目に見える精霊1人を連れているだけでも珍しいのにそれが5人もいる。驚かないわけがない。王室専用食堂(来客用、密会用、そして王族専用の3つがある。特に後の2つは入室できる使用人はほんの一握りしかいない)に着くと、ドアが開けられる。姫様が入るのに続く。そしてドアが閉められる。
「おはよう!お父様」
「ああ、おはよう、ヴィレラ」
この人は国王。つまり、ヴィレラの父である。そして、ヴィレラの母はすでに病で他界している。




