表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

贅沢クリームの毒イチゴのショート

メンクイ

作者: 坂井ひいろ

 私は、この地球と言う名の銀河の辺境の惑星に派遣された監視者です。この星の生物、つまり人間のメスの姿かたちを分子レベルで完璧にコピーした生体ロボットです。


 人間は銀河に存在する数多の生物の中でも得意な文化を持っています。それは『面食い(メンクイ)』です。


「ねぇ。未海みう、星宮君ってイケメンだよね」


 高校の体育の時間。グラウンドで隣りに座る工藤那奈くどう ななさんが私に話しかけてきました。私は彼女の言う星宮君の顔をチラッと眺めます。


 楕円形の顔の中央に嗅覚器官、その下に摂食器官、両脇に視覚器官を備えている標準的な人間の顔です。


「そうかな。別に普通だと思うけど」


 私は那奈ななに答えます。個体を認識する為に感覚器官が集まり、露出した頭部を利用する生物は他の惑星にも存在しますが『イケメン』なる概念が私には理解できません。


 だって、そうでしょ。顔が良いと言うだけで食料を沢山調達できるわけでもないし、病気に強いわけでもない。星宮君は痩せていて、正直、他の同種のオスに簡単にやられてしまいそうなくらい頼りない。おおよそ生存競争に打ち勝てるようには思えない。


「またまた、余裕かまして。未海は美人だものね」


「余裕とかじゃないし。ただ、良くわかんないんだよね」


「マジ!じぁあ、未海は誰が好きなわけ?」


「うーん」


 私はグラウンドで活動する男子の顔を見回した。


「山田くんかな」


「うっそ。頭は良いけど、デブでハゲじゃん」


 太っているのは力がある証であるし、ハゲの生物は知能が高いことが多いのは、銀河では常識なんですけど・・・。


「そうかなー。でもね、那奈。もう直ぐね」


 ギュイーン。


 私が言いかけた時、轟音が鳴り響く。空を見上げる生徒たち。私を派遣した幾万もの銀河艦隊が出現しました。


 とうとうこの時が来てしまいました。人類の進化が止まってしまったのは『イケメン』なんて、生存に何の役にも立たない男子が持てはやされるようになったからです。人類には天敵が必要なのです。


「うわ、未海!大変。宇宙船から山田君みたいなハゲデブの宇宙人がいっぱい降りてきたよ」


 那奈が震えながら私に抱きついてきました。


「いゃだー。ほら、変な銃持っている。わっ、わっ。星宮君が撃たれた。宮下君も武田君も・・・。うっそー。イケメンがみんな食べられちゃっているよー」


「人類の為だからしょうがないじゃない」








おしまい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ああ、メンを、食われてしまいました! [一言] 宇宙人から見ると、弱い個体なんですね。 面白かったです。
[良い点]  またまた、こんな宇宙人がいるわけないじゃないか。ん? なんだおまえ、ぐわああああああ! [一言]  イケメンでごめんなさい。
[良い点] 作者の怨念を感じました(≧∇≦) [気になる点] 混血可能なのでしょうか? [一言] そういえば昔の中東の方の戦争で 敵方の女性をすべて攫って 子供を産ませて純血種を無くす って作戦があ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ