温暖化戦争
どこかの国からやってきた、地球温暖化対策を訴え続けた少女が大国のお偉いさんとお話をする。
それはどんな国にも存在する子供達でも、将来あり得る事だと思って生きていく事なんて、まずあり得ないこと。それほどに少女がしてきた地球温暖化対策への活動は、素晴らしい事なのだと思う。
「だからといって、俺達のところ来るか?他にも行くとこあんだろ」
「そーいうものですよ、光一」
海を越えて、アメリカまで渡ってくる。親の力でならともかく、別の力でこうして外国まで来た少女というのは色々と背負っているものがあるようだ。純粋たる気持ちで言っているのは感じ取れるが、少女を後押しする見えない大人達とは何者なんだろうか?
画面に映るのは、いつもその少女だけ。生で会えば色んな人物が周囲におり、少女の国籍とは思えない者達が警護もして、通訳やアドバイスを送っている。
そんな様子を観ているのは、その少女の話を聞くお偉いさんの護衛を任された者達。
「ラブ・スプリングまで出てきていいのか?」
「そーいうのに興味を持たれました。ラブ・スプリング様が、人の声より科学の分析を優先します。戯言は通じないでしょう」
「外交、政治は面倒だな。これで批難批難ってか。家でみかんの木でも育ててろって言うつもりか?」
「そんな日本人の爺発想はありませんよ」
「ギーニ。言い方を考えろ、誰が爺だ」
◇ ◇
「なるほど、確かに我が国のCO2の排出量は世界第3位。世界全体で、我が国がトップとして、温暖化対策に取り組むべき事ですね」
話し合いというより、お願いというより、訴えとしてきているものだから。批難ばかりである。
CO2の削減と謳いながらも、言っている事は科学の発展を縮小させようという魂胆か。少女はこの席にいるだけで、周りの者が語ってばかりだ。
まぁ、分かっていた事だ。
大統領と並んで座っている、少女と対となるような少年もまた、提案した。
彼がこの国を裏で操っている、人間の形だけをした人間じゃない”科学兵器”。
ラブ・スプリング。アメリカの守護神と称される少年の形をした、ロボット。
そんな存在が行おうとする、アメリカンジョーク。
「じゃあ、来週。東南アジアの3か国ほど、我が国の軍事兵器で滅ぼし、温暖化対策のための世界共有の土地にしましょう。我が国の科学力では1週間で、なんとシンガポールの約半分の土地に、緑の種を撒く装置があり。1年をかけて立派な森にできる科学的な育成プログラムもあります」
いきなり、何言ってんだ。このガキャっと。相手方も自分達側も噴いてしまっている。
そして、当の本人も笑顔だ。
「あはははは、戦争なんて冗談ですよ。冗談。もーぅ、そんな驚かないでください」
でも、そこからは真剣な顔で訴えた。
「……ただ、我が国では緑を作り上げる科学力はもうじき完成致します。それは事実です。ですから、あとは広大な土地だけです。あ、我が国はやりませんよ?いくつかの国が滅ぶくらいの量を作り上げるし、コストもハンパじゃないので。ご支援やご協力をして頂いたら、こちらも動くという事です。お互い、科学や温暖化のお話じゃなく、政治や利権のお話ばかりでしたね」
◇ ◇
会談と言えば、会談らしい締め方で終わった会議。
しかし、その内容を聞いてしまったギーニは、彼に注意をする。軽率過ぎるが、ロボットらしからぬ人間の軽さ。
「ジョークでも止めてくださいよ。国同士でピリピリしているんですから」
「うーん。僕はみんなと、国を超えて仲良くなりたいから。少女の言葉だけは受け取ってあげるんだけどね」
「それでも!……あなた方の失言などを狙う者達は多いんですから。戦争をするだなんて、記事にでもされたら……」
「ははははは!そーいうのもいいんじゃない?別に負けないし」
「いやいやいや!ですから~……」
あんなんがアメリカの守護神かいって……。日本人の光一からしたら、自由の国らしい存在だと思っている。
「ま、政権変わっても、ラブ・スプリングがいつも座ってるんだよな」