雨に打たれて
この部分からストーリーが変化します。
何が悪かったんだろう……
歩きながら由佳子は考える。
最後まで晃輝を拒否したこと。
でも……
私にはああしかできなかった。
恐怖心をかかえたまま、晃輝に抱かれることは、自分には……
子供の自分……
結局、初めての恋は、本当の本音も言えないまま、流されて終わった。
雨……?
その時。
十一月の曇天の空から、ぽつりぽつりと雨が降りだした。
傘を持ってない由佳子は、ただ濡れそぼったまま、京都の街並みを歩く。
晃輝さん
晃輝さん
本気で好きだった。
生まれて初めて好きになった人だった。
雨は次第に激しくなり、由佳子の躰を叩く。
しかし、由佳子はただ、闇雲に歩き続ける。
由佳子の白く小さな顔から流れ落ちる雫は、雨か涙か。
いいんだ、濡れたって。
涙を隠してくれる……。
その時。
「津田!!」
背後から声をかけられ、振り向くと、赤い軽自動車の運転席から荻野が顔を出していた。
「馬鹿。傘もささずに……。とにかく乗れよ」
そう言って、荻野は由佳子を助手席に乗せた。
「どうしたんだ、一体」
その荻野の問いに由佳子は答えない。
まるで、由佳子は意思のないお人形のように蒼白な顔をしていた。
由佳子に何があったのか……
ただ、只事ではないことだけは荻野にもわかる。
何を考えたか、荻野は車をとりあえず発進させた。