小さな世界と大きな世界
ストーリーとしては大体が出来上がってる作品になりますが、まだまだ執筆中に加筆等の修正を加えながらの投稿となっておりますので、やんわりと読んでいただけるとありがたいです。
拙い文章ですが、一生懸命考えておりますので、どうかよろしくお願いいたします。
「誠に残念ですが・・・」
突然の話に自分の頭の中が真っ白になっていった。
今、目の前で医者が話している言葉の意味がわからない・・・。
もはや何を言われてもただ聞き流すしかなかった。
かろうじて聞こえてはいるのだが、内容ははっきりと覚えてない。
うなだれている私に見兼ねた看護師がソっと肩に手を置き落ち着かせようとしてくれているのがわかった。
しかし、そんな事では自分の理性や理解が戻ってこず、ただうなだれていた。
街にある大きな病院。そこには様々な家族や人々が行き過ぎていく。
大きな声で泣き叫ぶ赤ん坊、杖をつきながら歩くお年寄り、風邪なのかほのかに赤い顔をし虚ろな目つきで座り込んだ男性等…。総合病院なのだから色んな人がいるのは当然の出来事だ。
その広いロビーに置かれた長椅子に腰掛け、ジッと床を見つめ続けていた。
自分の中では、ある程度の覚悟はしていたはずだ。
だが、それはあっさりと打ち砕かれてしまった。
なぜ自分達がこんな目に、こんな仕打ちばかりを受けるのか、そんな事を考え出した。
辛くて、悔しくて、悲しくて、ただポロっと涙がこぼれてきた。
このままではマズイ、そう思い人の少ない場所に移動しようと席を立った。
ただ落ち着いてゆっくり考えたかった。
今は深く考える事は出来そうにない。そう思い屋上へと足を向けた。
澄み渡るような青空と白い雲、天を見渡せば自分の気持ちとは真逆の天候だった。
屋上に設置されたベンチに腰かけ、背もたれに頭を乗せて天を仰いだ。
これからどうしていくか、どうすれば前向きになれるのか、考えようとすればするほど深みにはまってしまい、最初に戻る悪循環を何度も繰り返した。
しかし、現実とは残酷なもので、ただ時間だけが過ぎていった。
いつしか太陽も傾き掛け、辺りを吹き抜ける風が冷気を含みだした。
このままここにいても何も解決なんてしない、分かってはいても動けなかった。
安物のベンチにくっついたように腰が離れない、足が動いてくれない、何もまとまらないままイタズラに時間が過ぎていく。
そんな時だった、屋上に通じる扉が開く音がした。
「も~、こんな所にいた!探したんだから~」
そう言って近づいてくる人影が見えた。間違いなくあの声は妹だろう。
なかなか病室に戻ってこない兄を心配し探してくれていたのだろう。兄思いの妹だ。
「こんな所で座り込んで~風邪引いても知らないんだから!」
そう言って隣に座り込んできた。
「あぁ、ごめんごめん、ちょっと風に当たりたくてな…」
精一杯の笑顔で妹に笑いながら返事をするが、
「どうしたの?」
心配そうに顔を曇らせながらこちらを見つめてくる。
相変わらず隠し事ができないようだ。
「ははっ、いやぁ仕事で失敗しちまってなぁ、怒られてヘコんでたんだよ」
頭をポリポリと掻きながら精一杯強がってみせる。
「ふぅ~ん、ま、そういう事にしておいてあげる」
こっちを見ずに空を見ながら妹は続けた。
「…だから…無理しないでね」
今、妹を見るとヤバい、確実に涙がこぼれる。上を向き、空を眺めながら答える。
「あぁ、ありがとな」
自分でも声色が変なのは分かったがどうしようもなかった。
気付かないフリでそのままいてくれる妹に感謝し、少しそのまま天を眺め続けた。
「さ、このままだと風邪ひくから中に入ろう」
あれから少しの間、無言で二人が座り続けていたが、妹が口火を切ってくれた。
何かきっかけが無かったらここから動けそうになかった。
「そうだな、よし戻るか」
そう言って重い腰を上げて病室に帰る事になった。
これから少しずつ投稿してまいりますので、どうかよろしくお願いいたします。