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恐怖の理由  作者: 十六夜 八雲
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憂鬱な理由

今日の私は少し憂鬱ゆううつだ・・・・


なんとなくダルいから?


それとも少し頭痛がして、肩がなんとなく重いから?


そんなことはよくある事だから、今更あまり気になりはしない。


今日は"アイツ”が来そうなのだ。


今はまだ、予感でしかない。

でも最近その予感はほぼ的中している。


当たって欲しくはないが、そう思うときほど症状は重い気がする。



「どうしたの美里みさと?今日はいつもよりさらにクライね~!」


このは私の気持ちが重い時ほど明るい弾んだ声になる気がする。


「いつも幸せそうで羨ましいわね里香りか。その元気分けてほしいわ~。」


「いっつもわけてあげてるじゃない!

まだ足りないの~? じゃぁ特別サービス!!」


「んっ!んぅぅ!・・・ん~―――――― ぷはぁ! もぅ!やめてよ!」


里香の得意技。


顔をギュッっとする攻撃。。。

私よりも少し細い腕で頭を固定し、私よりも少しだけふくよかな胸が完璧に鼻と口をふさぐのだが、ほんのりいい香りがするのでつい『ほんわか』してしまい、気が付くと気絶寸前まで追い込まれてしまうという恐ろしい技だ。


「今日は、里香とじゃれ合う気分じゃないの!」


「じゃぁどういう気分なの?美里はいつもノリはそんなに良くないじゃん。

まぁ、今日はいつもよりちょっと雰囲気暗いけど・・・

あ、ひょっとしてあの日?」


ほんとにこの子はあけっぴろげで、こっちが恥ずかしくなる。

それでも憎めない愛らしさが彼女の魅力なのだけれど―――


「それなら、こんなに落ち込みません。」


「じゃぁなんなの?私がなぐさめてあ・げ・る! からさ~。

ほら、話してごらんなさい。」


里香と知り合って半年しか経っていない。

大学の入試の時になんとなく気が合い、無事に二人とも合格して再会しそのまま意気投合。

独り暮らしを始めて最初に出来た友達。


明るい里香と、少しおしとやか(根暗?)な私。

不思議と息が合い、この数カ月で何年も一緒に過ごした親友のような関係になってしまった。(と私は思っている)


でも、そんな彼女にもまだ言えない悩みを私は抱えていた。。


「ねぇ、話してごらんよ! 楽になれるわよ~。」


その明るい声、笑顔がこの悩みを吹き飛ばしてくれるような気が一瞬するが、そんな希望は持ってはいけないと心のどこかでもう一人の自分が言っている。


そう、たぶん。 いや、絶対もう一人の自分の言っている事の方が正しいと、私はわかっている。


「――― 聞かない方がいいよ。信じてもらえないかもしれないし・・・。」


今までにないくらい、暗いトーンで言ってしまった。

里香の笑顔が急に真面目な顔に変わってしまった。


天使の首を絞めてしまったような、犯してはいけない罪を犯してしまった気持ちになった私は、自分の罪をごまかすように自分の秘密を口にしてしまっていた。


「――― ”アイツ”・・・が、来るの。 たぶん・・・今夜。」


「アイツ?」


声のトーンから、”アイツ”が彼氏や、単に嫌な人間と言うわけではない事はわかったようだ。


「――― たぶん、今夜金縛りになる。」


何か明るいリアクションを取ろうとする里香の可愛らしい顏が、いびつにひきつってしまい、笑顔が作れないでいる。


『あぁ、この子もこんなブサイクな顔できるんだ・・・』

この子は単に明るいだけじゃなく、いろんな事を考えて、相手に気を使って明るくしてるんだなぁという想いが心に広がっていく。


憂鬱な一日だけれど、こんな日でも里香をまた少し好きになることができた事が唯一の救いだと思った。




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