Ep.9 パチュリー・ノーレッジ
それから数時間後、フランに呼び出された。場所はもちろん彼女の部屋だ。
取り敢えず、パチュリーを呼んで来てほしいとのことだった。
魔法図書館・・・。
原作の曲からしてヴワル魔法図書館という名前かと思っていたが、どうやら名前は別にあるらしいということを以前司書の小悪魔に聞いたことがある。
俺は別段本には興味がなかったので、ほとんど出向いたことがない。
今回で多分6回目ぐらいじゃあないかな?
その5回もここにきたときの挨拶やらフランの読書本を取りに行ったりやらその程度だ。
だから、図書館のヒキコモラーであるパチュリー・ノーレッジという少女についてあまり関わりがなかった。
「あら、妹様がお呼びなのね。」
本から一旦目を外して少女は答える。
「パチュリー様、あまり驚かないんですね。」
「ええ、月1ぐらい彼女に呼ばれるから、特に変わったことでもないわ。」
「月1・・・。」
人間にとっては月1程度の関わりは変わったことだと思うのだが。
・・・いや、彼女は人間ではなかった。
少女は魔女だ。
そもそも、この紅魔館にいる時点で全うなニンゲンではないと言える。
(咲夜さんは時間とか操るとか言ってたし、俺については外の世界の人だし。)
見た目は年端もいかない少女だが何百年か生きている魔女だ。
月1。
多分その関わりも何十年、もしかしたら、何百年も続いているのかもしれない。だとすると、よくあることだと言うのも分からなくないわけでもない。
少女はまた読書を始める。
「もう少し読み進めたら、準備して行くわ。先に妹様のところへ戻ってあげなさい。」
「承知いたしました。」
くるりと出口へ向かおうとした。
「そう言えば、あなた・・・。」
「はい?」
「いいえ、何でもないわ。行ってちょうだい。」
???
何だったのだろう。
フランの部屋についた。
「失礼いたします。」
「はーい。」
フランドールは先程の漫画を読んでいた。
「パチュリー様をお呼びいたしました。もうしばらくしていらっしゃるそうです。」
「わかったわ、ありがとう。」
数分後。
パチュリーと小悪魔がきた。
思ったより早く来たことに並々ならぬ驚きがあったが、そういうものなのだろうと納得する。
「妹様、元気にしてた?」
「うん、最高!パチュリーはどう?」
「相変わらずね。たまに喘息がひどくなるのが、厄介な話だけれど。」
「そう、元気にしてるみたいね。」
喘息で元気だ、と表現するのは俺からすれば、いささかどうなのだろうと思うが、それが彼女たちの日常なのだ。
「じゃあ、早速始めようかしら。」
「お願い、パチュリー。」
小悪魔が持ってきた包みをひらく。
錆の所々はいった鉄の盤の上になにやら怪しげな幾何学模様が浮かびあがっている。
「それは・・・魔方陣ですか?」
「ええ、召喚用に作っておいたのよ。毎回作成するのも億劫だからね。」
「ところで、あなた・・・。」
「はい、何でしょうか?」
「・・・小悪魔と一緒にお茶の準備をしておいてくれるかしら?」
「あ、申し訳ございません。すぐお持ち致します。」