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赤執事 ~Scarlet's Butler~  作者: 鬼姫
【赤執事】紅霧異編
3/65

Ep.3 八雲紫

 俺が幻想入りやら、悪魔の妹の執事になったりやらのいざこざが落ち着いて幾日か経過した。


 この館の仕事にも大分慣れてきたと思う。(実際は咲夜さんの足元にも及ばないが・・・)そして、気がつけば不慮の怪我も完治していた。


 そんなこんなで、これからフランの元にランチ(吸血鬼である彼女たちからすると、人間の朝食ってことになるかな)を運ぶ。本日はミネストローネだ。柔らかなトマトの香りが深紅の長い廊下に漂っていく。


「フランお嬢様、ランチをお持ち致しました。」

「入っていいわ。」


 地下室が生活の中心となっている彼女にとって、食事の場合も相変わらず独りである。


「傷はなおったみたいね。」

「おかげさまで。」


 この幾ばくかでフランドール・スカーレットという人物について気がついたことがある。


 一つは読書が趣味であるということだ。

 紅魔館には人間の生涯を尽くしても読みきれない程の蔵書を誇る図書館があるのだが、その全てがパチュリーという少女の所有物だ。それで、フランは何故か彼女のことを慕っていて、その影響から文学少女になったというわけだ。


 もう一つは、フランドールは人間を見たことがないということだ。もちろん、俺や咲夜さん以外。いや、案外俺も咲夜さんについても人間だと思われてないかもしれない。彼女は人間を血のかたちでしか見たことがないと言っていたからな。


 話は戻る・・・。


 フランが昼食を食べ終えた後、報告がてらレミリアの部屋を訪れようと、前まできた時だ。


「・・・よ。・・・して、・・・かしら?」


 知らない女性の声がする。

 紅魔館、しかもレミリアの部屋に客が来ているようだ。出直すべきか・・・。


 そう考えていたとき、扉が開いて、中から出てきたのは咲夜さんではなく、美鈴だった。


「お嬢様方がお待ちですよ。」



 開かれた扉から出迎えてくれた人物に驚愕する。


「美鈴さん・・・?」

「言いたいことはあると思いますが、とりあえず、話は中で。」


 彼女の言われるがまま部屋に入る。そこには、美鈴以外にもパチュリーを初め小悪魔、もちろん、咲夜さんもいた。そして、座っているレミリアの向かいにはテーブルをはさんでブロンドの女性がいる。


 いつもとは違う、ピリッとした空気のなかレミリアが口を開いた。


「こうしてみんなに集まってもらったのは、察しの通り重要な案件があるからだ。」


 一呼吸ー。


「まずは彼女を紹介するわ。」


 みんなの視線が見知らぬ女性へと移る。


「私は幻想郷を管理している、八雲 紫ですわ。よろしく。」


 八雲 紫。

 俺は再び驚愕する。幻想郷の賢者であり、スペルカードの発案者である彼女が直々に来たということはーまさか。



「スカーレットお嬢様、最近いかがかしら?」

「変わりないわ。今のところ。」

「退屈はしてらして?」

「夜の王たるもの、いつも退屈かしらね。いえ、数日前に少し面白いものを拾ったけれど、妹にくれてやったわ。」


 レミリアが視線をちらりとこちらにむける。

 俺はものあつかいですか。


「なるほど。」

「しかし、退屈ね、世界征服でもしようかしら?ーそういう貴方は何か新しい遊びでも思い付いたのかしら?」

「ええ。とびっきりのゲームを思い付きましたの。」


 言葉とは裏腹にはりつめた空気は和らぐことはない。


「弾幕ごっこはいかがかしら?これならどんな強大な力を持つ者とも対等に遊ぶことができますわ。」


 今度はレミリアの鼻がひくつく。


「ふん、私が弱いとでも?えらく下に見られたものね。」

「いえ、でも相手が博麗の巫女としたらどうかしら?容易ではありませんわ。たとえ、貴方が無事巫女を殺せたとしても、彼女を相手にしてこの館の幾人が五体満足でいられるかしら?」

「ふん!」


 八雲 紫はニヤリとする。


「そう。わざわざ代償を払わずとも、このゲームを活用すれば、代償なしで賞品を手に入れることも可能・・・。」

「・・・。」


 八雲 紫という人物はなんと食えない性格をしているのだろうか。まさしく、圧倒的にレミリアを言いくるめた。


「して、一度貴女方がホストとなって開催致してはどうかしら?」

「・・・半年後だ。」

「私の提案をのむと?」

「ああ、お前の遊びをのんでやる。しかし、掛け金はお前の世界だ。覚えておけ。」


 こうして彼女の提案であるところの、スペルカードルールによる弾幕ごっこが始まった。


 帰り際、客として八雲 紫を送れというレミリアの指示で館の外まで案内した。


 思うのだが、スキマを使って帰ればいいものだろうが、彼女は客であるという分をわきまえて玄関を通り、門をくぐって帰っていった。


 ただ帰り際、俺と二人きりになったときのことだが、


「確かに貴方は面白いわ。」


 と彼女が言い残したのは謎であった。



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