Ep.17 霊夢、再襲来
ディナーの後からしばらく経った。夜もいよいよ深まった。
今日は居待月と言えども親しき彼女とのおしゃべりさえあれば、座っていても、ときが経つのが待ち遠しいということはない。
空の上には月がかかっているだろうその夜に、他愛ない話に投じていると、何やら上のほうが騒がしくなってきた。
まさかいよいよか・・・?
「何かさわがしいね?」
「ええ。様子を見て参ります。少々お待ちを。」
すっと立ち去ろうとドアの方に向いた時、フランががしりとうでをつかんだ。
「フランお嬢様?」
「・・・は、早く帰ってきてね。」
「?はい。」
地下室から出てみれば案の定、妖精たちがばたばた飛び回っていた。
「ねえ、君。聞いていいかな?」
黒髪のより小柄な妖精を捕まえて訪ねる。
「あ、執事さん、こんばんは。どうやらこの間の侵入者がまた襲撃に来たみたいです!」
「ありがとう。」
侵入者とは巫女と魔法使いだ。
さて、俺はフランをあの部屋から出す手助けをしなければならない。
地下室に戻らないとな・・・。
そう思いはしたが、行動に移すことはできなかった。
気がつくとどこかの部屋にいた。
後頭部が痛む。多分誰に後ろから殴られてどこかに連れていかれたのだろう。
「あらあら、起きたみたいね。私の部屋の床の寝心地はいかがだっかしら?」
レミリアは紅茶をすすりながら、優雅に俺の方を見下していた。
「レミリアお嬢様。霊夢たちがいらっしゃっていますが、お会いにならないのですか?」
彼女の眉がぴくりと動く。
「・・・霊夢?あなたはあの巫女たちを知っているのかしら?」
おっと、失言。
俺の立場としてはフランにつきっきりで、彼女たちとはかかわりあいがない。だから、「霊夢」と「魔理沙」という名前は聞かされてないのだった。
「いえ、俺はフランお嬢様付きの執事でございます故、知りません。ただ、噂でそういう者たちが来たということを知りまして。」
ふん、とレミリアは鼻をならす。
「噂ねぇ・・・。」
「ところであなた。随分とフランの世話焼きをさせてもらっているそうじゃない?」
「はい、お世話させていただいてます。」
「今日これから1日、私の面倒をみなさい。」
・・・は?
「物わかりの悪い従者ね。だから、いま咲夜は用事で1日戻ってきそうにないから、その間私の駒使いになりなさい、ってこと。」
レミリアの駒使い。
何かとつけて不出来だと侮辱するやつの面倒を見るのは文字通り面倒くさい。
しかし、それ以上にフランが・・・。
「大丈夫よ、あの子は。やればできる子だから。」
「え・・・?」
「何でもないわ。」
気がかりではあるものの、俺はレミリアに従うしかなく、渋々咲夜さん代理を勤めることとなった。