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赤執事 ~Scarlet's Butler~  作者: 鬼姫
【赤執事】紅霧異編
16/65

Ep.16 ありとあらゆるものを破壊する程度の能力

 紅霧異変―いまはまだそんな名前はないけれど行く行くはそう呼ばれるようになる事件―から数日たった。


 霊夢と魔理沙にこてんぱんにされてふてくされいてたレミリアの癇癪の回数も減ってきた。

 今思い出してもおもしろ・・・、もとい愛らしい。手足、羽をばたつかせながら、うーうー言って咲夜さんを困らせているさまは正に見た目も中身も幼児そのままだった。

 それでも、それだからこそ咲夜さんが入れ込む理由もわからなくもない。

 対照的にフランはそういうときヒステリックに破壊的に、そして、鬱的になってしまう。みんなが 少し嫌厭しつつ、遠巻きに心配しているのは、その事なのだろう。




 とにもかくにも紅魔館はずいぶんと落ち着いた。


 もちろんこの異変の後にちょっとした後日談的な、エクストラストーリーがあることを知っているので、俺にとってはこれからが勝負どころなのだが。




「今夜のディナーは何かしら?」

「レーズンパンとオニオンスープ、デザートにブルーベリーヨーグルトです。今夜は甘めのものが多いので飲み物はジャスミンティーに致しました。」

「あら珍しい。」


 寝起きのフランは、普段の白磁のティーカップとは違う透明なグラスの中の花を見つめる。


「わあ!花が咲いた!」


 グラスを満たすお湯を吸い、花びらが広がるのを見て、感嘆の声を漏らす。



 食事中、大体はフランにせがまれて他愛もないおしゃべりをするのだが、今日は俺がふと思いついたことを聞いてみた。


「フランお嬢様の能力であるところの、破壊する能力ですが、実際はどの程度まで破壊することができるのでしょうか?」

「うん?どういうこと?」


 彼女は首をかしげる。


「つまるところ、破壊する能力の届く範囲は、物質に限られているのか、それとも、概念的な破壊も可能なのかということでございます。また、逆に破壊と対義の再生も可能なのかということも気になります。」


 フランはふむと一息ついてしばらく考えていた。

 そして、しばらく後にこう答えた。


「まず、物質への干渉は可能ね。これは、あなたが身をもって体験したよね?」

「ええ。」


 そう、それについては俺が執事になる一件で立証されている。


「次、概念的な破壊ね・・・。質量保存の法則やゼロの観念、それこそ、お姉さまお得意の運命を破壊できるか・・・―」


 変なことかもしれないが、そういうことだ。ゼロの観念を破壊できたとして、どうなるかなど理解不可能だが、まず、その破壊はできるかという意図で聞いた。


「―・・・必ずしも不可能ではないと思う。」


 不可能ではない。

 つまり、やろうと思えばできるということだ。


「そもそもあなたは私の能力をどう使うか、知っているかしら?」


 彼女の能力。

 彼女の破壊は、物質の「目」を掌に引き寄せるところからはじまる。

 そして、引き寄せて、潰す・・・。

 言ってしまえば彼女の能力の成否はその「目」にかかっているのだ。


「―とすると、概念的な事象にも「目」が存在するということでございますか?」

「うん、そういうこと。」


「そもそも「目」っていうのは、物事の核心、みたいなもののことを言っているの。既に概念みたいなものだね。」


「同じように法則にも核心があるよね?」

「核心ですか?つまり、その目的や何を導いているのかとか、そういうことでしょうか?」

「そ。逆に言うとそういうことを正しく掴めておけば、いつでもどこでも破壊できる・・・かな?」


「まあ、相当な、それこそパチュリーが星屑に見えるほど、比にならない知識が必要だとおもうよ。」


 さらに付け加えて。


「それに・・・、できたとしても怖くてしないよ。」


 おそらく試そうとすら、いや、思ったことすらなかったのだろう。悪魔でさえ、手を出してはいけない禁忌。きっとフランはその禁忌には手を出せない。

 能力の範囲に戦慄はしたが、彼女本人の優しさ、正しさを聞けて安心した。




 食事の最後、そんな暗い話題をふったせいで、あれ以降沈んだ雰囲気になり黙々と食べ続けていたフランはぼそりと呟いた。


「・・・生み出す能力のほうがほしかったな。」

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