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赤執事 ~Scarlet's Butler~  作者: 鬼姫
【赤執事】紅霧異編
15/65

Ep.15 チルノ


 待つこと数時間後。

 実際のところは待つというより寝るという方が正しいのだが、とりあえず、夜になったようだ。

 既に赤い霧で暗かったが完全に夜になっている。不気味に思えた暗さも赤い月に照らされて逆に幻想的に思える風景だった。


 彼女たちはというと、まだ弾幕ごっこをしていた。

 さすが、(見た目が)子供だ。疲れをしらない。


 それに、先ほど初めて習ったばかりのフランはもう才覚をあらわしていた。

 既に弾幕ごっこではなく、一方的な襲撃みたいになっている。チルノはヒイヒイ言いながら逃げ回っていた。


 でも、どちらともこれ以上ないほどに楽しそうだった。



 また、しばらく時間が経つ。

 何やら月が明るく感じて見上げると、紅い月は黄金に輝き、霧は晴れて群青色の空が広がっていた。


 レミリアの敗北が決まったのだろう。


「フランお嬢様!!チルノ!!そろそろ終わりにしましょう!」



「あー楽しかった!!」

「ふ、あたいにかかればこんなものよ・・・。」

「対面相違が甚だしいな。」


 うれしそうに羽をぱたつかせるフランにたいして、チルノはぼろぼろで少し涙目になっていた。


「そろそろ帰りましょう。」

「もう帰るの?」


 チルノの顔が少し曇る。


「うん。でも、また遊びに来るから。待っててねチルノ。」



 月に照らされながら別れを告げた。

 チルノは俺たちの姿が見えなくなるまで手を振っていた。



 紅魔館に着いた。

 もちろんお忍びで出掛けているので、外出時は正面からでていくという愚行はしない。何せ美鈴がいる。

 普段なら寝ていることもあるが、異変中なら目を光らせているはすだ。そのため、裏口を使った。

 なので、帰宅時も裏口から館に入ろうと思っていたのだが・・・。


 門には美鈴どころか妖精一匹もいなかった。




 フランの地下室の部屋に着く。


 道中何事もなく、気づかれずにここまでたどり着いた。

 門に誰もいなかったが、館に入っていよいよ人影がなかった。


 思い起こしても不気味である。いや、不気味というよりも、そうであるように片付けられていた、と言った方が正しいかもしれない。作為的意図が含まれているような気がしてならなかった。


「ふあぁー・・・、楽しかったけど、眠くなっちゃった。」

「お休みになられますか?」

「そうね。そうしましょう。」

「それではお風呂と就寝の支度をして参ります。」




 彼女を寝かしつけた後、片付けのために地下室からでて、廊下を歩いていると影から白銀のメイドさんが現れた。


「咲夜さん・・・。」


 怒りもなく、喜びもない、無表情で彼女は立っていた。


「妹様はお休みかしら?」

「ええ。只今。」

「本日はおとなしくなさっていたみたいね。・・・そうでしょう?」


 相変わらず無表情だ。


「・・・はい。フランお嬢様は本日自室で遊んでいらっしゃいました。」


 その答えに満足したのか、細く微笑んだ。


「今日は疲れたでしょう。妹様が起きられるまでお休みなさい。レミリアお嬢様もそうおっしゃっていましたわ。」


 やはり、帰るときに誰もいなかったのは意図してだったらしい。咲夜さん、レミリアはフランが外出していることを知っていて、でも、表立って認めたくないからせめてもの心付けとしてステージを片付けたのだ。

 ・・・いや、もしかしたら俺たちが外出することさえ意図的だったかもしれない。

 意図的。俺たちは、いや、俺は糸のついていない操り人形だったというわけだ。その役目に気づいたとき、苛立ちを全く感ないことはなかったが、

 しかし、姉が妹のために精一杯なにかをしてやろうという意気込みの駒にされたのだと思うとあまり悪い気はしなくなった。

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