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赤執事 ~Scarlet's Butler~  作者: 鬼姫
【赤執事】紅霧異編
13/65

EX.13 幻想の原則


「幻想の原則というものを知っているかしら?」

「幻想の原則?それは何かの駄洒落でございましょうか?」

「あらあら、駄洒落ではなくってよ?」





 そんな話をしたのは何時のころだったろうか?


 私―八雲藍―は主人と話したその時のことを、白いものの降りるのを目の当たりにして再度思い出した。





「幻想の原理と申しますと?」


 目の前の主人は扇子越しに視線を細めた。

 外では白がちらついている。


「幻想の原理。一つは、現実で不可能と定められている事を覆す可能性があるということ。」

「つまり、今の幻想郷で妖怪が安定して存在できるのもそのためでございますね。」


 そのとおり、と主人は一息つく。


「二つ目は、観測者が必要であるということよ。」


 私はその言葉に一筋引っ掛かりを覚えた。


「シュレティンガーの猫でございますか。しかしながら、それは間違いではございませんでしょうか?」

「そう。あなたは何処に引っ掛りを覚えたのかしら?」

「幻想というものは即ち存在しないものでございます。そうであるならば、そのものが存在しないのと同時に観測者というものも存在いたしません。」


 私は純にそう確信した。


 外ではいよいよ白い粒たちがこんこと揺れ落ちていた。


「正しく正しい答え。かといって、それと同じく間違っているわ。」

「お聞かせ願いしてもよろしいでしょうか?」

「勿論。

 しかし、先に三つ目の原理を述べておきましょう。」



「三つ目の原理というものは、幻想の境界から一歩はみ出してしまった場合どうなるのかということ・・・。」

「はて、それは疑問であって、原理ではないのではございませんか?」


「いえいえ、これも列記とした原理よ。」



 主人が数寸、扇子を顔に引き寄せる。


「二つ目の原理と共に三つ目の原理を説明いたしますわ。

 先に前提としてあげておくけれど、幻想があると認識をすること自体が観測に当たるというのがこの原理の考え。

 そうね。“夢”で説明しましょう。

 ある人物が油揚げ一杯食す夢を見たとします。

 現実には確かに物質的な移動も満腹感も存在しない。しかし、ここには確固たる夢の体験というものが存在する。実は、それだけでカラダは“そうであるか”のように働いてしまうという例も存在するわ。」

「つまり、幻想であったとしても“認識”上は観測したことと同価値であるということでございますね。」

「是その通り。」


 なるほど納得はできた。


 その私の顔を見た主人は、扇子をぴしゃりと閉じる。


「それと関連して三つ目を考えるとすると、真実の定理とも幻想の原理とも外れてしまった“モノ”はどうなるのかしら?」


 無言になる。





 ―未だに答えは出ていない。


 外はあの時と同じようにいよいよ白が強くなってきた。

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